土曜日には「授業」? それとも「学習」? 揺れる学校の対応-斎藤剛史-

前にも当コーナーでお伝えしましたが、2013(平成25)年11月に学校教育法施行規則が改正され、実質的に2014(平成26)年度から教育委員会の判断で公立学校の土曜授業が自由にできるようになりました。学力向上を求める保護者の声も強く、当初は2014(平成26)年4月から多数の学校で土曜授業が導入されるとの見方もありましたが、ふたを開けてみると慎重な姿勢を取る教育委員会のほうが多いようです。背景には、土曜授業の取り組みに対する学校や教委などの戸惑いが見えます。

従来から土曜授業を実施している東京都などは、開かれた学校づくりの一環として保護者や地域住民への公開を行うことなどの「制限」を土曜授業に課していました。これに対して、制度改正により2014(平成26)年度からは「制限」なしで自由に土曜授業ができるようになったと受け止めている保護者のかたなどが多いと思います。しかし、実はそうでもないのです。土曜授業について文部科学省は、

(1)通常の授業を土曜日に行う「教育課程内の土曜授業」
(2)体験学習など通常の授業ではできない取り組みを行う「教育課程外の土曜の課外授業」
(3)地域・保護者・民間企業などと連携して多様な活動を行う「土曜学習」

の3タイプに分類しています。同時に文科省は土曜日教育ボランティアなどの補助事業のほか、「教育課程内の土曜授業」についても民間事業者や外部講師を活用するなどのモデル事業を展開しています。

これらに共通するのは、「土曜日ならでは」の活動を土曜授業や土曜学習に強く求めていることです。裏を返せば、普通の授業を行うだけの土曜授業は好ましくないというのが文科省の考え方であると、都道府県や市町村の教育委員会が受け止めているとも言えます。
実際、土曜授業を行うためには、それによる教員の代休をどう確保するか、中学校以上で定着している土曜日の部活動や大会・対外試合などをどうするか、など多くの課題があります。また、地域によっては土曜日に学習塾に通う子どもが多いところもあります。加えて、文科省が補助事業やモデル事業の形で、地域・保護者・民間企業などと連携した「土曜日ならでは」の活動を強く求めていることから、どう対応すべきか戸惑っている自治体が少なくないというのが現在の状況のようです。

いずれにしろ、3タイプのうちどの土曜授業を行うにしても、地域・保護者・民間企業などと連携して効果のある活動を実施するには周到な準備が不可欠で、通常の授業を土曜日に実施するよりもはるかに手間がかかります。単に土曜日にも子どもが学校に行くので手間がかからなくなると思っていた保護者からは、逆に学校から協力要請がきて手間が増えたという受け止め方をする人も出てくる可能性もあります。
ただ、土曜日を利用してさまざまな学習機会を与えるという文科省の方針は、21世紀の不透明な社会を生きる子どもたちに必要なことであるのは間違いありません。これから夏休みが終わって2学期以降、市町村教委などがどのように土曜授業に取り組んでいくのかが注目されるところです。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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