子どもをその気にさせる言葉かけ[やる気を引き出すコーチング]

以前、「子どもをその気にさせる質問」をとりあげましたが、今回は、「その気にさせる言葉かけ」を考えてみましょう。

好き嫌いが多い子どもに、なんとか嫌いなピーマンを食べさせたい!
その気にさせるには、どんな言葉かけが効果的なのでしょう?
「ピーマンにはビタミンという栄養素がたっぷりあって身体にいいんだよー。食べてごらん!」
「ピーマン食べないと、頭良くなれないんだよ!」
一生懸命、効能を解説しても、説得しようとすればするほど、かえって相手は抵抗します。
「ピーマンって、本当においしいよー」
むりやり押しつけても、嫌いなものは嫌いです。ほかに何か気のきいた言葉かけはないものでしょうか。


暗示のパワー

小学校の栄養教諭の先生が、偏食が多い小学5年生の児童にこんな言葉かけをしてみました。
「このピーマン食べたら、5時間目の鉄棒、できちゃうかもね!」
常々、鉄棒がなかなかできるようにならないことを気にしていたこの子は、「そうかな……」と言って、ピーマンを食べたそうです。これだけでもすばらしい成果ですが、5時間目が終わってから、この子が嬉々として報告に来たそうです。
「先生! 鉄棒できたよ!!」
できなかった鉄棒ができるようになったという成果まで引き出しました。
この言い方がベストと言うつもりはありませんが、これは、明らかに、この子に大きな前進をもたらすプラスの暗示表現でした。

「お前は、日本だけじゃなく、世界中の人の役に立つ人になるよ」と親から言われて育ったというかたがいらっしゃいました。このかたは今、外交官として海外で活躍されているそうです。占い師さんから「あなたは、人に使われる人ではない。人の上に立つ人です」と言われたわたしの友人が、転職を繰り返した末に、結局、自分で会社を作って独立しました。

時々、考えます。占いが当たっているのか、その言葉を信じた人がそれをただ実現させているだけなのか?と。人が日々かけられている言葉には、人生を変えてしまうほどの力があると言ってよいでしょう。


無意識に使っているマイナスの暗示

「あなたは本当に数学が苦手だよね!」と言われ続け、結局、わたしは最後まで数学を克服することなく、数学アレルギーのまま学生生活を終えました。
人は、よかれと思って相手の苦手や欠点を指摘しますが、かえってマイナスの暗示をかけて強化していることはないでしょうか。

「また朝起きられないよ!」
「どうして、○○ちゃんと仲良くできないの?」
「いつも遅れるよね」
「本当に引っ込み思案だよね」
「すぐ嘘をつくよね」
など……。


プラス暗示のレパートリー

だからこそ、日頃からプラスの暗示をどんどん子どもたちにかけてあげてほしいと思うのです。中には、「何の根拠もないのに、こんな調子のいいこと言っても大丈夫なのかな? ちょっと言い過ぎかな?」と思うようなこともあるかもしれませんが、ずっと言われ続けることで、本人がだんだんその気になっていく現実もあるのです。そして、根拠のない思い込みであってもそれを信じることで、実現化していく力は誰しも持っているとわたしは思うのです。

子どもたちにかけるプラスの暗示の言葉、どんなレパートリーをお持ちですか? そのレパートリーをもっともっと増やしてみませんか?

「あなたならきっとできるよ」
「将来、大物になる器だね」
「それができる人は、こっちも簡単にできる人だよ」
「いつも時間通りにできているね」
「あなたは本当は勉強ができると思うよ」
「今、わからなくても、自分できっと解決できるよ」
「あなたはいつも運がいいから大丈夫」
「これからもっとできるようになっていくよ」
など……。


プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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