2014年度大学入試 地方私大志願率が上がった2つの要因とは?
2014年8月、日本私立学校振興・共済事業団が、2014(平成26)年度の「私立大学・短期大学等入学志願動向」調査の結果を発表した。定員割れなど苦境に立つ私立大学も少なくない中、長引いていた不況の影響などで人気が高まる地方私大の役割が注目される。教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に聞いた。
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調査によると、私立大学578校の今年度の入学定員は約46万人で、それに対して約346万4,000人(前年度より2.2%増)が志願。入学定員充足率が100%を下回る「定員割れ」だったのは265校(前年度比33校増)で、全体の45.8%(同5.5ポイント増)と半数に迫っています。
一方で、志願倍率を地域別に見ると、「東京」が0.06ポイント減の9.69倍、「福岡」が0.04ポイント減の6.20倍。それに対し、「愛知」は0.26ポイント増の7.56倍、「京都」は0.23ポイント増の9.27倍、「大阪」が0.57ポイント増の8.95倍です。さらに、北海道、東北、埼玉、千葉、北陸、東海、近畿、中国、それに福岡を除く九州でも志願倍率が上昇しており、地元志向の高まりが見て取れます。
これには、いわゆる「ゆとり教育世代」と呼ばれていた旧学習指導要領の最後の学年に当たる今春の卒業生が、新課程に移行した来年度以降の受験生との競争を避けるため、今年度に合格しておきたいという心理が働いたことが考えられます。それとともに、経済的な負担が軽くて済む地元大学への志向が高まった側面もあるでしょう。いずれにせよ、進学先としての地方私大の役割が注目されたと見ることができます。
文部科学省の学校基本調査でも、大学進学率はもとより専門学校を含めた高等教育進学率も上昇したことが明らかになりました。高卒就職市場が縮小する中、上級学校で教育を受けて実力を付けることが、ますます不可欠です。地域にも一定数の大学が必要であるという視点も忘れてはなりません。
出典:改めて期待される地方私大の役割 今春、地元志向の高まりで -ベネッセ教育情報サイト