「認定こども園」なぜ増えないの?

認定こども園」を利用している保護者の8割近くが、認定こども園を評価している……こんなアンケート結果が先頃、文部科学省・厚生労働省から発表されました。「保育所待機児童ゼロ」「幼稚園と保育園の一元化」を目指し、一昨年の10月にスタートした施設のことです。
ところが、そのこども園の数がなかなか増えません。今年4月1日現在、全国で229件。1年前の94件と比べれば2.4倍ですが、満足といえる数字ではないようです。というのも、今年に入っていくつもの審議会などが提言を重ね、普及促進をアピールしてきたのです。7月1日に閣議決定した「教育振興基本計画」にも、「できる限り早期に」「2,000件以上」と具体的な数字が盛り込まれました。

認定こども園とは、新たな制度ですが、「第3の施設」ではありません。既存の幼稚園や保育所を改編したものです。簡単に言えば、幼稚園は保育所並みの長時間保育を、保育所は幼稚園のように「教育」を行うのが、これまでとの違いです。0歳~就学前の子どもが対象で、保護者が共働きかどうかは問いません。地域の子育て支援も担います。幼稚園・保育所双方の利点を合わせ持ったものが、こども園というわけです。

しかし、数が思うように増えないのは、どうも理念だけが先行してしまったためのようです。既存の幼稚園・保育所を改編するとはいえ、それまでとは異なる機能を持たせるのですから、人員も施設も整備が必要です。けれども、新たな補助制度はなく、財政的な負担に設置者は二の足を踏みます。冒頭で紹介したアンケート結果では、多くの自治体が「財政的支援が十分でない」と答えています。
こども園の設置者からは、課題として「文科省と厚労省の連携強化」「会計事務処理の簡素化」なども挙がっています。幼稚園は文科省、保育所は厚労省の所管という縦割り行政の影響で、補助金は片方からしか交付されません。「同じ施設なのに、食材費や電気代の会計処理も、幼稚園と保育園では別々」と、事務の煩雑さを指摘する声もあります。
このスタート以前から、預かり保育を実施する幼稚園や、幼稚園・保育所連携園など、さまざまな形で幼保一元化に取り組んでいた施設は、たくさんあります。「負担を増やしてまで認定こども園に移行するメリットが感じられない」という園が少なくないのが、数の伸びない要因のようです。

乳幼児施策を一元的に担う「子ども庁」や「子ども家庭省」の創設、文科・厚労省の補助金を統合した「こども交付金」など、アイデアはいろいろと出てきています。「こども園」という入れ物はつくったけれど、中身はこれからなのですね。
課題は他にもありますが、ここで取り上げる余裕はありません。財政支援が不十分という状況と裏腹に、「保育環境よりも財政効率の追求が真の目的」といった批判も根強いですから、今後の施策に注目です。

プロフィール



1966年神奈川県生まれ。中央大学卒。「教育新聞」記者として文部省をはじめ教育行政の取材を担当。1998年よりフリー。国際ジャーナリスト、カメラマンとしても活躍。共編著に「子ども虐待 教師のための手引き」(時事通信社)他。

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