未来の正規雇用を勝ち取るために 幼少期から育成すべき新しい能力とは?

未来の正規雇用を勝ち取るために 幼少期から育成すべき新しい能力とは?「キー・コンピテンシー」という言葉を聞いたことがあるだろうか? これからの社会で求められる新たなスキルの重要性を、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が解説する。

 

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国立教育政策研究所の調査から、正規雇用者は非正規雇用者や無職者に比べて、「自律的力」や「人間関係力」といった力が高いことがわかりました。

 

そのなかで注目されるのが、新しい学力観の一つである「キー・コンピテンシー」(主要能力=自律的に行動できる「自律的力」、データや知識などを使いこなす「道具活用力」、他者との関係を築ける「人間関係力」の3つの力)と就労形態との関係です。調査対象者に質問してそれぞれのコンピテンシーの力を上・中・下の3群に分け、現在の就労形態と比較しました。就労形態ごとに上位群の者が占める割合を見ると、自律的力については正規雇用者が31.5%、非正規雇用者が25.5%、無業者が20.0%、道具活用力は各27.0%、22.5%、24.0%、人間関係力は各45.0%、30.5%、21.0%でした。同研究所は「この3つのコンピテンシーのいずれにおいても、就労形態との関連がみられる」と結論付けています。

 

一方、世帯年収とコンピテンシーの関係では、人間関係力の高い人ほど年収が高いものの、自律的力や道具活用力との関係はあまり見られませんでした。これに対して、生活の満足度では、自律的力と人間関係力が高いほど、現在の生活に対する満足度が高いという結果が出ました。どうやらコンピテンシーは、経済的な利益とは必ずしも結びつかないものの、社会を生きていくうえでの生活の満足度を上げることにつながっているようです。

 

現在の学習指導要領は、基礎・基本の学力の向上とともに、知識を活用して自ら問題を発見し解決する力、コミュニケーション能力など人間関係形成に関わる力など「生きる力」の育成を重視しています。これは「キー・コンピテンシー」とも重なるものです。同研究所の調査結果は、キャリア教育などをとおして自律的力や人間関係力などを小さなころから育成していくことの重要性を示しているともいえるでしょう。

 

出典:新しい学力、正規雇用の決め手は「自律的力」と「人間関係力」 -ベネッセ教育情報サイト

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