参加型授業が増える大学なのに、増えるのは「受け身体質」の学生というジレンマ
ベネッセ教育研究開発センターでは、2012(平成24)年11月に「大学生の学習・生活実態調査」を実施した。近年、「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる参加型授業を増やしている大学が多いが、実際には漫然と授業を受けることを好んでいる学生が多いことが調査結果からは伺えた。教育ジャーナリストの渡辺敦司氏は、その要因を大学のみならず、高校や保護者にもあるのではないかと指摘する。
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調査では、大学の授業のタイプとしてどちらがよいかを2択で選ぶ項目があります。結果は、「単位をとるのが難しくても、自分の興味のある授業」より「あまり興味がなくても、単位を楽にとれる授業」を、「定期試験や論文・レポートなどを重視して成績評価をする授業」よりも「出席や平常点を重視して成績評価をする授業」を、「学生が自分で調べて発表する演習形式の授業」よりも「教員が知識・技術を教える講義形式の授業」を、それぞれ好む学生が多く、しかも4年前に比べて増加傾向にあることがわかりました。参加型授業が4年前より増えているにもかかわらず、学生は「受け身」傾向にあるのです。
これは、受け身の授業(教師からの解説の時間)が中心の高校時代を引きずっている結果ともいえます。さらに最近では、社会で活躍できるようにと「面倒見」を売りにする大学が増えていて、元々受け身体質の学生は依存度を強めてしまいがちです。保護者・高校・大学が、それぞれよかれと思って世話を焼くことで、かえって生徒・学生の自律を阻んでいるのかもしれません。
政府の中央教育審議会は、答申で「学生に勉強させる大学」への転換を求めたり、大学で「課題探求能力」の育成に力を入れたりするよう提言しています。子どもを自律的な社会人として育てるために何をすべきか、保護者・高校・大学のそれぞれが真剣に考えるべき時期に来ていることをうかがわせる調査結果です。