国立大学でも「補習授業」、なぜ!?

文部科学省が発表した「大学における教育内容等の改革状況について」の調査結果によると、大学の3割で、学力や知識が不足している学生に対して補習授業を実施していることが明らかになりました。現在、補習や高校時代に履修していない科目を教えたりすることは「リメディアル教育」と呼ばれており、大学改革の重要な柱の一つになっています。補習をしている大学というと学生の質が低い大学とイメージしがちですが、リメディアル教育を実施しているところは、それだけ学生の教育に責任をもっている大学として、教育関係者の間では高く評価されるようになってきています。

文科省の調査結果によると、2005(平成17)年度に学生に対して補習授業を実施した大学は、国立57校(前年度比3校増)、公立18校(同8校増)、私立135校(39校増)の計210校で、調査に回答した4年制大学700校の30.0%に上っています。

このように大学が補習授業などに取り組むようになった背景には、大学における学生の多様化や変化があります。一つ目は、少子化、大学入学定員の増加、大学進学率の上昇などにより、「大学全入時代」が到来し、学生の質が多様化したこと。二つ目は、高校の教育内容が大幅に弾力されたことと、私立大学を中心に受験科目の軽減化が重なり、医学部の学生が高校で生物を学んでいないなどのケースが多くなったこと。三つ目は、知識注入型である小学校から高校までの授業から、自ら学んでいく大学の授業への切り替えができない学生が増加したことです。
このため、大学は本格的な授業を始める前に、足りない知識を補ったりして大学の授業を受けられるよう、準備教育をする必要に迫られました。リメディアル教育が、レベルが低い学生だけを対象にしたものと必ずしも言い切れないことは、補習授業を実施しているところに国立大学が多く含まれていることでもわかります。

実際、リメディアル教育の内容も多様で、知識が不足している学生に補習を行うものから、高校時代に履修していない科目を教えるもの、レポートの書き方や図書館の活用方法など大学で授業を受けるためのスキルを教えるもの、授業の復習や予習をさせるものなど、さまざまな工夫をしています。

また、最近では推薦入学者などの増加に伴って、入学するまでの間に、大学の授業を受けるのに必要な知識や、大学生活のためのスキルなどを教える「入学前教育」を実施する大学も増えており、これも広い意味でのリメディアル教育と言えます。いずれにしろ、高校教育から大学教育への円滑な移行を図るために、大学自身が努力しなければならない時代になったということでしょう。

ところで、リメディアル教育の大きな目的は学生の教育の充実ですが、中退や他大学への転学の防止というもう一つの狙いもあります。最近の大学では入学後の不適応などを理由に中退や転学が増加していると言われており、経営安定のためにいかに中退者や転学者を減らすかが大学の大きな問題となっています。授業についていけない学生を減らし、大学生活のスキルなどを身に付けさせることで、中退や転学を少しでも減らすということも、リメディアル教育の導入が大学で広がっている理由の一つでしょう。

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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