ロンドンでの日々~夫の海外転勤と娘とわたし【第10回】ロンドン生活、はじめの一歩

この連載では、ある共働き家庭の海外転勤前後の様子を具体的にご紹介します。前回は渡英直前で揺れる娘の心「渡英前ブルー」についての内容でした。今回は、スタートしたばかりのロンドンでの生活を中心に、お伝えします。



夫への転勤辞令から10か月後の3月下旬、いよいよ娘と私の引っ越しです。計画的に準備を進めていたつもりでしたが、出発前の3日間は片付け、大掃除、直前しかできない各種手続きなどに追われ、寝る間も惜しむ毎日。引っ越し荷物では送れなかった大量の荷物を抱え、前泊の成田のホテルに到着した時には、娘も私も疲れ果ててグッタリ。もっと優雅な旅立ちをイメージしていましたが、現実は甘くはありませんでした。

そんなこんなでドタバタと出発当日を迎えましたが、朝、ホテルを出て空港に向かう途中、車の窓から三分咲きの桜が見えました。この年は春の訪れが早く、桜の開花も例年より10日ほど早かったため、諦めていた桜の花に出会うことができました。「このロンドン行き、きっといいことがあるぞ!」……心の中でそう思いながら、一路ロンドンへと向かいました。



ついにロンドンに到着! そんな私たちを待っていたのは……

十数時間のフライトを経て、ロンドンの自宅に到着した時には既に夜。そんな私を待っていたのは、高く積まれた段ボール箱。一瞬めまいがしましたが、これは日本から送った引っ越し荷物のうち航空便で送った荷物。娘と私にとってはすぐに必要なものばかりだったので、体を休める間もなく荷解き、片付け。かなり疲れましたが、おかげで足りないものを買いに走ることもなく、スムーズに生活をスタートさせることができました。海外引っ越し、体力が必要です……。

翌日・翌々日と夫が休暇を取ってくれていたので、娘を含め3人で生活に必要な情報を確認。日本国内での引っ越しでも同じかと思いますが、新しい土地で生活を始める時は、生活に最低限必要なことを一から確認して覚えなければなりません。

まずは自宅内や自宅まわりの設備、ものの使い方。たとえば、洗濯機・オーブンなど家電の使い方やゴミの捨て方、鍵のかけ方や窓の開閉の仕方など。日本のものとは少し違っていたりコツが必要だったりするものが多く、説明書も確認しましたが、何せ英語。一つひとつ時間がかかります。読みこなすのに必死で、次のページを読んでいるうちに前のページの内容を忘れてしまったり……。何度も読み直すくらいなら……と思い、「家事ノート」を作って読み取ったポイントだけ書き留めておくようにしました。ちょっとした手間でしたが、その後何度か読み返すことがあったので、最初にメモしておいてよかったです。

次に近所の地理を確認。最寄りの駅やバス停、病院、銀行や郵便局、スーパーなど、日々の生活でよく利用する場所と道順を夫に案内してもらいながら覚えました。いずれも徒歩圏内にあり、また治安もよく安心しました。子どもがいる場合は学校への通学経路を含めて住環境のよい場所を選ぶことは、その国での生活や印象を大きく左右する大切なポイントだと実感しました。



初めての海外暮らしは、街の情報集めに奔走!

さらに、ロンドンでの情報源の確保と確認。現地のニュースはもちろんのこと、娘が4月から片道1時間以上かけて一人で学校に通うこともあり、鉄道など公共交通機関の運行状況、天気予報、緊急時の連絡先など随時確認できる情報源を家族全員が把握しておく必要があります。また、家の設備の故障などのトラブル対処や生活に必要な地域情報などの情報源も、幅広く押さえておけば安心です。

私の場合は、渡英が決まってから割と早い時期から、周囲にそのことを伝えていたので、ロンドンに住んでいる友人・知人のかたを何人か紹介してもらっていました。その方々のうち、ロンドンで比較的ご近所のかた、娘と同じ学校にお子さんが通っているかたと、渡英して間もなくお会いすることができました。その方々から、ロンドンに住む日本人向けのインターネットサイトなどを教えていただいたことで、ロンドンでの生活に早く慣れることができました。やはり、同じ日本人同士の情報は、かゆいところに手が届くものが多く、大きな助けになります。

また、情報を逐次チェックするうえで便利なのはスマートフォンです。娘と私も、渡英後すぐに契約しました。ロンドンの地理にまだ慣れないころは、地図アプリが大活躍。ロンドンは郵便番号が細かく割り振られていて、家やビルまで特定できます。娘の春休みの間、スマートフォン片手になるべく毎日いろいろなところに出かけ、地理に慣れるようにしました。

それから、海外で生活するうえでは、現地の治安に関する情報に敏感にならなければ自分の身は守れません。ロンドンは比較的治安がよいそうですが、とは言え、大規模なデモが暴動に発展したり、テロの脅威があったりするなど油断はできません。大使館からメールで連絡が来る場合もありますが、自分でもニュースなどをチェックして危険な場所はないかを確認し、家族で共有しておくことが必要です。

初めての海外生活ですが、生活に必要な知識や情報を最初にしっかり押さえておけば、少し落ち着いて生活できますし、気持ちにゆとりも生まれます。娘も私も英語だらけの環境に慣れるのにはもう少し時間がかかりましたが、何とかやっていけそうな気持ちを持って新学期を迎えることができました。

次回は、娘と私の英語との格闘についてお伝えします。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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