教育委員会の改革、首長の権限強化で教育行政の政治的中立性は?

教育委員会の改革、首長の権限強化で教育行政の政治的中立性は?今年の通常国会では、昨年12月の中央教育審議会答申をもとにした、教育委員会制度の改革法案が提出される。2011(平成23)年に起きた大津市の中学生いじめ自殺事件などをめぐり、事件に対応する機関と責任の所在が問われたことがきっかけだ。都道府県知事や市町村長(いわゆる「首長」)が直接任命する教育行政の責任者と、教育委員会との関係について、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏が解説する。

 

***

 

政府の教育再生実行会議は、昨年4月、新「教育長」(名称は変更を検討)を首長(都道府県知事や市町村長)が直接任命して教育行政の責任者とすること、新「教育委員会」(同)は教育長に教育の大きな方向性を示したり、チェックを行ったりする役割にとどめることを提言しました。

 

現在、教育委員(非常勤)は首長が議会の同意を得て任命していますが、任命後は首長からの独立が認められており、日常的には教育委員の中から選ばれた教育長(常勤)が教育委員会事務局を指揮監督して執行に当たります。ここでは狭い意味の教育委員会(教育委員の会議)が、教育長の法律上の「上司」(教育行政の執行機関)になり、両者が一体で責任を果たすことになっています。

 

中教審の教育制度分科会では、新しい教育長は首長が直接任命するのだから首長を教育長の「上司」にすべきだとの意見と、今までどおり教育委員会を「上司」とすべきだとの意見が、最後まで対立しました。
中教審答申では首長は教育長に特別な場合を除いて指示を行わないとしていますが、「上司」となった首長が「部下」である教育長に実質的な権限を強めはしないか、というのが中教審委員の心配です。

 

首長の権限が強まることで、教育行政の政治的中立性や継続性・安定性を確保できるかが法案作成の焦点になります。有権者にも、教育を大事にする首長を選ぶ目がいっそう求められるでしょう。

 

出典:教育委員会の改革、首長との関係はどうなる -ベネッセ教育情報サイト

子育て・教育Q&A