大学情報を一堂に 「ポートレート」私学版がスタート-斎藤剛史-

来春の大学入試に向けて志望校選びが本格化するシーズンを迎えました。そのようななかで日本私立学校振興・共済事業団は、私立大学・短大の情報を集めたデータベース「大学ポートレート(私学版)」をスタートさせました。国公立大学についても早ければ2014(平成26)年末にも「大学ポートレート(国公立版)」が始まることになっています。

予備校など民間機関以外の公的な大学情報データベースとして、以前は入試情報を集めた大学入試センターの「ハートシステム」、国立大学の情報を集めた大学評価・学位授与機構の「大学情報データベース」などがありましたが、民主党政権時代の事業仕分けにより廃止されてしまいました。このため文部科学省は、情報公開の推進、大学教育の質の保証などのため、新たな大学情報データベース「大学ポートレート」を構築する方針(外部のPDFにリンク)を打ち出しました。計画(外部のPDFにリンク)では国公立大学のデータベースは大学評価・学位授与機構、私立大学のデータベースは日本私学振興・共済事業団がそれぞれ構築し、2014(平成26)年度から稼働の予定でしたが、大学評価・学位授与機構が独立行政法人の統廃合対象となるなどして作業が遅れたため、私立大学・短大のみの「大学ポートレート(私学版)」が一足先にスタートすることになったものです。

「大学ポートレート(私学版)」を見ると、大学・短大ごとに収容定員や在学者数などの「学生情報」、教員数などの「教員情報」、卒業者の進路など「進路・就職情報」など8分野の情報を見ることができます。しかし、どの程度まで情報を公開するかは各大学の判断に任されているため、大学の質保証としては不十分という批判も一部にあるようです。
現在は、収容定員や進路状況などの情報公開が大学設置基準で義務付けられているため、各大学のウェブサイトを見れば済むという声もあります。ただ、各大学のウェブサイトでは、知りたい情報がなかなか見つからない場合もあります。これに対して「大学ポートレート(私学版)」は、同事業団が補助金の配分などのために調査した正確な大学情報を掲載しているのが大きな特徴です。
また各大学・短大のページはそれぞれのウェブサイトとリンクしており、各大学・短大が発信する最新ニュースも見られるようになっています。
なお、各大学・短大の情報は、画一的なランキング付けなどのために利用できないように、ほかの大学などと比較することができない仕組みになっており、受験生などにとっては不満が残る点もありそうです。

しかし、私立大学なども含めて公的機関が情報の正確さを保証する大学・短大情報データベースの誕生は、情報発信を個々の大学の取り組みに任せていた日本の高等教育の歴史の中でも大きな出来事といえます。受験生やその保護者にとって、志望校選びの重要なツールとなりそうです。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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