「しつけ」は子どもと共に親も成長するもの

「しつけ」について、 前回の速報版にて「教育発見隊」アンケート結果(有効回答数:1280人)をお伝えしました。今回は、「しつけの理想と現実」、「しつけについての悩みや不安」などについて見ていきましょう。

しつけの理想と現実
親の不安・悩みも、成長する!?
子どものしつけに悪影響を及ぼす、大人たちのモラル
 
しつけの理想と現実

前回の速報版でご紹介した結果では、親のどの年齢層においても、「かなり厳しくしている」「時と場合によっては厳しくしている」と答えた方が、約9割いることがわかりました。また、子どものしつけに対して「かなり心がけている」ものの、実際には厳しい現実も見えてきました。

今回は、幼稚園入園前から中学生のお子さまをお持ちのかたから、多くの回答をいただきました。それぞれの成長段階において、「心がけているしつけ」の理想と現実をそれぞれ見ていきましょう。









以上のグラフからもわかるように、子どもの成長段階、生活環境によって、「心がけているしつけ」が変化していることがわかります。
「翌日の準備」、「目上の人・先生・高齢者などへの言葉遣い」に関しては、小学生の低学年から高学年にかけての成長と共に子どもができるようになっていくことがわかります。
逆に、子どもがいくつになってもなかなかしつけどおりにできないのが、「部屋の片付け・整理整頓」。幼児の頃はおもちゃ箱にしまうレベルだった片付けが、大きくなると子どもが机・自室を持ち、持ち物が増えるために、整理の手順やルールが複雑化していくことが考えられます。
どの成長段階においても、親が期待するしつけで低かったのが、「子どもが手伝う家事を決めている」という項目です。この項目は理想と現実のギャップはないものの、約6割にとどまっています。
 
親の不安・悩みも、成長する!?

子どもの成長に合わせてみてきたしつけ。保護者の方々のしつけに関する不安や悩みも、子どもの成長段階に合わせて変化していることが、教育発見隊の自由回答から見えてきました。少しご紹介します。

幼稚園生以下の子どもを持つ保護者の悩み

  • 理想は父親と母親の二人で協力しあい、話し合いつつ子どものしつけをしたいと考えているのですが、実際には父親は平日は毎日仕事が忙しく夜中に帰宅、子どもと触れ合える時間はほとんどありません。我が家の場合は、休日の日曜日だけ、父親が家にいます。私一人だと、独りよがりになってしまいがちだし、感情的になることも多いので、主人にもっと一緒にいてほしいです。叱り方も主人のほうが上手ですし。

  • 主人と相談しながら子どもの様子を見ながらひとつずつ教えているのであまり心配はないけれど、祖父母のしつけは自分の気分次第なので一貫性がなくて困る。

  • ほとんど、自分ひとりで育てている状態なのでこれでいいのかと、時々悩みます。もし、自分の考え方が間違っていて、それを教えてしまったら・・・と思うと、しつけはかなりプレッシャーになります。
  • 母親以外の大人と話をする機会が皆無。

子どもをしつける場で悩んでいる声です。また、自分自身の気持ちのコントロールができず悩んでいる方もいます。


  • 自分は子どもに対して小言を言いすぎているのではないかと気にしている。でも、公共のマナーを守ったり自分の身の回りのことをするなど最低限身につけて欲しい事もたくさんあり、境界線がわからず難しい。

  • 何度も同じ事を注意しても直さない時は、幼児期なのでたたくことがよくあるが、他の人から見て虐待だと思われるのではないかと不安。

  • 厳しく注意するタイミングがわからない。怒りすぎると、子どもがかえって逆上し、逆効果であることはわかっているのだが、朝、忙しいときにぐずぐずしている子どもを見ていると烈火のごとく怒ってしまう自分がいる。

また、自分の声が子どもに届いているか、素直に聞き入れることができているのか、不安の声も聞こえました。


  • 5、6歳で言い聞かせることができても、それを実際理解しているのか、それともその場しのぎで逃げているだけなのか、もしかすると、子どもが心の奥で溜め込んでいる何かがあるのではないか、など自分のしつけに対して正しいかどうかわからなくなるときがある。

  • 厳しくしすぎることが、逆にストレスになり、親から離れた場所で羽目をはずしすぎるのではないかと思う。

初めての子育て、相手は自分の思っていることを上手に言葉で表現できない幼児ということもあり、後悔の思いをひきずったり、自分を責め悩んでいる方が多く見られました。
低学年の保護者の方々の悩みになると、少し様子が変わってきます。

