心身症 幼児期の対処法

精神的ストレスが要因で身体的症状が出ることを心身症といいます。幼い子ほどストレスに対する感情表現や言語化する能力が未熟なので心身症は出やすく、0歳の赤ちゃんにも見られることがあります。今回は幼児期の心身症について、小児科医の山根知英子先生に伺いました。



母親の感情的変化が大きく影響する

特に乳幼児期は母親との関係が密接な時期。それだけに、イライラや悲しみなど母親の感情的変化が子どもに与える影響は大きくなります。母親の心が不安定だと子どもに心身症の症状が現れることがあります。

■乳児期に多い症状
・ミルクを嫌がる ・離乳食を食べない ・夜泣きやぐずりが激しい ・嘔吐(おうと)
■幼児期に多い症状
・反復性腹痛(腹痛を繰り返す) ・周期性嘔吐症(嘔吐を繰り返す) 
・便秘、下痢 ・夜響 ・頻尿 ・爪かみ ・性器いじり


アトピー性皮膚炎の悪化も心身症!?
アレルギー反応によるアトピー性皮膚炎が、ストレスによってかゆみなどの症状が悪化した場合、心身症として対処したほうが改善する場合があります。イライラすると皮膚をかきむしるなどの姿が見受けられる場合は、心理的要因も疑ってみましょう。


母親は自分を責めずに、心の安定を求めて

子どもに身体的不調が現れて「ストレスのせい?」と思える場合も、とりあえずは小児科を受診しましょう。心身症に当てはまる条件がそろっていても、深刻な病気が隠れている場合があるからです。

そして受診の結果、心理的なものが原因だということがわかっても、母親である自分を責めることはありません。それよりも心の安定が得られるように、リラックスや気分転換できる方法を探してみましょう。悩みをだれかに聞いてもらうのも良いでしょう。子どもの心身症を治すには、母親の心の安定が特効薬です。「ママがハッピーなら子どももハッピー」といった気持ちで、自分をもっと甘やかしても大丈夫!




きょうだいの関係が影響することも……

母親がほかのきょうだいにかかりっきりだと、寂しさや不安を感じた子どもが心身症になるケースもあります。自分が病気になれば母親を独占できるとわかれば、治療しても腹痛や嘔吐を繰り返すこともあります。そのようなときは、普段から一日の中の短時間で良いので「この時間はあなた(その子)だけの時間」という時間を意識的につくりましょう。ゆったりとした気分で子どもと向き合って、スキンシップも楽しんで。また、「お姉ちゃんでしょ」「お兄ちゃんでしょ」といった言葉かけは控えましょう。



過保護、過干渉はやめて……

幼児期には自分の力でいろいろやってみたくなったり、できないことにも挑戦してみたくなったりする時期です。たとえば、靴を履くときも自分では上手く履けません。そんなときに母親が手伝ったり、急かしたり、「ほら、だからお母さんが履かせてあげると言ったのに」などと言ったりすると、やる気がなくなり自信をなくしたりします。そうなると子どもは集団の中で伸び伸びと個性を発揮することができなくなります。そのストレスから心身症になることも。親は子どもが一生懸命やろうとすることを応援して見守りましょう。そして、できるところまでは自分でやらせてあげて、がんばったことをほめてあげましょう。


プロフィール



JR東京総合病院小児科部長、きよせの森総合病院小児科勤務を経て、現在は東京都江東区にある心療内科の病院・くじらホスピタル勤務。JR東京総合病院非常勤医師。専門は児童の心身症、思春期の問題。共著『ママが安心する子育て医学事典』(講談社)。

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