「ふりかえり」の対話で成績アップ[やる気を引き出すコーチング]

お子さんが、テストの結果を持って帰ってきた時、いつも、どんなコミュニケーションをとっていらっしゃいますか?
「テストどうだった?」
「何点だった?」
「平均点は?」
など、気になることを、まず質問してしまいますね。そして、平均点より上だと、
「がんばったね。次もしっかりね!」
平均点より下だと、
「ほら、勉強しなかったからでしょ! もっと勉強しなさい」
あるいは、
「今回は残念だったね。次はがんばろうね!」
という感じでしょうか。
いずれにしても、「これからも勉強がんばってね!」というところで終わっていることが多いのではないでしょうか。テストのあとのコミュニケーションをもう少し充実させると、成績もどんどん上がっていくようですよ。



「ふりかえり」の対話で成績アップ[やる気を引き出すコーチング]


大切なのは点数ではなく、過程の「ふりかえり」

コーチングを学んで10か月目のKさんは、日頃、中学1年生の息子さんをコーチングの練習相手にしているそうです。点数や順位がどうであれ、良し悪しの評価をしないで、質問から入ります。
「今回の結果についてどう思う?」
「……いまいち」
「どういうところが、いまいちと思うの?」
「うーん、これはできたけど、これはまちがえた」
「そうか、どうだったらよかった?」
「これも全部できるといい」
「そう、そのためには、どうすればよかったかな?」
「……練習問題をもっとやる」
「ほかにある?」
「テストの時に見直しをする」
「ほかには?」
「……そんなとこかな」
「次のテストではどうしたい?」
「今回よりいい点とりたい」
「それって、何点ぐらい?」
「80点以上」
「そのためには、どうしたらいいかな?」
「勉強がんばる」
「特にどこをがんばる?」
「練習問題」
「どんなふうにがんばる?」
「……毎日、5問は解く」
こんなやりとりを、テストが終わるたびに繰り返しているうちに、成績も上がってきたそうです。過剰にほめたり、感情的に叱ったりすることなく、淡々と、結果の分析と次への課題設定を、質問によって本人から引き出していく様子は名コーチそのものです。
点数だけを見て一喜一憂し、漠然と「がんばれ」と言うよりも、勉強内容や勉強の進め方など、勉強の過程をふりかえって、次の行動につなげる対話のほうがよほど建設的なコミュニケーションだと思いませんか。



具体化する質問で対話を深める

考えてみたら、私たちは、表面的な言葉のみに反応してしまって、対話を深めることをあまりしていないことがよくあります。たとえば、こんな場面です。
「テストどうだった?」
「ダメだった」
「ダメって!? だから、あれほど『勉強しなさい』って言ったのに! どうしていつもそうなの!?」
「ダメ」という言葉に反応してしまって、つい、感情的に言い返してしまうパターンです。これでは、この時点でコミュニケーションが断絶してしまいかねません。

「どんなところがダメだと思ったの?」とか「ダメってどんな気持ちなの?」など具体化する質問で対話を深めていくと、本当の想いや考えが出てくるかもしれません。案外、「やっぱり、前もって勉強しておいたほうがいいってことだよね」と、自分から言い始めたりします。そうなれば、自発性を引き出すチャンスです。「前もって勉強って、たとえば、どんなふうにする?」と、さらに突っ込んで聴いてみてください。次への行動が出てくるチャンスがまた広がります。
テストのあとの「ふりかえり」は反省会ではありません。単なる答え合わせでもありません。これまでの過程を分析して、「次はどうするのか?」を考える「作戦会議」です。自分で考えた作戦が成果につながったとしたら、その体験は、子どものやる気をさらに引き出すでしょう。具体化する質問で、「ふりかえり」の対話をぜひ試してみていただきたいです。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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