「地味」は「質実剛健」のあらわれ? 端午の節句
アンケート期間:2014/3/19~2014/3/25 回答者数:1364名
アンケート対象:本サイトメンバー 年少~高校生の男子の保護者のかた
※百分比(%)は小数点第2位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある
女の子の健やかな成長を願う3月3日のひなまつりに続き、5月5日は男の子のお祭りである「端午の節句」。ひなまつりでは、華やかなひな人形を飾り、ちらしずしなどでもてなす伝統的なお祝いのしかたが現代にも引き継がれていますが、端午の節句はどうなのでしょうか。今回は端午の節句のお祝いのしかたについて伺いました。以前のひなまつりについてのアンケート(アンケート期間:2014/1/22~2014/1/28、回答者数:1556名)結果とも比較しつつ、見ていきましょう。
五月人形 飾る家庭はひな人形より20ポイントも減少
端午の節句といえば、五月人形とこいのぼりが付き物です。特に、空にはためくこいのぼりは印象的です。こいのぼりを見て、端午の節句が近いことを思い出すかたも多いのではないでしょうか。しかし、家庭での所有率は42.2%と、半数を下回る結果に。広く親しまれている割に、普及はいまひとつのようです。飾る場所は、「庭」や「ベランダ」という回答が大半を占めていました。「人形と合わせて飾れる大きさのものなので、五月人形の両隣に置いています」というコメントからもわかりますが、住宅事情に合わせた、大小さまざまなこいのぼりが販売されています。しかし、空にはためく優雅な姿こそこいのぼりの醍醐(だいご)味のようで、「子どもはこいのぼりのどのようなところが好きなのか」という質問でも「風になびくところ」という回答が多く見られました。
しかし、飾る場所があったとしても「風が吹いた時、こいのぼりがアンテナや隣家などに引っかかってしまうことがわかり、飾っていません」といった声もあり、こいのぼりを理想的に飾るには広い場所が必要なのか、なかなか実現は難しいのが実情のようです。
【図1 ご家庭にこいのぼりはありますか?】
五月人形についてはどうでしょうか。こちらは、持っているという回答が67.7%と、こいのぼりよりは所有率が高いようです。しかし、女の子のいる家庭のひな人形の所有率と比較してみると、20ポイント近くも少ないことがわかりました。「毎年飾りますか」という質問に対しても、ひな人形より10ポイント以上少なく、男の子のお祭りである端午の節句では、ひなまつりよりも飾り付けを省略する傾向があるようです。「おひなさまに比べると飾りが地味で、忘れそうになります」というコメントさえありました。
【図2 ご家庭にひな人形・五月人形はありますか?】
【図3 ご家庭では毎年ひな人形・五月人形・こいのぼりを飾りますか?】
それでは、どのような五月人形がよく購入されているのでしょうか。一番人気は10万円台の兜(かぶと)飾りでした。ひな人形では10万円代の親王飾りが一番人気だったことを考えると、コンパクトで比較的手頃なものが好まれるという点では、ひな人形と共通しているようです。五月人形以外にも、破魔弓や太刀、張り子の虎といったものから、中には「鯉のぬいぐるみ」といったユニークな意見もありましたが「コンパクト」であることが人気の要因であることは間違いないようです。
【図4 ご家庭の五月人形は、どのような形、価格帯ですか?】
実際、五月人形やこいのぼりを飾るのが誰の役割なのかを伺うと、こいのぼりは多少力仕事もあるためか、父親が比較的多い結果となりましたが、五月人形はひな人形と同様、母親が最も多い割合を占めました。
飾らない理由としても、ひな人形と同様「出し入れが面倒」が断トツで多く、女の子、男の子両方を抱える家庭での、母親の苦労が目に見えるようです。
【図5 ひな人形を飾るのは、どなたの役割ですか?(複数回答)】
【図6 五月人形を飾るのは、どなたの役割ですか?(複数回答)】
【図7 こいのぼりを飾るのは、どなたの役割ですか?(複数回答)】
彩り少なし? 端午の節句の食事情
飾りものはひなまつりに比べ省略する傾向のある端午の節句、お祝いのしかたはどうでしょうか。特別な食事をするか伺ったところ、71.2%が「する」と回答したひなまつりに対し、端午の節句は41.9%と、こちらも少ない結果に。また、ちらしずしやひなあられ、はまぐりのお吸い物など華やかな食事が多いひなまつりに比べ、かしわ餅やちまきがほとんどと、いう若干寂しい様子になっていることがうかがえます。
【図8 節句に特別な食事等をしますか?】
【図9 端午の節句の特別な食事で食べるものを教えてください。(複数回答)】
5月5日というとゴールデンウイーク中でもあり、伝統的なお祝いのしかたにこだわることなく「特別なことはしなくても、子どもと楽しく過ごせればよい」と考える保護者も多いのでしょう。空にたなびくこいのぼりを見て、「端午の節句」というよりは「ゴールデンウイーク」の訪れを感じる、という感覚を持つかたも多いようです。
さらに、もともと公家の儀式をもとにした「桃の節句(ひなまつり)」に比べ、「端午の節句」は質実剛健な武家の儀式が基本です。ここにも、端午の節句が地味に感じられる理由があるのではないかと予想されます。
ただ、「節句」が年に一度、子どもの成長を祝う儀式であることには変わりありません。「またひとつ大きくなった「健やかに育ってくれた」……。お祝いのしかたにはこだわらずとも、その心を持ち続けることが大切なのだと思います。