低学年の子どもを持つ保護者の悩み


  • 口うるさく言いすぎているようで、最近子どもに注意をすると知らん顔をするときがある。

  • 自分のことは自分でがんばるということをさせたいのですが、厳しくなりすぎるようでかえって反発しているようにも感じる。ほめ方としかり方で迷う。

  • ガミガミ言い続けていると、子どもはだんだんその言葉に慣れてくる。したがってそれ以上の言葉・声を出さなくてはいけなくなりそう。

  • 最初が肝心と思って、少々厳しくしすぎた面もあり、子どもが萎縮している部分が見えている。そこをこれから、どうフォローしていくか、悩んでいる。

  • 我慢したり、ねばり強くがんばるという事ができず、すぐにあきらめたり、弱音を吐いて甘えるので、親の方がイライラしてしまう。

子どもに自我が芽生え始め、親の言葉にさまざまな反応をする様子がわかります。反抗する子、甘える子、知らん顔する子、萎縮する子・・・。そんな子どもを相手に、幼児期とは異なる理由で悩み始めることが見て取れます。また、小学校に上がり、他の子どもたちを知ることで、そのギャップに悩む方も多いようです。

  • 小さいときから 人の嫌がることはしない、まず相手が何を思っているか考えなさいと言い聞かせてきた。優しいが 優しすぎて傷つくことが多い。まわりは平気で傷つくことを言っている。周りの影響でこの子も同じになったらどうしようと思ってしまう。

  • うちはしつけが厳しいほうだと思うが、子どもの友達がわがままをいったり、なにもしてないのにぶたれたなど、しつけられていない子がお友達にいるので、我慢するのが多く損してるのではないか。

高学年の子どもを持つ保護者の悩み


  • 何故自分だけ我慢をしなければいけないの?と聞かれ困ってしまうことがある(他の子は野放し状態の時)。

  • みんながそうだからという態度でいるので、親が言っても聞き分けが悪く どうにも手におえない事がある

  • 礼儀や言葉遣いなど厳しくしつけたが、子ども集団に入るとかえって浮いてしまっているように感じる。

  • 自分の子に我慢させていると(学校等で)わがままな子が我慢せずに、我慢できる子により我慢させる結果になっている。我慢させないでわがままにさせた方が得なように思えることさえある。

  • 幼い頃から何年もかけて伝えてきたモラルなどが、低俗なテレビ番組や学校生活の乱れなどで「みんなもやってるから」と、感覚がマヒしてしまいそうで不安。常に自分の頭で考えるよう言い聞かせているが、「みんなだってそうしてるもん」という言葉が多くなってきている。

子ども自身が、自分が日頃しつけとして言われていることが、友達・周りの大人ができていないことに疑問を感じたとき、返答に困る声が多く聞かれました。また、正しいことをしているのに批判される風潮、我慢できない子のそばでじっと我慢する・・・という矛盾にも不安を感じているようです。
しつけへの無関心から派生する、社会的なモラル低下を見るにつけ、進路選択で迷う声も聞かれました。


  • モラルの低下を感じる中、特に公立中学が心配で、経済的余裕はないのに、私学を考えざるを得なかったり、難関中学に入るために塾通いしたり。安心できる「普通レベル」なら、どんなに良いかと悲しくなります。経済的に潤っている人だけがモラルも質も高い教育を受ける気がしています。

中学生・高校生の子どもを持つ保護者の悩み

中学生・高校生の子どもをもつ保護者の方は、12年以上にわたって子育てをしてきた経験からでしょうか。いい意味でどっしり構えているような、そんな印象を受ける声が多く聞かれました。


  • 言葉づかいが大人の前と友達同士の間とでは全然違うことが気になる。しかし、わきまえて使っているようなので仕方がないことなのかとも思う。

  • 大変厳しくしつけたために、大人からの受けはとても良い子だった。しかし、同世代の友達からは「なぜそんなにていねいに挨拶するのかと違和感を覚える」と言われて、仲間はずれのようになった時期もある。今は我が子も周囲の子ども達もすっかり成長したから、そういうこともなくなったが、当時は、社会の風潮に合わせた方が子どものためなのだろうかと悩んだこともあった。

