不登校決意から5年。転機を迎え、親子の現在の悩みは?【先輩保護者に聞くリアルな歩み_後編】
娘さんが小4から学校に行かない選択をした武田 真美子さん(仮名)さん。武田さんが娘さんの決意を受け止めた当時の心境から、医療機関や教育支援センター、校内サポートルームとのつながりをお聞きしました。娘さんの状況の変化の中で、支えになったのは「保護者どうしのネットワーク」だったと言います。後編では武田さん自身の思いや現在の悩みをクローズアップします。
この記事のポイント
保護者同士のネットワークが余裕を与えてくれた
医療や自治体の教育相談、小学校の校内サポートルームなどを通じて娘さんを支える輪が広がっていく一方で、武田さん自身を支えたのは、保護者同士のつながりでした。小4の終わり頃、保育園時代からのママ友が、同じ地域に住む「学校に行きづらい・行かない子を持つ保護者」をつないでくれて、自主的な交流会を開催するようになりました。
保護者どうしの交流によって、武田さんが感じられたメリットは次の3つです。
・身近な情報を交換できた
・出来事の見え方が変わった
・孤独感から抜け出せた
・不登校に関する身近な情報が交換できた
不登校の子どもを持つ保護者どうしの交流にはさまざまな形態がありますが、武田さんは、同じ地域に住む保護者どうしでつながるメリットを強く感じました。
「同じ小学校に通う保護者と、"担任の先生にこんな対応がお願いできたよ""うちの自治体の教育支援センターはこんな雰囲気"など、地域に密着した情報を交換できたのがとても心強かったです」。
インターネットでもたくさんの情報を得ることができますが、一方で学校や自治体に特化した具体的な情報にはなかなか出会えません。同じ地域に住む保護者どうしだからこそ得られる「手触りのある情報」は、次の一手を考えるうえで大きな助けになったといいます。
・学校に行かない日々の「出来事の見え方」が変わった
ひとりで抱えていると重く感じる日々の出来事も、同じ背景を持つ保護者と話すと景色が一変することがあります。
「今日は学校に行くというから起こしたけど、結局起きれなくて行けなかった!」というよくある出来事も、保護者どうしで話していて、"わかる〜!" "うちもだよ!" と言ってもらえるだけで、心がすーっとラクになる感覚がありました」。
「こんな状況はうちだけかも...」と思い悩んでいたことも、実は多くの家庭で起きているのがわかると、「誰もが通る道なんだな」と思うことができます。同じ出来事がまったく違う重さに感じられるようになったと武田さんは振り返ります。
・保護者も不登校期間の孤立感から抜け出せた
不登校の子どもを持つ保護者が感じやすいのが、孤立感です。周囲に同じ状況の人がいないと感じたり、話せる相手がいなかったりすると、悩みはどんどん内向きになっていきます。
同じ境遇の保護者とつながったことで、「自分だけじゃない」という感覚が生まれ、子どもへの関わりにも少し余裕が持てるようになったと武田さんは言います。「保護者同士で話すと気持ちがラクになって、子どもとも、少し余裕をもってかかわれるようになった気がします」。
子が不登校であっても、親も好きなことをあきらめないでいい
また、この先どうなっていくかが見えない渦中にあっても武田さんが大切にしていたのは、好きなことをするための時間を確保することでした。
「特に渦中にいると、子ども優先になるのが当然だと思います。それでも自分の好きなことはあきらめないでほしいです。私の場合は、人と会う時間だけは削らないようにしていました。娘にも私が思い詰めている姿よりも、楽しんでいる姿を見せたかったですし、外からの新たな刺激や情報を持ち帰ることで、娘にとっても発見や気づきにつながったらいいなという思いもありました。外に出るのが難しい場合もあると思うので、オンラインで何かを観るとか、好きなものや心ときめくものを探してみるとか、そんなささいなことでもいいと思います」。
武田さんが人と会い、K-POPアイドルを「推し」続ける日々の先で、娘さんも次第に元気を取り戻し、アニメ作品やユーチューバーなどの「推し」ができました。推しグッズを買いに出かけたり、聖地へ推し活旅行に行くようにも。自分の好きなことをあきらめずいた母の姿が、娘さんの「外への一歩」とつながっていったのかもしれません。
少しずつでも動いていけば、前に進める
学校に行かなくなった直後は「家で溶けている」ような状態だった娘さんは、現在おおむね週に1回登校。勉強に追いつきたいと塾に通うようになり、地域クラブ活動にも保育園からの幼なじみと一緒に参加しています。
「週に1回学校に行くのもやっとだった小学校時代と比べると、目に見えて体力も気力も回復しました。何より"勉強を頑張ってみたい"という気持ちが芽生えたのは驚きです。小2で難しかった九九の暗唱が、最近はするっと出てくるので、身につくまで人より時間がかかるのが娘の個性なんだと感じています」。
「あのとき、もう少し時間をかけていたら、もっと丁寧にかかわっていたら」と思い返すこともあると武田さんは言いますが、精いっぱい外へつながり、動き続け、娘さんと共に前へ進んできました。小学校で出会った支援員さんから「お母さんには何でも話せるいい関係なので、それだけは自信を持って!」と言われた言葉は、今も武田さんの励みになっています。
「進学も控えているので、どのような進路を選ぶのか、それに向けてどんなことがどこまで準備ができるのかといった新たな悩みも増えています。少しずつ手を放すことも心がけながら、娘の一番の味方でいられるように伴走していきたいです」。
不登校をきっかけとしたリアルな経験の中に、次の一歩のヒントが
不登校は、子どもだけでなく、伴走する保護者自身も揺れ、悩み、大きく変化していく経験です。武田さんの5年間のリアルな日々は、今まさに渦中にいる保護者の方々にとって、小さな「次の一歩」のヒントになるのではないでしょうか。
前編を読む:不登校の受け止め方から転機と支援まで、親子で前進した5年間【先輩保護者に聞くリアルな歩み_前編】
