インフル対応で分かれた公立高校入試

新型インフルエンザなどで公立高校の入試を受けられなかった者に対して、30道府県の教育委員会が追試を予定していることが、文部科学省の調査でわかりました(1月15日現在)。一方、追試をしないというところも17都府県あり、都道府県教委の判断は二つに分かれたようです。各県の資料などをもとに、追試について考えてみたいと思います。

新型インフルエンザを理由にした公立高校入試の追試は、昨年10月に全国で初めて、島根県が実施を決定しました。それでも多くの教委は、ぎりぎりまで判断に苦しんでいたようです。
各教委が悩んだ最大の理由は、試験の公平性です。公平を期すため、追試験の学力検査は、本試験と同じ難易度にする必要があります。しかし、それは非常に困難なことです。このため、岡山や宮崎などのように、追試験では学力検査を行わず、面接や小論文などで教科の内容を見るところもあります。
また、多くの都道府県は入試日から短期間で合格発表をしているため、追試験の日程を確保することが難しい、という問題もあります。そこで沖縄県などは、追試実施のため、高校入試の合格発表日を繰り下げました。

追試の受験は、新型インフルエンザに感染している、またはその疑いがあるという医師の診断書などを添えて、中学校長が申請する、というのが一般的です。ただ、教委によって季節性インフルエンザも追試の対象とするかどうかで、方針が分かれているようです。
追試時期は、本試験の1週間後というところが大半ですが、これはインフルエンザの回復期間、合格発表や中学校の卒業式などの時期を考慮したもののようです。

その一方で、「従来から病欠者に追試はない。インフルエンザのみ認めるのは不公平」「異なる入試問題で選抜するのは公平性に欠ける」などの理由で、追試を行わないという教委もあります。山形、宮城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、福井、石川、富山、長野、大阪、熊本、福岡などの各県です。また、中には栃木県のように、追試は原則しないとしながらも、流行の状況を見て3月1日に正式決定する、と判断を保留しているところもあります。
なお、追試がないところも含めてすべての都道府県教委で、せきや発熱などの症状がある受験生に対して、毛布や暖房器具を備えた別室で受験できるようにしています。試験会場に消毒用アルコールやマスクを用意しているというのも45教委あります。

いずれにしろ、追試をする教委のほとんどが「2010(平成22)年度入試のみの特例」としていることから、追試の実施が各都道府県教委にとって非常に負担になっていることは間違いないでしょう。高校受験の機会を保障するか、あくまで入試の公平性を守るか、都道府県教委は難しい判断を迫られたようです。
ただ、新型インフルエンザなどの感染症の流行は、今回限りで終わるわけではありません。都道府県教委には、今後の公立高校入試における追試の在り方をきちんと検討しておくことが望まれます。
もっとも、受験生にとってはインフルエンザなどにかからないのが一番です。入試本番では、十分に力を発揮できるようにしてください。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A