夜遅くまでケータイ・ゲーム・テレビ。大丈夫なの?

難しい本を読んでいるとスーッと眠りに落ちちゃいますよね。私などは昔からあっという間で、とくに夏目漱石とか森鴎外とか、古典文学を読むと、そのままストンと眠りに落ちちゃっていました。

では、ケータイをいじっていたり、ゲームに夢中になったりすると、なかなか眠くならないどころか目がさえてくるのはなぜなんでしょうか? 原因は二つです。「光」と「ドーパミン」がアタマを覚醒(せい)させているんですね。

くわしくお話ししましょう。まずは「光」。以前もお話ししましたが、人間の脳は夜になると「松果腺」というところから「メラトニン」というホルモンを分泌します。これが眠気のみなもとです。リラックス作用があって、医学的な研究中にメラトニンを投与された人のほとんどが眠ってしまった、という逸話も残っています。ところが! 人間は太古から夜は眠って昼間に活動してきたためでしょうか、人は光るものを見ているあいだ、脳から「メラトニン」が分泌されないんです。

とくに良くないのが、単に明るいだけでなく「光を見つめること」。テレビ、ゲーム、ケータイのメール、すべてこれに入ります。液晶は画面の向こうに蛍光灯のような光源が入っています。昔のブラウン管のテレビだって、画面の裏に電子が当たって発光します。これら、光るものをじっと見つめることは、規則正しく、効率的な睡眠を妨げるんです。

次は「ドーパミン」。これは簡単に言えば、アタマを覚醒させるホルモンです。意欲を持つ、やる気が出る、ワクワクしちゃう、といった時はこの「ドーパミン」が出ている状態です。ドーパミンが出ること自体は良いことです。親ならば誰しも、我が子にはどんどんドーパミンを出してもらって、意欲的な人生を送ってほしいと思いますよね。しかし、夜遅くとなると話は別です。光を見つめた時と同様に、眠くなくなっちゃうんですよ。体は疲れているのに……明日も元気に過ごすためには寝るべきなのに……眠れない。遠足の前の日に眠れないのも、ドーパミンの影響でワクワクしちゃっているからです。テレビやゲームに夢中になって毎日この状態じゃ、昼間、眠くて授業に集中できません。

というわけで、やっぱり寝る前のケータイやゲームはあまり良くないんですね。そこで、対処法です。まず、眠りを妨げる順に並べてみましょう。

1 ゲーム・メール
2 テレビ
3 ケータイの通話

ゲームやメールは、光を見つめるうえに、何か考える作業をさせたり、驚かせたり、ワクワクさせたりしてドーパミンが出る原因になります。眠れない二大原因の両方を持っている、といえます。テレビも光を見つめますが、これは受動的なので1よりは害がない。携帯電話も、通話の場合は光を見つめないので、2よりもさらに害はない、と言えます。

といっても、これらはあくまで寝る数時間前……目安としては10時くらいを過ぎたらやめてほしいと思います。


では逆に、快適な眠りにつくことができる行動ってどんなものなんでしょうか?

答えは簡単です。眠れない時と逆の行動をとればいいんですよ。まず、光を見ない。部屋を少し暗めにしてもいいです。本を読む時は、直接、光が目に入るのを避け、スタンドの光が本に当たるようにしてください。で、難しいことは考えない。寝る時の手順を自動化しておくのがおすすめです。探しものなんかしたら目が覚めてしまうので、パジャマはここ、目覚ましはここ、と置き場所を決めておくといいですよ。

で、布団に入るわけですが……人によっては、難しい本を読むと良い場合があります。たとえば古典文学などについていけない人が無理をしてこういうものを読むと、人によってはですが、それはそれは気持ちよくストンと眠りに落ち……。

プロフィール



スリープクリニック調布院長。医学博士。長年にわたり、睡眠のメカニズムと脳の働きの関係について研究。現在、日本睡眠学会認定の「睡眠の専門家」として活躍中。

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