教職課程に情報公開義務付けへ 受験生には大学選びの材料にも‐斎藤剛史-

文部科学省は、教員を養成するための教職課程を持つ大学に対して、2015(平成27)年度から卒業者の教員就職状況など教員養成に関する情報を公開するよう義務付けることを決めました。大学の教職課程の質を保証するのが狙いですが、実施されれば各大学の教員就職状況などが明らかになるため、受験生にとっては志望大学を選択する際の参考になりそうです。

教育大学や教育学部など教員養成系大学・学部以外の一般の大学でも、教員養成のための教職課程が設置されており、多くの学生がそこで教員免許を取得しています。また、実際に教員になるかどうかは別として、教員免許は資格としても魅力があるため、教職課程があるというのは大学の大きなセールスポイントにもなっています。
教職課程を設置するためには文科省の審査に合格して認可を受ける必要があり、審査に当たっては教職課程の教員の職歴や研究実績、開設する科目が適切かどうか、きちんと授業計画が策定されているかどうかなどが調べられます。教職課程の質を保証するための仕組みですが、認可は一度だけ受ければよいため、一部の大学では認可後に教職課程の教員が不足していたり、授業科目が認可当時と異なっていたりするなどの問題点も指摘されています。
また、国立大学では教員養成系学部卒業者の教員就職状況が文科省から毎年公表されているのに対して、私立大学などでは教員就職状況などを公表していないところも少なくありません。

このため教員養成の改革を検討していた文科省の協力者会議は2013(平成25)年10月、大学の教職課程の質を保証する方策の一つとして、教員就職状況などの情報公開を義務付けることを検討するよう提言しました。これ受けて文科省は、教育職員免許法施行規則を改正して2015(平成27)年度から教職課程の情報公開を大学に義務付けることにしたものです。
具体的には、教職課程の教員数、各教員の業績や学位、教職課程の授業科目、卒業者の教員免許取得状況、卒業者の教員就職状況などの情報をウェブサイトなどで公開することとしています。これらを見れば、その大学の教職課程でどんな教員がどんな授業をしているのか、教職課程を履修した学生のうちどれくらいが教員免許を取得できたのか、さらに何人が実際に教員として就職できたのかがわかるようになります。
教職課程の情報公開の義務付けの背景には、私立大学を中心とする教職課程の増加が背景にあるようです。たとえば、小学校教員免許の取得者はこれまで国立大学の教員養成系学部がほとんどを占めていましたが、最近では私立大学でも小学校教員の免許を取得できる学部・学科が増えています。しかし、ごく一部の大学では、卒業者の教員就職実績がほとんどないところもあるとも言われています。

将来の進路の一つとして教員を考えている受験生やその保護者にとって、教職課程の情報公開義務付けは大学選びの貴重な判断材料の一つになることでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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