小学校でも≪古典≫に親しむ 音読や暗唱で

さまざまな話題を呼んでいる新学習指導要領ですが、小学校における古典学習の充実もその一つといえます。2011(平成23)年度から新学習指導要領が本格実施される小学校では、神話や昔話、俳句や短歌、古文や漢文などを音読したり暗唱したりする光景が、普通に見られるようになるかもしれません。

小学校でも≪古典≫に親しむ 音読や暗唱で


小学校の国語で古典学習が重視されるようになった理由の一つは、2006(平成18)年12月に改正された教育基本法の中に、日本の伝統や文化を尊重する態度を育てることが盛り込まれたためです。従来の学習指導要領でも伝統・文化の尊重は求められていましたが、小学校の国語では古典について、5・6年生で「易しい文語調の文章を音読し、文語の調子に親しむ」という規定しかありませんでした。

これに対して新学習指導要領は、国語の教育目標の中に、「話す・聞く」「書く」「読む」と並んで、新しく「伝統的な言語文化」を追加し、小学1年生から日本の古典に親しませるよう指導することを求めています。また、古典作品を指導するに当たっては、読み聞かせ、音読や暗唱などを特に重視しているのもポイントです。

これまで小学校での古典学習については、「理解が難しく、学習しても混乱させるだけだ」という見方も少なくありませんでした。ところが最近では、「古典の文章を音読したり暗唱したりすることで、かえって言葉や国語に対する感覚や理解力が高まる」と指摘する声が高まり、子ども向けテレビ番組などでも、古典が取り上げられるようになっています。小学校における古典の重視には、伝統や文化の尊重というねらいと同時に、このような最近の動きも反映されていると言ってよいでしょう。

では、国語の授業で、古典はどう取り上げられるのでしょうか。小学校の新学習指導要領では、1・2年生は「昔話や神話・伝承などの本や文章の読み聞かせを聞いたり、発表し合ったりする」、3・4年生は「易しい文語調の短歌や俳句について、情景を思い浮かべたり、リズムを感じ取りながら音読や暗唱をしたりする」、5・6年生は「親しみやすい古文や漢文、近代以降の文語調の文章について、内容の大体を知り、音読する」なとど示しています。

古典の重視については、改正教育基本法による伝統・文化の尊重が背景となっているほか、古事記や日本書紀などを教材として例示しているため、「戦前のように過度な愛国心を教え込む教育につながる」と批判する意見も、教育関係者などの一部にあります。ただ、教材の選択や指導内容などに一定の配慮は必要でしょうが、子どものころから古典に親しむことは、やはり必要でしょう。
それと同時に、「祇園精舎の鐘の声……」などとリズミカルに暗唱する子どもに、その意味を聞かれた時、大人がきちんと答えられることも、必要ですよね。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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