【速報】小学生の40%、中学生の55%が、「上手な勉強のやり方が分からない」
ベネッセ教育総合研究所では、全国の小学4年生から中学2年生の子どもとその保護者5,409組を対象に、「小中学生の学びに関する実態調査」を行った(2014年2月~3月実施)。
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果では、日本の子どもたちには学習意欲に課題があることが指摘されている。主体的に学ぶ力を身に付けるためには、「何を学ぶか」(学習内容)に加えて、「どう学ぶか」(学習方法)を考えることが重要だが、よい学習方法がわからないという悩みを多くの子どもが抱えているのが実態だ。そこで、学年別の子どもたちの学習に関する意識・実態と、保護者の関わりの両方を明らかにし、「よりよい学びのあり方」を検討することを目的に調査を行った。
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本調査では、学習時間を十分に取っている子どもほど学業成績がよいという結果が明らかになりました。学習の「量」と「成績」は、ある程度比例します。この意味で、一定の学習時間を確保することは、学力を高めるのに重要な要素といえます。しかし一方で、相対的に短い学習時間でも、学習方法の工夫によって成果を上げることが可能だということも実証されました。学習の「量」を増やすだけでなく、学習の「質」を改善していくことも、学力を高めるために重要だということがわかります。
1.「上手な勉強のやり方が分からない」のは小学生で約40%、中学生で約55%
2.「成績上位」の子どもほど1日の学習時間が長い
3.「成績上位×学習時間短い」中学生は、「成績下位×学習時間長い」中学生と比べて、学習方法の項目で、最大20ポイントほど上回った
4.「新しいことを知ることができてうれしいから」勉強する子どもは、小学生から中学生で22ポイント減少
5.学びの面白さを伝える保護者の子どもは、そうでない保護者の子どもより、好奇心や関心を動機として学習をする割合が、10ポイント以上高い
「上手な勉強のやり方が分からない」という悩みを抱えている子どもが多いという実態もあります。本調査では、小学生の約40%、中学生の約55%がそうした悩みを示していました。学習方法について体系的に学ぶ機会は少なく、それぞれの子どもは試行錯誤しながら身に付けていきます。しかし、思うように効果的な方法が身に付いていないという実感が、多くの子どもたちにあるようです。教育心理学における「自己調整学習」の領域では、主体的に学ぶ力を身に付けた学習者が備えている要素(「メタ認知(自己理解)」「学習意欲(学習動機づけ)」「学習方略」)や、それらの要素がどのように学習サイクルの循環を支えているかについて数多くの知見が蓄積されています。そうした知見を活用しながら、子どもたちが学習方法を意識し、身に付けていく機会を作っていく必要があります。
また、本調査では、保護者の関わりが重要であることが改めて示されました。保護者の関わりは、子どもの学習意欲や学力形成に影響を与えています。その影響の仕方は小学生と中学生で異なる部分もあり、発達段階に合わせた関わりが求められるといえそうです。
子どもがどのように「よりよい学びのあり方」を考え、具体的な方法を身に付けていくのか。さらに、保護者や教員はそれをどのようにサポートしていけばよいか。そうした学習の「質」を改善していく試みは、子どもの教育に携わるすべての人が考えるべき課題です。ベネッセ教育総合研究所でも、本調査の結果を参考に、「よりよい学びのあり方」について深く考えていきたいと思います。
※文中の「小学生」・・・小4生~小6生の平均、「中学生」・・・中1生~中2生の平均
※文中の「成績上位」「成績下位」・・・保護者の評価や子どもの自己評価により、成績を「上位」「中位」「下位」で3区分
出典:小学生の40%、中学生の55%が、「上手な勉強のやり方が分からない」 -ベネッセ教育情報サイト