新年度から義務化の「全国体力テスト」って?

子どもの体力や運動能力の低下が問題になっているなかで、文部科学省はこのほど、国公私立の小学5年生と中学2年生を対象にした「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)を、今年度から毎年実施することを決めました。いわば、「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の「体力・スポーツ版」とも言えるもので、子どもたち一人ひとりの生活習慣や学校の指導体制などが体力や運動能力にどう関係しているのかも調査することにしています。

同種の調査としてはこれまでも、子どもから大人までを対象にした「新体力テスト」が毎年実施されています。しかし、年齢層ごとの運動能力などデータの変化を調べることはできても、その変化の原因や、改善方策の検討まではできませんでした。
その一方で、子どもの体力低下はますます深刻化しています。たとえば2006(平成18)年の11歳男子について、保護者の世代に当たる1976(昭和51)年と比較すると、30年間で体格は大きくなったにもかかわらず、50メートル走では0.1秒、ソフトボール投げでは4.9メートルも劣るなど、運動能力は逆に低下しています。

このため文科省は、原則として全国すべての学校で、全国体力テストを実施することにしたのです。握力検査や50メートル走など体力・運動能力に関して8種目を実施するほか、生活習慣・食習慣・運動習慣などについてアンケートを行います。同時に、各学校における体育行事や運動部活動の実施状況、体育専門の教員や外部指導者の導入状況、野外運動場など施設・設備の状況なども調査することになっています。
文科省は、これにより、子どもたちの体力・運動能力と生活習慣・食習慣・運動習慣がどう関係しているのかが明らかになり、一人ひとりの体力・運動能力の向上を図るための具体的方策を各学校や家庭で検討できるようになる、と説明しています。

全国体力テストは、4月から7月にかけて各学校で実施される予定です。テストの結果は、学校をとおして子どもたち全員に通知されることになっていますが、文科省による発表は、学校間で無用な競争が起きることを防止するため、学校名や市町村名を出さないで、都道府県ごとなどのデータのみを公表する予定です。市町村や学校ごとのテスト結果の公表は、全国学力テストと同様に、各市町村の教育委員会や学校の判断に任されることになっています。
学力面では小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力テスト、体力・運動能力面では小学5年生と中学2年生を対象にした全国体力テストがそれぞれ実施されることにより、各学校は、学力と体力の両面で、全国的な位置がわかることになります。今後の各校の教育にも、大きな影響を及ぼすことになりそうです。

<参考>
子どもの体力向上HP

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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