授業でボランティア体験!都立高校で「奉仕」が必修教科に

東京都教育庁はこのほど、2007(平成19)年度から都立高校で必修とする「奉仕」(1単位)についての、各高校の授業計画を取りまとめました。奉仕活動の義務付けは、安倍晋三首相が設置した教育再生会議などでも検討されており、全国で初めて「奉仕」を必修とする都の取り組みは、ほかの道府県教委にも大きな影響を与えることになりそうです。

都立高校における「奉仕」の必修化は、2004(平成16)年4月に策定された「東京都教育ビジョン」で提言されたもので、奉仕体験や勤労体験などをとおして社会の一員であること、他者とのかかわりのなかで人間は生きていることを実感させることが狙いとなっています。具体的には、1単位(週1時間程度)以上の必修とし、授業時間全体の少なくとも半分以上をボランティアなどの体験活動に充てることになっています。学習の成果については、点数評価はせずに文章による記述で行います。

都教育庁のまとめによると、全日制高校では「奉仕」を、学校独自に設定する教科・科目として実施するのは52.5%、総合的な学習の時間のなかで実施するのが45.3%などとなっており、実施する学年は1年生が61.2%、2年生が23.0%、3年生が15.8%となっています。各高校の授業計画を見ると、幼稚園や小学校での交流活動、公園など公共施設の清掃活動、福祉施設でのボランティアなどが計画されています。

子どもに一定期間の奉仕活動を義務付けることは、小渕恵三首相当時に設置された教育改革国民会議が、2000(平成12)年末、森喜朗首相に提出した最終報告で提言しました。これを受けて、文部科学省は学校教育法を改正して奉仕活動を義務付けることを検討しましたが、内閣法制局が苦役からの自由を定めた憲法18条に違反する疑いがあると指摘したため、結局、学校教育法のなかに奉仕活動や体験活動を「充実させる」ことと盛り込むにとどめたという経緯があります。

これに対して東京都は、石原慎太郎知事の強い意向もあり、全国に先駆けて高校における「奉仕」を必修として、奉仕活動や体験活動を高校生に義務付けたものです。国が法律で奉仕活動を義務付けることには、依然として憲法違反の疑いが残りますが、公立学校の設置者である教育委員会が教育課程の一環として奉仕活動などを義務付けることは問題ありません。昨年末に教育基本法が改正され、公共心や規範意識が重視されるようになりました。東京都の取り組みはその先取りともいえるでしょう。同じような取り組みとしては、やはり2007(平成19)年度から県立高校1年生に「道徳」(1単位)を必修化する茨城県の取り組みもあります。

ただ、奉仕活動はあくまで個人の自主性によるべきであるとして、義務付けに反対する意見も教育関係者の間には根強くあります。また、昨年末のいわゆる「未履修問題」で明らかになったように授業時間数の不足が深刻化しているなかで、奉仕活動の義務付けは授業時間数を圧迫すると懸念する声も一部にあるようです。

平成19年度奉仕体験活動の必修化に向けて
奉仕体験活動の必修化
東京都設定教科・科目「奉仕」(仮称)カリキュラム開発委員会 中間報告書
教育改革国民会議報告 -教育を変える17の提案-

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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