難しい問題はあきらめる?「無解答」の子どもが増加中。


「間違ってもいいから解いてみよう」と考えず、難問を前にあきらめてしまう子どもが増えている……そんな調査結果が出ています。

自治体独自の学力テストが増加中
小中学校の学校選択の自由化を導入するなど、意欲的な教育改革に取り組んでいる東京都の荒川区教育委員会が、区独自に実施した小中学生対象の学力テスト(「学力向上のための調査」)の学校別成績をホームページで公表したことが大きな話題になっています。

調査は国語、算数・数学、英語(中学のみ)の学力テストに加えて、学習時間や読書量、教科の好き嫌いなど100項目以上にわたる意識調査も行っています。調査結果の公表が学校の序列化につながるのではないかという意見に対して、荒川区は「学校間の競争をあおるつもりはない。区民や保護者が学校の現状を理解した上で、学校と協力して子どもたちの基礎学力向上に取り組むため」としています。

「学校別成績の公表」こそしていないものの、現在、このような自治体独自の学力テストは全国的な広がりをみせています。そのきっかけとなったのは、2002年度に行われた文科省の教育課程実施状況調査です。全国の小中学校6100校、約45万名の児童・生徒を対象にして実施されたこの調査も、その目的は子どもたちの学力状況を客観的に把握し、その上で基礎学力の定着を適切に推進するためでした。

ところが、調査結果を「おおむね良好」とした文科省に対して、前回調査と比較して正答率が低下した問題が少なからずあることから批判が集まりました。また、5月に発刊された詳細な分析報告書によれば、知っているか否かを問われる知識問題ではなく、登場人物の考えを文中から読み取り具体的に記述するといった、ちょっとした複雑な思考や判断が必要になる問題に関しては子どもたちが解答をあきらめてしまい、「無解答」の割合が高くなる傾向が指摘されています。

なぜ「無解答」が増えるのか?
つまり、肝心の「自分で考える力」の育成にも課題があるように思われるのです。中1・理科の「冷凍庫で水を凍らせたときに起こる体積の変化を問う」問題では、無解答の生徒が34.7%にものぼりました。この結果に対して、自動製氷の冷蔵庫が多くなり、自分で容器に水を入れて氷をつくるといった生活体験が乏しくなってきていることが原因との意見があります。しかし、問題は「水が凍ると体積がどうなるか」を知らないことではなく、普通に考えれば「(水の体積は)増えるか、減るか、変わらない」と判断できるにもかかわらず、解答を書こうとしない子どもたちが多いことにあります。

間違っているかもしれないけれど、自分なりに一生懸命考えて解答を記入するということは、一種の自己表現です。自分が一生懸命勉強した結果を周囲に認められ、評価されたいと願うことは、学ぶ上での重要なモチベーションになります。無解答が多いという調査結果の背後には、自分を表現することに臆病になっている子どもたちの姿が見えてきます。


間違うことを怖れないで、もし間違ったら、次に間違わないためにどうすべきかを考える。それが子どもたち自身の「生きる力」を育てることにつながります。テストは「評価を受ける場」だけではなく、「自己表現の場」でもあるのですから。


※ベネッセ教育総研とベネッセ未来教育センターは05年4月に統合し、新名称「ベネッセ教育研究開発センター」に変わりました。

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「進研ゼミ小学講座」は1980年に開講して以来、「チャレンジ」の愛称とともに全国の小学生のやる気をひきだす自宅学習教材として親しまれてきました。現在、小学生の約5人にひとりが会員という、最も利用されている自宅学習教材です。

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