義務教育の教科書、ホントはおいくら!? かさむコスト、上がらない定価……裏側では教科書会社の涙ぐましい努力も

義務教育の教科書、ホントはおいくら!? かさむコスト、上がらない定価……裏側では教科書会社の涙ぐましい努力も新学期を迎え、小・中学校では子どもたちに新しい教科書が配布される。ところで、無償配布されている義務教育用の教科書、本来はいくらぐらいするものなのだろうか? 教育ジャーナリストの渡辺敦司氏が解説する。

 

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教科書の定価は毎年改定されており、文部科学省のホームページに定価の最高額が一覧で載っています。学年によって違いますが、主要4教科を見ると、たとえば国語が小学校で633~799円、中学校で766~794円、理科が各608~929円、710円など、新書・月刊誌並みかそれ以下の値段です。これが実技系教科などになると、小学校音楽が208円、同図工が417〜420円、中学校外国語が312円などと、雑誌並みかそれより安いものも少なくありません。

 

この最高額を単純に計算すると、小学校は1年生3,490円、3年生4,470円、5年生4,093円、中学校は1年生7,802円など。全教科を合わせれば、そこそこの値段になります。

 

こうした値段は一人当たりですから、全国の小・中学生全員分ともなると相当な額になります。文部科学省の2014(平成26)年度予算では413億円。少子化で子どもの数が減っても、前年度比1億円増です。新学習指導要領による学力向上路線に従って教科書の増ページが図られた結果、今のような水準になりました。

 

最近はビジュアル化や大判化が進んでいます。当然それに伴ってコストもかさみますが、国の予算も限られているので、簡単には定価をアップできません。かさむ編集コストと上がらない定価、減るばかりのお客さん(児童・生徒数)に、教科書会社は年々、頭を悩ませるばかりです。

 

かと言って「白黒」の教科書に戻したとしても、学校の先生や肝心の子どもたちからそっぽを向かれては何にもなりません。高コスト体質は我慢して先生方の要望に応じつつ、国の検定基準や都道府県・市町村の採択動向も先んじながら記述の一言一句に目配りして、授業でより使いやすく、わかりやすい教科書を目指し、少しでもシェアの拡大を目指す……。無償で配られるきれいな教科書には、そんな涙ぐましい努力が込められているのです。

 

出典:無償の教科書、実はこんな値段 -ベネッセ教育情報サイト

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