子どもの不慮の事故を防ぐ~学童期編

小学生になると幼児期と異なり、親の目の届かない所での事故が急増します。こうした事故を防ぐために親ができることは? 事故予防に尽力されている小児科医の山中龍宏先生に、学童期の事故の特徴と防ぎ方について伺いました。


自転車のヘルメット着用は保護者の努力義務

不慮の事故による死因(※)を見ると、5~9歳は交通事故によるものが約半数。歩行中の事故と自動車乗車中の事故に加え、新たに出てくるのが自転車に乗っているときの事故です。小学生になると自転車に乗る機会も増えるでしょう。そのとき忘れてほしくないのが、ヘルメット。現在、道路交通法でも、13歳未満のヘルメット着用は保護者の努力義務とされています。しかし、小学生のヘルメットはそれほど定着していないのが現実。交通事故や転倒の際、ヘルメットをつけていなかったために重症または死亡になるケースが多いのです。

※厚生労働省「2008(平成20)年 人口動態統計」


ヘルメット着用は学校・地域で声かけを

小学生だと「みんなヘルメットしていないから……」と着用を嫌がるケースもあるでしょう。自転車乗車時のヘルメット着用は、学校または地域全体で取り組みたい課題です。その一方で「自転車をおりて遊ぶときは、ヘルメットを外すこと」を徹底させましょう。公園などの遊具にヘルメットのひもが引っかかって、首を絞める危険があります。


親子で確認! 小学生の交通事故予防策

○自転車に乗るときはヘルメットを着用する
○ヘルメットはサイズが合ったものを選ぶ
○歩行中の事故は自宅から半径500m以内で多発。親子で家の周りの危険な道をチェックしよう
○車に乗せるときはジュニアシート(体の大きな子はシートベルト)を必ず着用



火遊び事故予防には対処法を教えることも必要

12歳以下の子どもの火遊びによる火災が後を絶ちません。中でも使い捨てライターを使った火遊びが約7割を占めています。こうした危険を防ぐために、2010(平成22)年12月にライターの販売規制が開始され、2011(同23)年9月27日からは完全実施に。今後、使い捨てライター等の規制対象ライターは、子どもが簡単に操作できない(チャイルドレジスタンス)機能があり、国の定めた「PSCマーク」が付いたものでなければ販売できなくなります。しかし、チャイルドレジスタンス機能は幼児を対象としたもの。小学生なら点火できてしまいます。ライターは子どもの手の届かない所に保管するのが基本ですが、万が一、衣類に燃え移ったり、火事になったりしたときの対処法もしっかり教えておくことが必要でしょう。


子どもに教えたい「万が一」の対処法

○火が衣類に燃え移ったら、今いるところですぐに立ち止まり、地面に転がり、消火する。火がますます燃えあがってしまうので、慌てて走るのは禁物。
○火災報知器が鳴ったら、速やかに屋外に避難する。
○火事の際は煙を吸うといけないので、口をハンカチなどで覆い、姿勢を低くして避難する。


プロフィール



緑園こどもクリニック院長。産業技術総合研究所・傷害予防工学研究チーム長。日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会専門委員。子どもの重症事故を繰り返さないために、日夜尽力している。著書に『子どもの誤飲・事故(やけど・転落など)を防ぐ本』(三省堂)など。

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