運動会の食事。間違っていませんか!?

運動会の食事は≪運動≫にふさわしいものを!

運動会が春の学校は5月後半が本番というところが多いようです。特に今年入園入学されたお子さんを持つご家庭では、最初のビッグイベントと言ってもよいでしょう。また保護者の方々も楽しみに当日を待っていることと思います。
以前にも触れたことがありますが、運動会は日本独自のイベントであり、海外ではバスケットボールやサッカー、陸上競技など、特定の種目を学校内で争う大会はありますが、日本のように、ダンスや踊りを楽しみ、かけっこから玉入れ、綱引きまでさまざまな種目を行うイベントはありません。日本では、運動会が始まった当初、村祭りの要素が加わっていたため、スポーツ+お祭り、という形で運動会が発展してきたのです。英語で日本の運動会を≪スポーツフェスティバル≫と訳しますが、文字通りお祭りの要素が強かったというわけですね。

さて、日本人にとっては≪お祭り≫でもある運動会を前にして、保護者の方々の中には、「ここは腕の見せどころ」とばかりに、今から食事のメニューを考えているかたも多いのではないでしょうか? 「前日の夜は、勝つためにカツ丼、または、体力をつけるためにステーキ。当日は、大好きなから揚げにしょうが焼き、卵焼きの中には野菜やひき肉をつめて……」など、いろいろなメニューが思い浮んできているかもしれません。実際、最近の運動会では、お昼の時間に、あちこちで豪華なお弁当を囲んで、家族で食事を楽しんでいる姿を目にします。時には、「豪華な食事を競い合っているのではないか?」と思ってしまうことさえあります。しかし、ちょっと待ってください。豪華な食事が果たしてお子さんのためになっているのでしょうか? よく考えていただきたいと思います。

運動をする前、そして運動をしている途中で摂る食事として、適切なものは何か……。それは「消化がよく、より早くエネルギーに変わる食事」です。基本的には炭水化物を中心にした食事がこれにあたります。逆に、すぐにエネルギーにならずに胃にもたれるカツやステーキ、から揚げなどの油っこいもの、あるいは刺身や生野菜など消化によくないものは避けたほうがよいのです。子どものために豪華な食事を、という気持ちはわかりますが、実は運動会に適した食事とは、一見≪地味な≫食事なのです。



これが、運動会にオススメの食事!!

では、実際運動会にはどんな食事を摂ればよいのか、オススメのメニューを具体的に紹介しましょう。まず、運動会の1週間くらい前から(と言うより、本来は日頃からなのですが)、バランスの良い食事を摂るように心がけてください。エネルギー源となる炭水化物(ご飯、パンなどの主食)、身体作りの基本となるたんぱく質(肉、魚、卵などの主菜)、身体の調子を整えるビタミン、ミネラルや食物繊維(野菜、海藻などの副菜)、さらに果物や牛乳、ヨーグルトなどの乳製品をまんべんなく摂ることが大切です。日頃の食事はどうしても好きな食べ物に偏りがちですが、主食・主菜・副菜・果物・乳製品の5項目が含まれるようにしていれば間違いないと思います。そして3食のうち、特に大切なのは、朝食です。運動会が近づいてきたら、朝食はしっかりと摂って、夕食を軽めにすることが、コンディションを整えるうえで効果的です。
運動会当日の朝は、頭と身体を目覚めさせ、心身ともにスッキリした状態で運動会に臨むために、競技開始の3~4時間前には食事を摂るようにしてください。ご飯やおにぎりに豆腐の味噌汁。さらにキャベツやニンジン、かまぼこなどを卵でとじれば、主菜兼副菜として摂ることができます。パン食の場合は、油を少なくした具入りオムレツ(ハム・じゃがいも・キャベツなど入り)がよいでしょう。食後はオレンジなどのビタミンが豊富な果物を摂りましょう。

運動会が始まったら、運動で失われた水分を補給するために水か、または水で薄めたスポーツドリンクを飲んでください。なお通常のスポーツドリンクは糖分が多いので、水で薄めることをオススメします。ここで大切なことは、水分を一度にたくさん摂らないことです。水分は腸で吸収されるのですが、一度に冷たい水分を摂ると、腸が吸収しきれずに、お腹をこわしてしまうことがあります。ひと口ふた口ずつ、15分に1回くらいのペースで頻繁に摂るようにしてください。
さて、午前の部が終わると、「待ちに待った昼食……」、と言いたいところなのですが、ここでは、豪華なお弁当ではなく、すぐに消化できてエネルギーに変わりやすい、炭水化物を摂ってください。具体的には、おにぎり、サンドイッチ、カステラなど。デザートとしては、バナナを食べるのがよいでしょう。量も腹八分目にしてください。お腹いっぱい食べてしまっては、身体が重くなって午後からの運動に支障をきたしてしまいます。
運動会が終わった日の夜は、「お疲れ様」ということで、ご馳走(ちそう)を食べても構いませんが、お子さんの身体は疲れているので、うどんなど消化に良いものを食べたほうがよいでしょう。
多くの学校では運動会の翌日をお休みにしています。がんばったごほうびに、ご馳走は翌日お子さんの好きなものを食べさせてあげる、というのはいかがでしょうか。

「運動会はお祭り」……しかし、あくまで食事はお子さんの体調を考えて。ぜひそのことを胸に刻んでいただき、運動会を迎えていただきたいと思います。


プロフィール


深代千之

東京大学大学院 総合文化研究科 教授。(社)日本体育学会理事、日本バイオメカニクス学会理事長、日本陸上競技連盟元科学委員。文部科学省の冊子や保健体育教科書の作成にも関わる。*主な著書:「運動会で1番になる方法」「運脳神経のつくり方」など

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