学校給食費未納の問題について


1月24日に文部科学省より、学校給食費の徴収状況に関する調査結果が発表されました(発表内容はこちら)。新聞などで「未納入の総額が22億円。約44%の学校で未納入問題」などと報道されましたので記憶されているかたも多いのではないでしょうか。今回は文部科学省の発表内容を見ながら、この問題について考えてみましょう。

もう一度、発表されたデータを丁寧に見てみると
表1を見てください。上の2つの行に学校数が示されています。一番右が小中学校を合わせた数で、これを見ると、学校給食を実施している学校が31,921校で、学校給食費が未納の児童生徒がいる学校が13,907校であることがわかります。この割合が43.6%、つまり、全国の約44%の学校で未納問題が発生していることになります。
下の2つの行が学校給食費の総額を示していて、未納額の総額が2,229,638とありますが、単位が千円ですので、約22億円にのぼることになります。

【表1】2005年度の学校給食費の徴収状況
表1 2005年度の学校給食費の徴収状況
2006年文部科学省「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について」

もう1つ注目いただきたいのは、児童生徒数のところです。学校給食費が未納の児童生徒数は小中学校合わせて98,993人。これは対象となる全児童生徒の1.0%にあたります。例えば、学年の児童生徒数が100人の学校であれば、学年に1人いるかいないかぐらいの割合です。先ほどの約44%、22億円という数字とはだいぶ異なる印象をもたれるのではないでしょうか。

私は2つほど、重要な点があるように思います。
1つは、学校給食費の未納問題は多くの学校で起こりつつありますが、その一方、ほとんどの家庭はきちんと納めていることも事実です。一つひとつのケースが解決すべき問題であるとしても、それを全国の家庭や保護者の傾向と結びつけるべきではありません。同じようなことは、指導力が不足している教師やいじめの問題にも共通して見られるように思います。一つひとつの事例の追究や解決は重要ですが、過熱する報道を見て、すべての学校や教師がそういう問題をかかえているとすぐに捉えるべきではないでしょう。
もう1つは、「このぐらいのこと」と考えてはいけないという点です。経済的な理由以外で未納のかたは、未納者がわずかであることや、給食費が月額4,000円弱(全国平均)という金額なので、「私1人がこのくらい納めなくても」と考えがちなのではないでしょうか。しかし、全国の総額では約22億円にもなるわけです。1人の行為の影響は小さくても、全国で見れば大きなプラスやマイナスになるケースは他にもあります。教育のような領域では、1人ひとりの積み重ねが大切であることを感じます。

さて、未納の主な原因を学校給食実施者はどのように見ているのでしょうか。この調査では、未納の主な原因として「保護者としての責任感や規範意識」60.0%、「保護者の経済的理由」33.1%と答えています。経済的な理由よりも、保護者の意識や価値観の問題を理由とする割合が高くなっています。
大人のこうした姿勢は子どもたちに影響を与えます。まだ割合が少ないうちに適切な対応がとられることを望みたいと思います。その点では大きく報道されたことは意味のあることです。その一方、社会の格差が問題になっており、経済的なことが理由になっている場合は区別されるべきです。文部科学省は通達の中で、経済的なことが理由であれば、生活保護による教育扶助や就学援助制度の活用を促していますが、そうした対策が必要だと思います。また、給食費未納の問題が新たな「いじめ」につながらないように気をつけるようにしたいものです。

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