  • (高校生になると)親よりも学校・友人の影響が大きい。幼児期に培ったつもりの価値観が崩れていくような不安がある。

  • とても厳しくしてきました。でもまったく達成できていないばかりか、平気でうそをつくこともあります。私のあり方は、完全に間違っていたと思いますが、もう遅いです。それでもまだガミガミ怒っています。

  • あまり厳しすぎると、ストレスがたまるだろうし、かといって社会に出て困らないくらいには言っておきたいし、兼ね合いが難しいと思います。また、「親の言うようには育たぬ、親のする通りに子は育つ」と言われているので、自分自身にもプレッシャーがかかります。とにかく、子どもは未来を作る人たちなので、授かり育てる以上、責任がありますね。

 
子どものしつけに悪影響を及ぼす、大人たちのモラル

皆さんから寄せられる声の中で、子どものしつけを阻害する要因のひとつに、大人のモラル・公共でのマナーも多くあげられていました。今回の発見隊アンケートでは、社会のモラルについての調査もしています。



上記グラフの質問項目以外でも、「最近のモラル低下の原因は何か」という問いに、多くの声が寄せられました。
子どもを育てる親として、信じがたい内容もあります。


  • 親のモラルのレベルが子ども以下です。学校から配られる授業参観のプリントに、「参観の際は授業の妨げにならないよう静かにしてください」などと書かれています。また、先日も電車の中で大きな声でしゃべる友達(大人です)を注意したら、神経質だと言われました。

  • 親が子どもに甘くなった。また、親がすぐに「体罰だ」などと教師をつるしあげるので、学校も思い切った教育ができないでいると思う。夜遅くまで子どもを連れ回す親が多い。子どもにお金や物を与えすぎ。

  • 親の子どもに対する無関心と責任感の乏しさ。親自身が自分中心で楽をしたがる。また、社会的に携帯電話の普及とコンビニの普及が親と子どものつながりを希薄にしている。メールで連絡がつけば安心な親やお金を与えてコンビニで弁当を買わせるのが日常というのは、おかしい。

  • 親のしつけの問題。共働きの家が増え、子どもに充分かまってやれない。親自体もモラルが低下している。それを見て育つ子は自然とモラルも低下する。例えば、車の窓から平気で缶やたばこの吸殻を投げ捨てるような親。夜遅くに親の都合で色々な店舗に小さな子を連れていく親。

  • 思いやりの欠如だと思います。歩道を歩いていても、よける人がとても少ない。特にベビーカーを押している若いお母さん方は、赤ちゃんを連れていれば許されるとでも思っているかのように全くよけてくれません。それが当たり前に育っているのだから、成長した子どもたちがすれ違う人に道を譲るなどできるわけもないと思うのです。個人を尊重するのはとても大切ですが、人は人との関わりの中で生きていくのですから、気になって仕方がありません。

ものが溢れ豊かになった世の中、生活環境も子どもを取り巻く環境も、時々刻々と変化しています。そんな世の中の変化に伴い、社会の中の価値判断も徐々に変化していきます。子育てのスタイルも、変化が求められる部分もあります。しかし、ひとりの人間として守らなければならないルール、大切にしなければならない人とのかかわり方、心のもち方があると思います。地域や近隣との人間関係性が希薄化していくなかで、どういう子育て・しつけをしていいかわからず、本来家庭でするべきしつけを学校にゆだねてしまう親、注意すべき子どもがいても、関係ないと言って注意できない大人たちは少なくありません。

本来、子どもの教育は、家庭・学校・地域の3つが連携してこそ、力を発揮できるもののはずです。

このような声をいただきました。最後に紹介しましょう。


  • (モラルの低下は)家族・ご近所のつながりのあり方が変化したこと。昔はサザエさん一家のようにいろんな世代が同居して、隣近所との付き合いも密で、良いこと・悪いことをいろいろな人から教わり常識となっていたのだろうけど、核家族化した家庭では世間の常識を、教えるのも知るのも難しいと思う。自分も核家族で育ってきたけど、社会に出てから知った常識がたくさんあります。親はしつけには厳しくしっかり育ててもらったと思うのですが…。親のしつけだけではモラルや常識は伝えきれないんじゃないかと思います。

しつけや規範意識は、家庭だけでは決して完結せず、また、しつけを通して大人自身が成長するのだということを、改めて確認したいものですね。

プロフィール



「ベネッセ教育情報サイト」は、子育て・教育・受験情報の最新ニュースをお届けするベネッセの総合情報サイトです。
役立つノウハウから業界の最新動向、読み物コラムまで豊富なコンテンツを配信しております。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A