適量がわからず食べ過ぎる、どうすればいい?[食育につながるワンポイント]

「家庭でできる食育」とはなんでしょうか。管理栄養士・医学博士であり、テレビや雑誌などで広く活躍されている本多京子先生にお話を伺います。

大皿から食べるから適量がわからない

雑誌やWebサイトで子どもの食に関するコーナーを担当すると、親から「うちの子はどうしても食べ過ぎてしまう。実際、肥満気味だ」とか「どのくらい食べさせればよいかわからない。だから、食事の量が少なすぎる気がして心配」など、食の適量に関する相談が増えていると、本多先生は言います。

「なぜ適量がわからないかといえば、それは食のスタイルが変わってきたからです。本来、日本人の食事は一汁三菜が基本です。その献立であれば食べる量が適量で、そして栄養のバランスも保たれるということが、経験的にわかっていたはずなのです」
ところが最近は大皿に総菜を盛って食卓に並べておき、帰宅した人が各自自分の好きなだけ食べるというスタイルが増えています。しかも、料理の内容は肉やいため物、揚げ物が中心。
「大皿料理を何種類も用意して、しかもそれぞれ、お父さんの好きなもの、息子の好きなもの、娘の好きなものと、みんなの好きなものばかりを集めている人が多いようです。だからどうしても主菜ばかりのメニューになってしまいます」(本多先生)

家族みんなに好きなものを食べさせたいなら、月曜日はお父さんの日、火曜日はお兄ちゃんの日、などとその日の食事の主役を決めて主菜を作り、副菜には野菜を中心としたメニューを考えるようにするとよい、と本多先生はアドバイスします。そして、それらの料理を大皿に盛りっぱなしにせず、あらかじめお皿にとりわけて食べ、足りないようならおかわりをする、ということが適量を実感するために必要だと説明します。

食はけじめを知る最良の機会

食の適量を知るためには、「満腹感」が訪れるまで食べるのではなく、食器の使い方や食べ方というスタイルを大切にするべきだ……この一例が示すように、食に関するさまざまな問題で解決の鍵になるのは「けじめ」だと本多先生は言います。
「いつ、どれだけ、どんなふうに食べるのか。すべてけじめがなければどんどん乱れてしまいます。子どもの教育、しつけの土台になるのが、食のけじめだと言ってもいいでしょう」(本多先生)

子どもに食のけじめを理解させるために、「おやつ」の時間をぜひ生かしてもらいたいと、本多先生は考えます。おやつというと、どんな材料を使ったお菓子を食べさせるかばかり気になってしまいがちですが、「いつ、どれだけ食べるか」をきちんと決めることで、食のルール(好きなものをいつでも、好きなだけ食べてよいということではない)を実感させることができるのです。

「たとえば、おやつを入れる箱を作って、その中にお菓子を入れて、毎日、決まった分量だけ自分で選んで、決められた数と分量だけ食べるようにする。もちろん子どもはできるだけたくさん食べたいのだけど、ルールは守らないとしかられるし、明日以降のおやつが減ってしまう。このような葛藤(かっとう)を味わわせ、自己決定を経験させることも大切だと思いますよ」

ある年齢になったらお小遣いを管理させる金銭教育に取り組む家庭も多いでしょう。それと同じように、食に関する自己管理も、保護者としてぜひ取り組ませたいものです。

プロフィール



本多ダイエットリサーチ主宰。医学博士・管理栄養士。日本体育大学女子短期大学で講師として小児栄養を担当。著作は『あなたのカラダは食で変わる』『1600キロカロリーの献立–生活習慣病のメニュー』 など多数。

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