「不適切教員」ってどんな人? どうやって見つけるの?

公立学校教員として不適切な人を免職にできる制度が、4月からスタートしました。制度の概要については本欄でも以前にお伝えしましたが、具体的にどのような人が「不適切教員」で、どのようにして認定されるのでしょうか。文部科学省の作成したガイドラインをもとに見てみましょう。

これまでも、「指導力不足」などの教員を教職以外の職種に配置転換できる制度はありましたが、どう運用するかは各都道府県教育委員会などに任されていました。これに対して、2007(平成19)年6月に成立した改正教育公務員特例法では、不適切な教員に対して教委が原則1年間(最長2年間)の「指導改善研修」を命じ、それでも改善されない教員は免職処分にできる制度が法制化されました。

ガイドラインによると、「指導が不適切な教員」とは、(1)教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正確に答え得ることができない等)(2)指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合(ほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等)(3)児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児童等の意見をまったく聞かず、対話もしないなど、児童等とのコミュニケーションをとろうとしない等)……などとされています。
認定は、一般的には校長や市町村教委の報告によって、都道府県教委が行うことになります。具体的には、校長などによる日常の観察、保護者からの苦情や意見などによって、指導が不適切と見られる教員を早期に発見し、まずは助言や指導など校内で対応します。それでも改善されなければ、市町村教委などに不適切教員として報告することになります。
注目されるのは、保護者の意見や苦情に対して、校長と教委は「その状況の確認を行うなど、的確な情報収集に努めることが重要である」とされている点です。つまり、保護者からの苦情や意見を無視したりすることは許されない、ということです。
校長や市町村教委から申請を受けた都道府県教委は、医師や弁護士など専門家の意見を聞きながら、不適切教員かどうかの認定を行います。もちろん、教員本人からの意見聴取も行われます。また、原因が精神疾患などによるものだった場合は、指導改善研修を課さずに、治療に専念させるなどの対応を取ることになっています。

不適切教員の存在は、子どもや保護者にとって大変な問題です。免職制度ができたことを歓迎する声は多いでしょう。ただ、一般的に言って教員の指導力は、学校や子どもの実態、保護者との関係などで、大きく変化することもあるものです。すぐに免職にするのではなく、「研修を課したうえで判断する」という制度の趣旨を、保護者も理解しておく必要があるでしょう。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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