学習塾などの質保証でガイドライン 情報公開など促す‐斎藤剛史‐

子どもの学習塾や習い事の教室をどこにするかなど、民間教育事業者を選ぶ際に迷うことは少なくないと思います。このため文部科学・経済産業・厚生労働の3省は、民間教育事業者に対して教育サービスの質の向上の取り組み、情報公開すべき項目などの基準を定めたガイドラインを策定しました。法的な拘束力はありませんが、ガイドラインを適切に活用することで、情報公開など利用者に対する透明化の取り組みが広がることが期待されます。

公的な学校と異なり、学習塾や語学教室などの民間教育事業者には、消費者契約法など経営面などでの規制はあるものの、教育内容などについては原則として公的な規制がありません。また、授業料総額、提供する教育サービスの内容、講師の経歴などに関する情報公開も十分に進んでいるとは言えないのが現状です。実際、ガイドライン策定の資料とするため文科省が行ったアンケート調査では、民間教育事業を受講中の利用者から「学習成果が上がらない・見られない」26.2%、「教育内容に比べて授業料が高い」25.6%、「講師の能力(指導力)が低い」10.4%などの不満が寄せられており、教育サービスに関する情報が利用者と事業者との間で十分に共有されていないことによるミスマッチが発生しています。このため文科省など3省は、ガイドライン作成のために検討会を設置しました。民間教育事業者が教育サービスを向上させるために必要な取り組みを示すためです。利用者が民間教育事業者を選択するために必要な情報、教育内容やその成果などが含まれます。

検討会が作成したガイドラインは、利用者についてお金を払ってサービスを受ける「消費者」としての立場と、教育を受ける「学習者」としての立場の二つがあると定義し、その二つの立場から利用者のニーズを満たす必要があるとしています。具体的に利用者に情報公開する項目としては、「運営主体」(従業員数、財務状況など)、「相談窓口、受講サポート」(予約・キャンセルなどの方法、教育相談や苦情の相談窓口、学習サポート対応など)、「費用」(授業料等の支払総額、支払方法、割引制度、その他発生する可能性のある費用など)、「講師」(常勤・非常勤、学歴・資格、指導経験・実績など)、「講座詳細情報」(実施計画・学習内容、授業形態、テキスト・教材、講座定員・講師数、修了要件など)、「安全・危機管理」(災害時の対応、防犯体制、障害者・高齢者向け設備など)などが例示されています。ガイドラインの適用対象は、学習塾・語学教室・カルチャーセンター・音楽教室・スポーツ教室のほか、各種習い事の教室などが想定されています。

文科省など3省は今後、ガイドラインの周知・普及を図っていくとともに、学習塾など各業界団体がそれぞれに特化したガイドラインを作成するなどの自主的な取り組みを求めていくことにしています。
ガイドラインの活用が普及すれば、学習塾や各種教室などを選ぶ際の大きな参考材料となりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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