日本とフィンランドの教員、どう違うの?……日教組が国際比較調査

最近の日本の教員に対する評価は大変厳しいようですが、実際にほかの国に比べて、どう違うのでしょうか。日本教職員組合(日教組)がまとめた「国際比較からみた日本の教員の仕事と職場生活」の結果によると、欧米諸国などとは異なり、日本の教育は教科の授業以外の仕事が多いという特殊性があることがわかりました。

日本とフィンランドの教員、どう違うの?……日教組が国際比較調査


調査は、日本・米国・英国・ドイツ・フランス・韓国・フィンランドの7カ国の公立学校教員を対象に実施したもので、回答内容を点数化してそれぞれの違いを比較できるようにまとめられています。
たとえば、仕事や職場に対する負担感が一番高かったのは日本の教員で、それに対して負担感が最も低かったのは、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)で学力世界一の座を獲得したフィンランドの教員でした。

日本の教員の「負担感」はどこからきているのでしょうか。
意外なことに、仕事量が多いといった項目は点数が低く、逆に「生徒や保護者とのやりとりで疲れる」「これまでの知識では対応できない」などが高い数値を占めています。
つまり、忙しいこと自体はあまり問題にしていないものの、次々と現れる新しい教育課題への対応、子どもや保護者への対応に、教員はストレスを感じているようです。

また、日本の教員の大きな特徴は、教科の授業以外に仕事が多いことです。
部活動指導など授業以外の仕事の種類と量は、ほかの国よりも圧倒的に多く、ほとんどの項目でほかの国の教員を大きく上回っています。特に多かったのは「休み時間などに子どもと遊ぶ・過ごす」「地域行事への参加」「集団生活で思いやりの心を育てる」「食習慣に関する指導」などです。どうやら欧米などでは、これらは教員の仕事とはほとんどみなされていないようです。

一方、ほかの国で日本よりも上位だったのは、「しつけをする」と「進路指導」の韓国、「PTA活動」のドイツなどですが、注目されるのは学力世界一のフィンランドの教員は「放課後などに補習をする」と「保護者との電話連絡・保護者会など」の2項目で第1位だったことです。
調査対象国の教員のなかでは、仕事の負担感が最も少なく、部活指導などのような授業以外の仕事はほとんどしないけれども、放課後の補習と保護者との連絡には、どの国の教員よりもはるかに時間をかけているのが、フィンランドの教員ということになります。

現在の日本のように授業以外でも教員がさまざまな面倒をみるということは、日本の学校教育の優れた点であることは間違いありません。
しかし、すべてを教員に任せるような仕組みがそろそろ限界に来ていることも確かでしょう。財政的事情から教員数を増やさないという方針を政府が掲げているなかで、限られた資源として教員の労働力をどう配分し、活用していくのかを考えることも、必要なのではないでしょうか。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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