情緒力を育てるための「読書のススメ」


漢字の読めない子どもは、心が荒廃する!?


11月5日、文化審議会国語分科会は今日ほど国語力向上が強く求められている時代はないとして、「情緒力育成のためにも小学校における国語の授業時間数を大幅に増やすべき」とする答申案をまとめました。

情緒力を育てるための「読書のススメ」


「漢字が読めない」ことが読書離れの原因?
情緒力とはあまり聞きなれない言葉ですが、美的感性や日本の文化・伝統・自然を愛する心などを指す言葉で、この育成が不十分だったことが最近の日本人の「心の荒廃」につながっていると指摘しています。国語の授業時間を十分に確保し、文芸作品などをじっくりと読ませることで子どもたちの情緒力を育てようという狙いです。質の高い読書は間違いなく子どもたちの精神面の成長に好影響を与えますが、実はこの提言を実現させるためには大きな障害があります。それは子どもたちが「漢字が読めない」という現実です。

あまりに多くの漢字を無理やり覚えさせることは、子どもたちに過度の負担になるという考えから、小学校で教える漢字はどんどん削減され、現在は1006文字しか教えていません。教えていない漢字は使えませんので、当然、小学校の教科書では「交ぜ書き」が多用されることになります。例えば、「心ぱい」「こっ折」といった具合です。漢字はアルファベットのような表音文字(一字一字が音声だけを表す文字)と違い、表意文字(一字一字が音声のほかに一定の意味を表す文字)です。「心配」「骨折」と表記されない交ぜ書きの文章では、その文章の持つ本当の味わいを理解することは難しいように思います。

「計算問題は解けるが、文章問題が解けない」子どもたち
そこで今回の答申案では、小学校のうちに常用漢字(1945文字)が読めるようにすることを目標に掲げています。そのための工夫として、初めて見る漢字を少なくするために、学習前の漢字も熟語として使用する場面があれば、漢字のそばにルビ(振り仮名)をつけることで使用可とする案が提唱されています。長年、読書は子どもたちの知的好奇心を満足させるための主要な手段でした。ところが、現代はインターネットなどで手軽に知りたい情報を手に入れることができる時代です。漢字の学習量の低下が読書の面白さを損ね、子どもたちの読書離れの一因だったのかもしれません。OECDや国立教育政策研究所などの調査でも、最近の子どもたちは「計算問題は解けるが、文章問題が解けない(問題文の趣旨が理解できず、何を答えればいいか分からない場合が多い)」という結果が現れています。

毎日新聞の行った学校読書調査によれば、子どもの読書量は家庭での保護者の働きかけと深くかかわっています。保護者自身が読書を好み、その面白さを言葉にして伝えることで、子どもたちの読書への関心が高まっていきます。身についた日常的な読書習慣は、これからの漢字学習力や文章読解力だけでなく、人としての「情緒力」の育成にも大きな力となるはずです。


※ベネッセ教育総研とベネッセ未来教育センターは05年4月に統合し、新名称「ベネッセ教育研究開発センター」に変わりました。

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「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

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