改革進まぬ法科大学院に中教審が厳しい指摘-斎藤剛史-

将来の進路として弁護士などの法曹関係者を考えている者やその保護者にとって、法科大学院の動向は多少なりとも関心のあるところでしょう。その法科大学院に、文部科学省の補助金見直しによる再編統合の波が押し寄せていることは、以前の当コーナーでもお伝えしました。しかし、中央教育審議会の法科大学院特別委員会の調査によると、まだまだ課題を抱えている法科大学院が少なくないことがわかりました。

現在の司法試験は、原則として法科大学院の修了者でないと受験できません。しかし、法曹関係者らの反対により政府の当初計画どおりに司法試験の合格者が増やせなかったこと、予想以上に法科大学院が増えたことなどによって、法科大学院を卒業しても司法試験に合格できない者が多くなりました。その結果、法科大学院の人気が低迷し、全国の法科大学院の約9割が定員割れという状況になっています。このため文科省は、法科大学院に対する補助金の条件を厳しくして、課題の多い法科大学院には2016(平成28)年度から補助金を交付しないことにしています。
文科省の狙いは、低迷する法科大学院の再編統合を進め、全体の入学定員を適正規模にまで縮小することにあり、この方針を受けて既に学生募集を停止する法科大学院も出始めています。しかし、中教審の法科大学院特別委員会がまとめた2013(平成25)年度の「各法科大学院の改善状況に係る調査」(外部のPDFにリンク)によると、課題がある法科大学院が依然として少なくないことが明らかになりました。現在、国公私立で合計73校の法科大学院がありますが、調査ではそのうち26校(国立6校、私立20校)に対して、入学者確保などの改善を求める意見が新たに付けられました。既に学生募集を停止している駿河台大学など4校と2014(平成26)年度から学生募集を停止する東北学院大学など2校の計6校には意見が付けられていないので、13(同25)年度は実質的には67校中26校(38.8%)に改善を求める意見が新しく付けられた計算になります。

特に26校のうち7校に対しては、入学者の確保や司法試験合格率のアップなど全体的な改善が進んでおらず「更に抜本的な改善に取り組む必要がある」として、今後は「重点的にフォローアップを実施していく」という厳しい意見が付けられました。7校の内訳は、国立が香川大学と鹿児島大学の2校、私立が白鴎大学(栃木)、日本大学(東京)、愛知学院大学(愛知)、京都産業大学(京都)、久留米大学(福岡)の5校です。さらに、残り19校(国立4校、私立15校)については、改善に取り組んでいることを評価しながらも、その成果が現れていないなどとして「継続的にフォローアップを実施していく」または「来年度以降の状況を見守る」などの意見が付けられました。継続的フォローアップを指摘された国立大学のうち信州大学は、先頃、法科大学院の学生募集を停止することを決めました。中教審の同委員会は「法科大学院全体としての入学定員と実入学者数との乖離(かいり)は大きいと言わざるを得ない」と明言しており、今後、さらに法科大学院の廃止や統合が加速することになりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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