どうなってるの!?小学生の友達関係


2006年の秋以降、子どものいじめが原因と見られる事件が相次いで報告され、大きな社会問題となりました。そうしたなか、お子さまの友達関係について心配されている保護者のかたも多いのではないでしょうか。今回は、子どもたちが普段、どのような友達関係の中で生活をしているのか、Benesse教育研究開発センターが行った調査結果を通して見てみます。

小学生の約15%が悩みを相談できる友達がいない
~周囲の大人の見守りが必要~
小学生(4~6年生)に「日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達」の数を尋ねたところ、第1位が、「4~6人」(29.2%)、第2位は「7~10人」(22.9%)でした。「いない」と答えたのは1.3%、「1人」は2.9%で、ごくわずかでした(図1)。一方、「悩みごとを相談できる友達」の数は、「2~3人」が最も多く37.6%、続いて「4~6人」の17.2%、「いない」は3番目に多い15.4%でした(図2)。

子どもたちの人間関係の実態は、時として大人たちからは見えにくくなっています。話したり遊んだりする友達はいても、悩みを相談できる友達がいないと感じている子どもが、小学生の段階で15%いることには注意しておいたほうがよいでしょう。

実際、小学校の先生も、このデータには納得感があるとおっしゃいます。ある先生は、「最近は、人と接することが上手にできない児童も多い。仲が良さそうに見えても、休み時間の遊びや忘れ物の貸し借りの様子などを見ると、表面的なつきあいになっている」と話されていました。

周りの大人たちが、子どもが孤立することのないよう注意深く見守り、「困ったときには味方になる大人がここにいる」というサインを送っておくことが大切です。

【図1】日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達は何人くらいいますか
(学校段階別)
図1 日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達は何人くらいいますか(学校段階別)

【図2】悩み事を相談できる友達は何人くらいいますか
(学校段階別)
図2 悩み事を相談できる友達は何人くらいいますか(学校段階別)

成績の良い子どもは友達が多い傾向
~子どもに自信をもたせる働きかけを~
図3は、「日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達」の数と子どもの成績(自己評価別)との関係を見たものです。これを見ると、下位層の子どもは、上・中位層の子どもに比べ、「いない」「1人」「2~3人」と答えた子どもが多く、反対に上位層は「7~10人」「11~20人」「21人以上」と答えた子どもが下位層よりも多いことがわかります。

【図3】日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達は何人くらいいますか
(小学生・成績別)
図3 日頃よく話をしたり一緒に遊んだりする友達は何人くらいいますか(小学生・成績別)
※成績は、国語・算数・理科・社会の自己評価の合計点によって3区分した
調査概要◎調査主体:Benesse教育研究開発センター/調査対象:小学4年生~高校2年生 合計14,841人(うち、小学4年生~6年生4,240人)(有効回答数)/調査時期:2004年11~12月
※図1~3とも「無回答・不明」は省略

ある小学校の元先生は、「得意なことがある子どもや、自分のことを周りから認めてもらっている子どもは、自分に自信がもて、友達ともうまくかかわれるのだろう」とおっしゃっていました。もちろん、友達の数が多ければよいという訳ではありません。しかし、「自分は認められている」という実感は、子どもたちがいきいきと生活するうえで大きな原動力となることは確かです。学習に限らず、お子さまの良いところを見つけて積極的にほめるなど、子どもが自信をつけられるような働きかけが大切です。

親の過干渉は子どもの友達関係にも影響
~距離をおいて見守ることが大切~
とはいえ、子どもに干渉しすぎるのは逆効果です。図4は、友達関係に関する3項目(「グループの仲間同士で固まっていたい」「仲間はずれにされないように話を合わせる」「友達と話が合わないと不安に感じる」)についての回答の割合を、親のタイプ別(「過干渉」群と「非過干渉」群)に示したものです。これを見ると、過干渉群のほうが、どの項目でも「そう思う」(「とてもそう」+「まあそう」)と答えた割合が高くなっています。過干渉な親をもつ子どもたちのほうが、自分が仲間から外れないように多くのエネルギーを使っていることがうかがえます。

家族社会学を専門とする慶應義塾大学の渡辺秀樹先生は、子どもへの接し方で大切なのは「サポーティブ・ディタッチメント」の考え方だとおっしゃっています。「サポーティブ・ディタッチメント」とは、少し離れた状態から子どもをサポートするという意味です。多少のことには口を出さずに見守り、危険を感じたら即座に対応する点で、ただの放任とは区別されます。逆に、べったりと保護することを「サポーティブ・アタッチメント」というそうです。この場合は、子どもの人間関係は「母子カプセル」といわれる母子だけの単純な構造に支配され、子どもは親の言うことに従うしかなくなってしまう、と渡辺先生は警告しています。(ベネッセコーポレーション『VIEW21』小学版・中学版 2007年9月号 取材記事より

【図4】友達との関係(小学校)(親のタイプ別〔非過干渉郡と過干渉郡〕)
図4 友達との関係(小学校)(親のタイプ別〔非過干渉郡と過干渉郡〕)
注1) サンプル数は、小学生(非過干渉郡3,985人、過干渉郡255人)
注2) 「過干渉」郡……「いつも『勉強しなさい』と言う」「何でもすぐ口出しをする」
「考えをおしつける」の3つすべてに「あてはまる」と回答
「非過干渉」郡……「それ以外の場合」

子どもは大人の姿を見て育つ!
~大人同士がコミュニケーションのお手本に~
小学校を取材していると、「自分の気持ちや考えを上手に伝えられない子が多い」「それゆえの児童同士のトラブルも増えている」といった話を伺うことが多くなりました。

背景のひとつには、少子化や都市化、核家族化、テレビゲームの普及などの影響で、子どもが他者とかかわり合う機会が減少していることがあるようです。最近は、子どもたちの「人間関係づくり」や「コミュニケーション能力の育成」に力を入れる小学校が増えてきていますが、こうした取り組みは、家庭や地域も含めて手がけていく必要があります。

ご近所とのコミュニケーションに子どもを積極的に巻き込んだり、家族や親類の大人同士の会話を豊かにするなど、子どもがさまざまな人と接する機会を増やしたり、大人同士が上手にコミュニケーションをとりながら生活している姿を見せることから始めてみてはいかがでしょうか。

●第1回子ども生活実態基本調査・調査概要
調査時期/2004年11月~12月
調査対象/小学4年生~高校2年生
      合計14,841人(有効回答数。うち、小学4~6年生4,240人)
抽出方法/市区町村の人口規模および人口密度を考慮した有意抽出法
調査方法/学校通しの質問紙による自記式調査

報告書の内容は http://berd.benesse.jp/research/ で公開中


プロフィール



「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

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