入試直前1週間の「睡眠」はどうとる?

前回は受験勉強を進めている時の睡眠について話をしましたが、今回は特に、入試直前1週間の話をしたいと思います。なぜなら、体調管理のうえでも、最後の1週間の「眠り」が結果を大きく左右するからです。

まずは基本。入試の直前に最後の追い込み、などと思って睡眠時間を削るのは間違いです。入学試験は範囲が大きいはず。直前に勉強したことが試験に出る確率は低く、勉強については専門外の私が言うのもなんですが、入試1週間前までにはおおかたの勝負がついてしまっているはずです。であれば、体調を万全に整え、最高の集中力でテストを受けるほうがよほど有意義と思いませんか?

そこで、入試1週間前からは……

●無理して勉強するより、入試に向け生活のリズムを整えてください

何カ月も受験勉強を続けていると、どうしても生活が不規則になりがち。特に夜型になっているお子さまは入試の前までに必ず昼型に戻しておかないと、時差ぼけのような状態のなかで入試を受けることになり、実力が出せません。

では、具体的にどうリズムを変えるのか? 以前もお伝えしましたが、睡眠のリズムは1日に1時間以内であれば変えることができます。もし夜更かしをして昼前の11時に起きているとしましょう。翌朝は10時に起きて外の光を浴びてください。すると体内時計が「10時に目覚める!」とリセットされます。そこで、入試の日に何時に起きればいいかを先に調べておき、それがたとえば6時半なら、10時に起きた次の日は9時に、その次の日は8時に……と時間を早め、なるべく早く毎日6時半に目覚めるリズムにしてください。

次に、これは入試の時以外でも役立ちますが……

●眠る時の儀式を作ってください

私たちのカラダには「条件反射」があります。カレーの匂いをかぐとおなかがすいたような気になる、などというのはまさにそれで、これを上手く使えば「自分を眠りやすくする」ことも可能です。たとえば、寝る前に歯を磨き、水を飲み(眠る前に水を飲むのは良いことです)、深呼吸をする、という習慣を付けておけば、歯を磨いて水を飲んで深呼吸をすると、何となく眠くなってきます。受験前日は緊張が高まって、脳から眠りを妨げる物質「ドーパミン」が出がちです。しかし、いつものパターンを身に付け、やるべきことをやり終えた達成感とともに布団に入れば、よほど緊張しがちなお子さんでない限り、問題なく眠りに入れるはず。

さらに、これは試験当日の昼も有効です。お昼ご飯を食べると眠くなるというのは科学的な事実。眠いと実力が発揮できないのも科学的な事実です。これを回避するために、お昼を食べたらすぐに15分以内の昼寝をしてほしいのですが(寝過ぎると脳が活性化するのに時間がかかるので、15分以内で!)、その時、眠る儀式を持っていると眠りやすくなります。なお、昼食後すぐは眠くなかったとしても、前もって眠っておくことでその後必ずやってくる眠気を回避できます。同時に、たとえグーグー眠れなくても、リラックスした体勢で目を閉じれば十分、休息の効果がありますよ。

そして最後に……

●受験当日、起きてから行うことも習慣化しておきたい

たとえば、試験当日は朝6時半に起き、7時までに制服に着替え、7時半までに朝食を食べ、8時までに準備をすませて家を出るとしましょう。直前の3日間くらいは何も用事がなかったとしても、6時半に起き、7時までに着替え……と、当日と同じ行動をとってほしいのです。できれば試験会場の近くの図書館にでも出かけ、入試と同じ時間割で勉強してください。
なぜ、これが良い影響を及ぼすのでしょう?答えは簡単です。「明日は初めてのことだらけ」という状況で眠りにつくか、「明日は何度も予行演習をしたとおりのことをすればいいだけ」という状況で眠りにつくか、その差が意外と大きいのです。前者はリラックスできない可能性が高く、後者はリラックスして深い睡眠がとりやすい。あと、睡眠とは関係ありませんが、寝坊したり忘れ物をしたりする危険性も減るはずですよ。

そして最後の最後に……

自分を信じて、行ってらっしゃい!! 風邪をひかないようにね! 朝ご飯も食べるんだよ! と送りだしてあげましょう。

プロフィール



スリープクリニック調布院長。医学博士。長年にわたり、睡眠のメカニズムと脳の働きの関係について研究。現在、日本睡眠学会認定の「睡眠の専門家」として活躍中。

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