私の両親のコーチング法とは?[やる気を引き出すコーチング]
今年も、新しい年を元気にお迎えのことと思います。いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。このBenesse教育情報サイトのコラムを「もう5年以上も書かせてもらっているんです」という話をすると、皆さん、とても驚かれます。私自身も信じがたいことだと思っています。これほど長きにわたって、機会を与えてくださっているベネッセさんと、いつも読んでくださっている皆さまに、年の初めにあたり、あらためて心から感謝申し上げます。
さて、今回は、日頃いただくご質問の中でも意外と多いこのご質問への回答を、この場を借りてさせていただこうと思います。それは……
「石川さんのご両親とはどんなかたなんですか? どんな育て方をしたら、石川さんのように自分の夢を叶えてイキイキと生きる大人になれるんですか?」というものです。たいへん恐縮です。決して完璧な親ではありませんが、何かのご参考になればと思い、今回まとめてみました。
父の口癖:「お前は運がいいやつだから」
父は、私の受験や就職の時はもちろん、折々に「お前は運がいいやつだから」と言っていました。今でも言います。何をもってそう言っているのかは、はっきり示しませんが、言われ続ける中で、私は自分で理由を考えるようになりました。「きっと、あのことについて言っているに違いない」と。実際のところはわかりませんが、おかげさまで、「実力は足りなくても運がいいから大丈夫!」という気持ちで生きています。「ここぞ!」という時にも、落ち着いて臨んできたように思います。
母の口癖:「私の子にしてはできすぎ」
母は心配症なタイプで、昔から、「大丈夫? できないんじゃないの?」「ちゃんと食べないと病気になるよ」などのマイナスの暗示をどんどん言う人です。それがかなりうっとうしいのですが、上手くできたことに対しては、「あんたはえらいね! 私にはそんな才能はない。私の子にしてはできすぎ」という言い方で必ず承認してくれます。それが嬉しくてがんばれたこともありました。
仕事の愚痴を子どもに言わない
両親は共働きで、おのおの定年まで勤めあげました。それだけでも立派だと思いますが、あらためて感心するのは、「仕事がつらい」「仕事に行きたくない」というようなことを、子どもの前では一切言わなかったことです。
多少、強がっている時もあったかと思いますが、父は「仕事は面白い」とかたくなに言い続けていました。そんな親の姿を見て育った私は、「仕事とは面白いものなんだ」という思い込みを持って社会人になりました。学生時代は、「早く社会に出て働きたい」と心から思っていました。そのおかげで、社会に出てから初めて、「仕事とは意外と厳しいものだ」ということを思い知りました。それでも、「がんばればきっと面白くなるはず」と思って乗り越えることができました。
枕元にはいつも本
物心ついたころには、両親の枕元には、いつも何かしらの本が置いてあって、寝る前に、何ページか読書をしてから寝るという親でした。ですから、「読書をしなさい」と言われなくても、自然と、私も本を読むようになっていました。
今、父が書道をする様子を見ている甥っこ(小1)が、何も教えていないのに、すずりを出して、墨をすって、半紙に筆で文字を書いているそうです。言って聞かせなくても、大人がやっていることを自然とやるようになるものなんですね。
手前みそな話で恐縮でしたが、両親をいつも敬愛し、言うことをすべて素直に聞いていたかというと、決してそういうわけではありません。嫌悪し、反発したこともたくさんありました。
ただ、この年になってようやく、「おかげで」と思うことに気付けるようになりました。皆様のお子さんも、きっとそう思う日が来るのではないかと思います。
「この言葉をかけ続けてみよう」「まず自分がこれに取り組んでみよう」と思われることを何か今年のテーマとして始めてみられたらと思います。それが、お子さんの「やってみよう!」という気持ちを引き出すことに、きっとつながるはずです。
『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,575円=税込み> |