茂木健一郎さんに聞く、新しい時代に必要な学校選びの視点とは

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脳科学者として有名な茂木健一郎さんは、「屋久島おおぞら高等学校」の校長でもあります。先日オンラインで行われた中高生向けの特別授業(その模様はこちら)の後に、「新しい時代の学校選び」について独占インタビューをさせていただきました。

———茂木さんは通信制高校の校長先生をされていますが、ひと昔前と違って通信制のイメージはがらっと変わっていますよね。

不登校だった子が通うイメージがあったと思いますが、それは昔の話。僕はいろんな大学で教えていますが、この間、東京大学の教え子の兄弟が、屋久島おおぞら高校にいると聞きました。多様な学びの選択肢が広がっていることを実感します。以前の感覚とは全く違いますね。

———高校も大学も、変わってきていますね。

多くの大学が就職実績を、高校は進学実績を重視していますが、その価値が多様化してきています。企業でも採用時に学校名を見ないところが実際に増えてきて、新しく伸びてきている会社ほどそうですね。もちろん、名前の通った大学に行くために、進学実績のある高校に行く流れはまだまだありますが、実質を大事にする教育はますます求められ、その学校にはどんな人がいて、卒業生がどう活躍しているのかを見る方向になっていると思います。アメリカの大学ランキングにも、偏差値ではなくそういうことしか書いていません。アメリカの大学は偏差値の概念がなく、学校で行われている教育内容や卒業生の活躍度で評価されるんですよね。日本も、そうなってきている途中だと思います。

偏差値だけで大学を選ぶ時代は終わった

———親の時代の常識が通用しなくなりました。

偏差値や進学実績だけでは選びにくい時代になり、積極的に自分で情報を取りにいかないといけなくなりました。一方で中学受験準備の低年齢化があり、小学1年生から塾に通っている人も多いですが、新しい学力感がアップデートされないともう無理な流れは出来上がっています。わかっている人はわかっていますから。インターナショナルスクールや海外留学も当たり前になってきています。開成から東大など進学の王道はまだありますが、超進学校の渋渋(編注:渋谷教育学園渋谷中学高等学校)や聖光学院も進学先に海外の大学が増えてきていたり、多様化し始めています。親が思っているほど日本の教育は変わっていないということはなくて、実際に変わってきているんですよね。

———学生の意識も変わっているとお感じになりますか。

東大生と話していても、変わっているのを感じます。東大に来たからどうではなく、何を学び、どうキャリアを積んでいくのか考えている学生が増えてきています。東大だけではなく、早稲田や日本女子大、東工大などいろんな大学で教えていますが、学生の意識はどんどん変わっています。もう大学名でどうこう言う時代では、すでにないということ。ここ10年くらいで台頭してきている人気企業は、採用の仕方も価値観が全然違いますよね。求める人材も違ってきていますね。

シンプルに、やりたいことを応援するのがいちばん

——親はどう向き合っていけばいいでしょう。

お子さんに、今の学校についてや、これから何をしたいかなどの希望を聞いてみるのもいいと思いますよ。そして全体として見ると、シンプルにお子さんがやりたいことを応援するという姿勢で学校を選ぶのが、結果としていちばんいいと思います。
今回の東京オリンピックで、スケートボードで銅メダルをとったスカイ・ブラウンさんはYouTubeで技を学んだと話していましたよね。まちがいなく、アイビーリーグはスカイ・ブラウンさんのような人を欲しがるでしょう。そういうキャリア形成、学びの進め方もあるんだと、若干13歳でメダルを取って証明しました。これからの時代、そういう仕上がり方もありで、そうやって進学も叶える時代だよねと。親が意識を変えていかないといけないですよね。
クイズで有名な松丸亮吾くんも、ただクイズのできる東大生というだけで有名なのではなくて、クイズでベンチャービジネスをやっているわけです。それが新しい大学のイメージで、もう時代は変わっているんじゃないでしょうか。それを、どれくらい親がわかっているか。

——情報を取りにいかなければ、体感することは難しいかもしれないですね。

そうやって子どもとズレてしまうことがいちばん怖いですね。子どもはすでに、新しい時代を乗りこなしています。親が相変わらずの価値観でアップデートしないままだと、ズレが生じます。そうすると、子どもが親の言うことを信用しなくなる
でも、有名大学を目指すのが悪いと言っているわけではありません。なぜそこに行きたいのか、実質的な意味が求められてくるわけです。でも日本の国公立大学も私立大学も世界的に見ればお安いんですよ。中学受験塾より慶応義塾大学のほうが安かったなんて話題にもなりましたが、アメリカの大学も年間数百万かかるのは当たり前。留学の人気が高まっていますが、日本の大学にはお値打ち感もありますし、目的を持って学ぶならまだまだ狙い目だと思っています。

まとめ & 実践 TIPS

いい大学、いい会社。ただそれだけを横並びで目指せばいい時代は終わったとよく言われます。一方で、都市部を中心に中学受験熱は高まってもいます。親としてはより「いいとされる」「できるだけ偏差値の高い」学校に、と思うのも偽らざる気持ちですが、その中で、子どもに寄り添い、個性を見て、子どもの声を聞いて、親自身が新しい時代への学びを深めていくことが大切だと痛感しました。

西野亮廣×茂木健一郎「中高生の時にしておくべきこととは?」

撮影/高橋真人 取材・文/有馬美穂


屋久島おおぞら高等学校とは
2005年4月広域通信制高校として鹿児島県屋久島町に開校。「つながる場所、つなげる場所。なりたい大人になるために。」を理念に掲げ教育活動を行っており、全国各地に在籍する8,500名を超える生徒は、年1回のスクーリングで屋久島を訪れている。

プロフィール

茂木健一郎

1962年東京都生まれ。東京大学理学部、法学部を卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了。理学博士。「クオリア(意識における主観的な質感)」をキーワードに、脳と心の関係を研究。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、「屋久島おおぞら高等学校」校長でもある。

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