ベビーカーに見る「ロンドンVS東京」 子育てしやすいのはどちら?
夫のロンドン赴任にともない、高校生の長女を連れロンドンへと渡った沓澤家。妻の糸氏は、日本との生活習慣や意識の違いを興味深く見つめている。最近日本で論争となっている「ベビーカー」事情を例に、ロンドンの子育て環境、特に東京とロンドンの意識の違いについて話してくれた。
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ロンドンで仲よくなった若いママ友の1人が、乳幼児を連れて日本に一時帰国することになりました。彼女は、「日本ではベビーカーが邪魔者扱いされるのかな」と不安そうです。インターネットを見ると、確かに、「電車やバスではベビーカーをたたむべき」「混んだ車内で赤ちゃんや荷物を抱えながらベビーカーをたたむのは、大変だし危ない」「そもそもベビーカー自体が邪魔」、などさまざまな意見が交わされています。ただ、これは電車も街中もひどく混雑する東京などの大都市が中心の問題だろうと思います。
同じ大都市でもロンドンは、率直に「子育てしやすい街だな」と思います。いたるところでベビーカーを見かけますが、迷惑がる人を見たことがありません。むしろ、温かく声をかけたり、地下鉄の階段やバスの乗降時などは、必ず近くの人がベビーカーを一緒に運んだり持ち上げたりしてくれます。ロンドンのバスや電車も満員で窮屈な場合がありますが、それでも乗客全員で、ベビーカーが入れるようにと協力する場面をよく見かけます。ベビーカーや子ども連れの親子に対する社会の視線が優しいのです。
これは心のゆとりの違いかもしれません。東京は時間も約束も正確に守られ、便利で快適に暮らせる街ですが、一方でその快適さを乱すことが許されないような厳しさを感じます。ロンドンでは約束どおりに進まないことが多すぎて、相手に寛容にならざるを得ませんが、その分自分も楽に生きられます。よいところは大切にしつつ、心のゆとりを少し持てるようになれば、お互いに助け合いやすくなり、東京はもっと子育てしやすくなるのではないでしょうか。