「もっと時間を割いてほしい教科」トップ3は算・国・英

期間 2005/11/24〜2005/11/27 有効回答数623人

1999年ごろから叫ばれ始めた「学力低下」。これまでの「ゆとり」教育が「ゆるみ教育」につながっている、と非難する声も聞かれるなか、学力低下問題や学校教育のあり方などについて、多くの方が不安を抱えています。今回は「義務教育」について保護者の皆さんがどう捉え、学校がどんなふうに変わってほしいと思っているかを、「教育発見隊」アンケートの結果を見ながら考えてみたいと思います。

授業時間「もっと増やして」の声多数

小・中学校では、学習指導要領の改訂や完全学校週5日制などによって学習の範囲も授業時間数も減っています。そこで「教育発見隊」アンケートでは、義務教育に関する質問のなかで「授業時間を増やしてほしい教科と減らしてほしい教科」をそれぞれ挙げていただきました。アンケートにご協力くださった皆さま、ありがとうございました。その結果が下の【図1】です。

【図1 今後、授業時間をもっと増やしてほしい/減らしてほしいと思う教科(科目)】※複数回答


授業時間を増やしてほしい教科の第1位は算数・数学で、回答者全体の75.6%にあたる方々が挙げています。第2位は国語(68.9%)で、第3位は英語(47.4%)でした。さらに理科、社会と続きます。とくに算数・数学と国語は、学年を問わず「増やしてほしい」という声が多く、フリーアンサーを見ても「国語と算数はすべての学力の基本だからともに大切」というコメントが多く目につきました。当然とはいえ、これらの教科は保護者の方々の「今の授業の質や量に満足していない、改善してほしい」という思いがとても強い教科と言えるでしょう。

英語を挙げた方を子どもの学年別に見ると、中学生以上の場合は71.8%と、国語(70.1%)と同等以上に「増やしてほしい」という声が多いようです。一方、小学生以下で英語を挙げた割合は4割ほどですが、正規の教科ではないにもかかわらず、理科や社会などよりも「増やしてほしい」という声が多いようです。

文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会では、これからの小学英語を正規の教科とするか、英語活動の充実とするのかどうかが今まさに話し合われており、今年度中に審議会としての結論を出す予定です。小学校3年生から実施してはどうか、などの案もあるようですが、誰が英語を教えることになるのか、中学英語との接続はどうするのかといった課題も多く、その結論が注目されます。

ここで、算数・数学、国語、英語の3教科を「増やしてほしい」という方々のフリーアンサーを紹介しましょう。

【算数・数学について】

  • 基礎が完全にできていないと、将来、挽回するのが大変。
  • 進むのが速く、理解できていなくても次の単元に入ってしまうので、もっとじっくり時間をかけて理解できてから、次の単元に進むようにしてほしい。
  • 大事な科目で苦手になりやすいのに、あまり丁寧に教わっていないみたいなので。

【国語について】

  • 読み取る力だけでなく、表現力をつけてほしいと思います。それには今よりも早い段階から取り組ませることがいいのでは、と感じることがよくあります。また、表現力を身につけるために、読書の時間をもっと増やしてもらいたいです。
  • 読解力や漢字もそうですが、すべての教科は国語の力がついていないとできないと思う。

【英語について】

  • 中学生になっていきなり他国の言葉を習うのは、親が不安。ほとんどのお子さんが英語関係の習い事をしています。でも、小学校でもう少し英語に触れられるとまた違った興味もわくでしょうし、ある意味楽になると思うのですが・・・。
  • 英語の授業がある地域と全くない地域があり、不公平感があります。私たちの地域では全くありませんので、子どもが転校した場合を考えると転校先でついていけるか心配です。

2004年に発表された国際的な学力比較調査(PISA)の結果から、日本の生徒の読解力が低下していることが明らかになりました。文部科学省も朝の読書活動などを推進する「読解力向上のためのプログラム」や、学ぶ意欲そのものの向上を図る「学力向上アクションプラン」などの改善策を継続的に講じていますが、ここでの「読解力」とは、単に文学的な文章を味わうだけの力ではありません。文章や資料、データを解釈して論理的に考えられる力、つまりすべての教科に通じる力を指しています。こうした教科横断的な力をつけるためには、まず国語や算数をはじめとする基礎学習を小学校段階からしっかり身に付けることが大切になってきます。

減らしたい教科は「なし」が断トツ

では、もっと「減らして」ほしい教科についてはどうでしょうか。先の【図1】にあるとおり、「特になし」と答えた方が全体の7割近くにのぼり、2番目に多かったのは「総合的な学習の時間」でした。「増やしてほしい」教科とは異なり、回答数自体が少なく、答えは「なし」と「総合学習」の2つに集中しています。学力低下が叫ばれる今日、「減らしたい教科などはない」という気持ちの表れでしょうか。

