2012年度から中学校でスタート! 「くすり教育」って何?
2012(平成24)年度から全国の中学校で「くすり教育」が始まります。なぜ今、くすり教育なのか? その内容は? 新学習指導要領を踏まえたくすり教育の普及活動を行っている「くすりの適正使用協議会」石橋慶太さんにお話を伺いました。
セルフメディケーションの広まりで、薬がより身近に
近年の医療費の高騰、健康意識の高まりを受けて「セルフメディケーション」(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)という考え方が浸透してきました。その流れに乗って薬事法が改正され、一般用医薬品が一部のコンビニエンスストアなどで買えるようになりました。
子どもでも簡単に薬が買えてしまう時代。親も子も今まで以上に薬に対する正しい知識が求められるようになりました。
小中学生 薬に関する実態は……
くすりの適正使用協議会が、くすり教育用教材を貸し出した小中学校を対象に行ったアンケート調査(第57回日本学校保健学会口頭発表抄録及び発表内容)の結果、以下のような現状が見えてきました。
小学校で2割強、中学校で1割強が学校に医薬品を持参!
小学校で2割強、中学校で1割強の子どもが学校に薬を持参していました。また、自分の判断で薬を服用すると回答したのは小学生で1割半、中学生で3割近く。小学生ではアレルギーなどの薬、中学生だと生理痛の薬などを持参するケースがあるようです。
その一方で、薬の効く仕組みは全体の8割近くが理解しておらず、「正しい知識を持たないまま、自分判断で薬を服用している」という実態があるようです。
5割以上の子どもがサプリメントの服用経験あり
中学生くらいになると、ダイエットサプリを服用したり、試験勉強のために眠気覚ましのドリンクや栄養剤を飲んだりするケースもあるようです。
中学3年生の保健体育の授業で教えます
新学習指導要領では、薬の正しい利用について、中学3年生の保健体育で「健康な生活と疾病の予防」という単元の中に追加されています。これは今まで高校で扱っていた内容。さらに高校では、薬の承認制度や医薬品の分類など、レベルアップした内容になりました。
指導するのは保健体育教諭が中心となりますが、養護教諭や学校における薬の専門家である学校薬剤師がチームを組んで行うことが理想です。
授業の目的は、薬の正しい使用法を理解すること
薬の使用法を間違えるとどのような問題が起こるのか、などを解説しながら、正しい知識を伝える授業も行われています。子どもたちにわかりやすく伝えるには、専用の教材や実験も有効。すでに「くすり教育」を先行実施している学校では、次にご紹介するような実験を取り入れているところもあります。
こんな実験をすることも。
実験例1) 「カプセル剤を湿った指で触るとどうなる?」
指を少量の水で湿らせてカプセル剤を触ると……
↓
カプセルは、皮膚にくっついてしまう。
【解説】
カプセル剤を少量の水、あるいは、水なしで飲みこむと、薬がのどや食道にはりついてしまうことも。場合によっては、のどや食道で中身が溶けだして炎症を起こす恐れも。だから薬は水なしや少ない水で飲むと効果が発揮できないことや副作用を出してしまうことがあるということがわかります。
実験例2) 「お茶に薬を溶かすとどうなる?」
緑茶を入れた試験管に薬(鉄剤シロップ)を加えて混ぜると……
↓
液体は真っ黒になります。
【解説】
鉄剤とは貧血の際に用いられる鉄分が含まれた薬です。緑茶の成分であるタンニンと鉄が化学反応を起こした場合は、黒色の化合物ができてしまい、体内に吸収されません。このことから、お茶など水以外の飲み物で薬を飲むと化学反応が起きることがあり、体内に吸収されないことから本来の薬の効果が得られない場合もあるということがわかります。
だから「薬(錠剤・カプセル剤・粉薬などの飲み薬)はコップ1杯の水またはぬるま湯で飲む必要がある」ということが理解できる!
すでに「くすり教育」に取り組んでいる小学校も |
2012(平成24)年度から中学3年生を対象に全面実施される「くすり教育」ですが、すでに先行実施している中学校があります。また小学校でも各学校判断で総合学習などの授業や、保健指導などで「くすり教育」を取り入れているところも。その場合、養護教諭が企画するケースが多いようです。 |