教科書採択問題 揺れる共同採択制度

教科書採択問題 揺れる共同採択制度下村博文文部科学相が、沖縄県竹富町教育委員会の教科書採択に対して、直接是正要求を行った。国が都道府県を飛び越えて市町村に是正要求を行うのは初めてのこと。なぜこのような事態が起きているのか、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏が解説する。

 

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現行の制度では、義務教育用の教科書は、国が多額の予算を割き無償で給与されています。国の検定を受けた複数の教科書の中からどの検定教科書を採択するかを選ぶ権限は、公立学校の場合は学校を設置する教育委員会、国立学校や私立学校の場合は各校の校長にあります。ですから竹富町教委が独自の判断で教科書を採択するのは、本来的には問題ないはずです。

 

しかし採択にあたっては、都道府県教委が複数の自治体をまとめて「採択地区」を設定し、地区内の教委で1種類に絞る「共同採択」を行うことが、教科書無償措置法で定められています。教科書の採択権限を定めた地方教育行政法よりもあとに制定された法律のため、こちらを優先する、というのが文科省の解釈です。

 

今回の問題の発端は、八重山採択地区を構成する石垣市・与那国町と竹富町の間で2011(平成23)年8月、次年度の中学校公民教科書が一本化できなかったことにあります。構成自治体の意見が食い違った時にどう協議するかのルールがなかったため、時の民主党政権は、国としては竹富町に教科書を無償給与できないが、独自に教科書を用意して生徒に無償で給与することは容認しました。そこで竹富町は2012(平成24)年4月、約1万6,000円の寄付を得て7校23冊分を配布。次年度も一本化できずに、八重山地区では別々の教科書が使用されることになりました。

 

年末に政権を取り戻した自民党の文科省政務三役は、「ルールを守る大切さを教える教育現場で違法状態が続くことは認められない」とし、新年度までに具体的な動きの見られない両教委に対し、法律による是正要求に踏み切ったと、下村文科相は説明しています。

 

出典:「是正要求」で揺れる教科書採択制度とは -ベネッセ教育情報サイト

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