【「特になし」に関連して】

  • 時間が足りないのなら全体の授業時間を増やせばよく、何かの教科を減らす必要はない。
  • どれも子どもが楽しみにしているものだから、減らすものはありません。
  • 現状でも少ないと思うのに減らすことはない。
  • 受験科目は、減らしてほしくない。またそれ以外の教科も、それぞれ大切なことを学ぶことには変わりはないので、減らしてほしいとは思わない。ただ、そうなると授業時間が全体的に増えてしまうことになるのかもしれませんが・・・。

【総合的な学習の時間について】

  • 子どもの学校では総合の時間を使って運動会や学芸会の練習をしています。総合ってこういうもの?という疑問があります。
  • 子どもは楽しんでいるようだが、家庭で調べたり親が協力したりなど負担が多いように感じる。
  • 総合学習は、各教科の学習の中で調べ学習を取り入れれば十分だと思う。基礎学力がしっかりしていないのに、本当の意味での総合学習は成り立たない。主要教科の時間数を減らしてまで、総合学習の時間を作る必要はないと思う。

こうして見る限り、総合的な学習の時間の評価は必ずしも芳しくはないようです。「教育発見隊」アンケートでも、「『総合的な学習の時間』での学習や活動で、子どもに変化が見られましたか?」という問いに対して、7割近くが「あまり変化が見られない」と回答しています【図2】。

一方、ベネッセが行った調査(文部科学省委嘱:義務教育に関する意識調査)では、全国の小・中学生にも同様の質問をしています。これによると、回答した児童・生徒の約3分の2が「(総合的な学習の時間で)将来や進路を考えるようになった」と感じています。これは、保護者の見方(10.2%)よりも高い値です。

また、それ以外の項目を見ても、特に小学生は「総合的な学習の時間」について全体的に保護者よりも肯定的に捉えているようです。調査の母体や方法が異なるため一概には言えませんが、子どもたちの体験の豊かさや、興味関心を深め、主体的に物事を考えさせる授業になっているならば、総合的な学習の時間はムダ、とは言い切れないでしょう。実際に全国的に見ても、きわめて優れた「総合的な学習」の実践をしている学校が確実に増えてきています。

【図2「総合的な学習の時間」をきっかけにして子どもは変わったか】



学力テスト「賛成」が9割

このようにアンケート結果を見てくると、学力低下に対する保護者の方々の不安がいかに大きいかを改めて感じます。義務教育に関する不安な点についても、地域や公・私立、通塾の有無など、自分の子どもと、他の子どもたちが置かれている環境の違いを心配する声が非常に多く寄せられました。こうした保護者の不安な思いを反映してか、全国的な学力調査を行うことの賛否について「賛成」「やや賛成」と答えた方が全体の9割近くに達し、「反対」「やや反対」の合計はわずか5.9%にとどまりました【図3】。

【図3 全国学力調査について】



ただし、「結果を子ども(保護者)に返すこと」や「学校の改善などに活用すること」など、条件付きで賛成する方も見受けられました。

  • 自分の子どもが今どのくらいのレベルにいるのか、通知表では全くわからないので、やってほしいと思います。また自分の子どものレベルがわかれば今後の対策も考えていけると思う。
  • 全国学力テストと5県学力テストがあったため、今までの復習ができ、学校でも2週間ほど漢字に力を入れるなどの試みもありました。小学生になって初めて大きな目標を持って勉強できたと思います。
  • 学校選択制の際、学力結果だけに目がいってしまい、それ以外の魅力を見ない親が増えてしまうのではないだろうか。それにより、学校間の格差がかなり開いてしまうことには、疑問があります。


全国的な学力調査の実施に関して、文部科学省は2007年度から全国的な学力調査の実施構想を持っています。テストを実施する対象は、いずれも最終学年である小学校6年生と中学校3年生を考えています。実施教科は、国語と算数(数学)が対象の予定で、そして「希望する学校」は、すべて参加できるようにするようです。これには、子どもたちの学習意欲を向上させるような調査結果の活用と、学校間の序列化や過度の競争にならないための、国や自治体の十分な配慮が求められます。

義務教育の改革は今回とりあげたトピック以外にも多くの検討事項や課題があります。そこで次回【後編】では、小学校での英語導入や、公立の中高一貫教育などについて、「教育発見隊」のみなさんのアンケートを分析、紹介しながら考えてみたいと思います。ご期待ください。

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