「教員免許の更新」、どんな講習を受けるの?

本欄でも以前にお伝えしましたが、2009(平成21)年度から「教員免許の更新制」が始まります。これまで取得すれば生涯有効だった教員免許に、一律10年間の有効期間を定め、10年ごとに「免許更新講習」を受けて修了認定されないと免許が失効する、という仕組みです。この更新制の柱となる免許更新講習について文部科学省はこのほど、具体的な講習内容などを決定しました。

講習の内容は、いわゆる必修部分に当たる「教育の最新事情に関する事項」が12時間、教員個人の専門領域などに応じて選択する「教科指導、生徒指導その他教育内容の充実に関する事項」が18時間で、合計30時間となっています。前者では、「子どもの変化についての理解」「教育政策の動向についての理解」など時代の変化に対応して刻々と変わる子どもの生活の変化、教育政策の動向などを中心に学びます。後者では、子どもに対する指導上の課題などの講習を受けます。
免許更新講習の修了に当たっては、必ず筆記や実技などによる修了試験を実施することになっています。つまり、ただ座って講習を受けただけでは、免許更新はできないようになっているのです。とはいえ修了認定のレベルは、きちんと講習を受けていればほんどの人が修了を認められる程度の難易度に抑えられる見通しです。また、試験に落ちても、免許更新期限が切れる前ならば、何回でも講習を受け直すことができます。

なお、現職の教員が免許更新講習を受ける場合、平日の勤務時間中に受講することは認められません。教員免許の更新は、自動車免許と同じく「個人の事由」となるためです。従って、土・日・祝日、平日の夜間、夏休みなどの長期休業期間中に、講習を受けることになります。
講習を実施するのは、大学、都道府県教育委員会、文科省が指定した団体などですが、文科省では主に教職課程を持つ大学を実施主体に想定しています。講習の講師は、大学の教授・准教授・講師、都道府県教委などの指導主事、退職校長などです。また、講習は、免許の有効期限が切れる2年前から受講できるとされています。つまり、2年間かけて30時間の講習を受ければよいわけです。

こうして免許更新講習の内容を見ると、教員免許の更新制とは、いわゆる問題教員を排除するための方策ではなく、時代の変化に応じて教員の力を「リニューアル(刷新)」するためのものであることが、改めてよくわかります。ただ、年々多忙化している教員に対して、10年ごととはいえこのような基礎的な講習を受けさせて、どれほどの効果があるのか、という点については、意見の分かれるところでもあるでしょう。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A