小栗左多里さん(漫画家)が語る【前編】「ベルリンで3か国語の子育て!」

人気漫画『ダーリンは外国人』シリーズの著者、小栗左多里さんは昨年から夫のトニーさんと息子さんの3人で、ベルリンでの生活をスタートさせました。前編では、一家がベルリンに移住した理由、海外での子育てについて伺いました。



運命を感じ、ドイツ・ベルリンに移住!

10年くらい前から、一度は日本以外に住もうと夫婦で話していました。トニーにとってそもそも日本は「海外」ですが、わたしも若いころから海外に住んでみたいとは思っていましたね。日本は「はみ出してはいけない」と、少し肩に力が入る感じがしていて……。でも海外に何度も行くにつれ、年をとるにつれ、日本の良さに気付いて、最近はそれほど行きたいとは思っていなかったし、仕事や子育てに追われてどんどん時が過ぎていっていたんです。しかし息子の小学校入学が近づいてきて、行くならこのタイミングだろうと。悩みましたが、もしダメだったら戻ってこられるということで、行ってみることにしました。ハワイ、シンガポール、香港、ブダペストなど、いろいろな国や地域を検討し、最終的に選んだのは、ドイツ・ベルリンです。
以前から「今、ベルリンが面白い」という噂は聞いていたんですが、実際に行ってみたら本当に素敵だったんですよ。特に好きなのが、ベルリンの中心部にある旧東地区のミッテという街。地下鉄の駅から階段を上がったとたん、雰囲気がびっくりするほどオシャレ! カフェやお店の内装が個性的で本当に面白い。若い人たちが街を作っているという感じなんです。わたしもトニーも「この街に住んだら、良いことがありそうな気がする」とめずらしく意見が合いました。その後、学校や医療のことも調べて、良いんじゃないかということで決めました。



3か国語を話すということ

息子は現在、ベルリンの公立小学校に通っています。学校の授業は、英語とドイツ語。まだドイツ語が流暢(りゅうちょう)ではなく、日本が恋しくなることもあるようですが、だんだんお友達も増えてきました。
息子の学校は小中高の一貫校なのですが、上級生が下級生のシッターをしてくれる制度があり、週2回ほど上級生に家まで送ってもらっています。これは、わたしやトニーの送り迎えの負担を軽減するだけでなく、ドイツ語を話す機会を増やすためでもあります。多言語を話すトニー曰く、徹底的にその言語を使うことが、マスターするうえでなによりも重要とのこと。日本にいたとき、とにかくトニーは根気よく息子に英語で話しかけていました。2人だけで海外の親戚の家に行き、英語しか使えないような環境にしたことも。そんな努力のおかげで、英語はネーティブとして身に付きました。
ドイツでは日本語を維持するため、トニーも意識して日本語を話しています。わたしは本の読み聞かせもよくしますね。ネーティブといっても、複数の言語がどれも中途半端になる危険性もあります。子どもの「適性」もありますし、簡単なことではありません。周りの日本人ママたちと相談しあったり、励まし合ったりしています。息子もがんばって、世界を広げていってくれたら良いなと願っています。



子どもの「好き」を伸ばしたい


ベルリンには、大小さまざまな公園がたくさんある。

そんな息子が大好きなのは、レゴ®ブロックです。アッと言う間に作品を作りあげてしまいます。ただ、今は自由に作品を作るより、セット商品を仕上げることのほうが好きみたいです。もっと創作することの喜びを味わってほしいのですが……。だから、一緒に粘土遊びもしたりします。絵を描くことも好きになってくれたらと思うのですが、息子は今のところあまり興味がないようです。ただ、息子が絵を描いているときは、「色のセンスが良いね」「よく観察しているね」など、彼の努力をほめるようにしています。でき不できといった結果ではなく、「努力する姿をきちんと見ているよ」ということが伝われば良いなと思っているからです。自分では苦手だと思っていた分野でも、自信をもてることを一つでも見つけてくれればうれしいですね。

後編では、子育てについて心がけていることについてお聞きしました。

※「レゴ®ブロック」はレゴ社の登録商標です。

『ダーリンは外国人 with BABY 』『ダーリンは外国人 with BABY 』
<メディアファクトリー/小栗左多里&トニー・ラズロ(著)/1,050円=税込み>

プロフィール


小栗左多里さん

漫画家。1995年、月刊『コーラス』(集英社)にてデビュー。夫のトニー・ラズロさんとの結婚生活を描くコミックエッセー『ダーリンは外国人(1)~(2)』、『ダーリンは外国人withBABY』(以上メディアファクトリー)など、著書多数。

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