西野亮廣×茂木健一郎「中高生の時にしておくべきこととは?」

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先日、脳科学者の茂木健一郎さんが校長を務める「屋久島おおぞら高等学校」の特別授業が行われました。
3回目の特別授業となった今回、絵本作家など幅広く活躍する西野亮廣さんを招き「中高生のいま、やっておきたいこと」をテーマにトーク。
オンラインで1000名が全国から聴講した白熱の内容のエッセンスを、ご紹介します。

この記事のポイント

売れっ子だった25歳で引退を決意

茂木先生(以下茂木):中高生の頃、一体どんな子どもだったの?

西野:高校生の頃は、アホでした、むっちゃ(笑)。小2の時には、将来は吉本に入ることと、大学に行かないことは決めていました。

茂木:それで本当に吉本の芸人になったんだからすごい。ここに東大を目指している生徒がいるんだけど、質問があるんだよね。

生徒:ずっと目指していたお笑い芸人を辞めた理由はなんですか?

西野:二十歳の時、「はねるのトびら」が日本一の人気番組になりました。でもそこから見えたのは、タモリさんとかの背中で。このままやっていても追い抜く気配もないなと思った時、戦い方を間違えたのかなって。もう未来は見えたんです。結果が出切った上で、ここまでしかこられなかったというのが大きな絶望だった。もうやり切ったし、確認作業で生きるのは嫌だなって。それで25歳で辞めたんだけど、それは結果が出たから。やり切ったからです。

茂木:やり切った。かっこいい。

西野:むっちゃモテるんです(笑)。そう、やり切らないと判断できないです

茂木:(笑)。(生徒へ)君も入試、やりきれよ。

どうしたら“詰む”のかをリストアップして、それを排除する

茂木:今は絵本作家になって映画を作ってアカデミー賞とって。もう結論から聞いちゃうけど、中高生の時にやらないといけないことって、何だと思う?

西野:僕の時代と明らかに違いますよね。今の中高生なら、シンプルにお金の勉強です

茂木:お金の勉強。どういうこと?

西野:どうしたら夢が叶うかじゃなくて、どうしたら夢が叶わなくなるのかを考えるということです。

茂木:お金がなくなると叶わなくなるのか。

西野:極論そうですよね。成功例は再現性がなくて、真似しようとしてもできない。でも、失敗例は真似すれば失敗する。それならばどうしたら自分たちの人生が詰むのかをリストアップしてそれを排除したらいい
あとは例えば、スポーツで日本がどのジャンルで勝っているかを見ていると、体重別に分かれているスポーツです。柔道、ボクシングでも、同じ体重であればどうするかという工夫勝負になってくる。つまり、大資本、力を持っている人が力を出せない状況で戦うんです。

茂木:それで絵本にいったんだ。大資本を越えるって言って、本当に実現してきているんだからえらいよ。僕が出会った時は1人で描いてたけど、その後が見えていたわけ?

西野:エンタメで世界をとることを考えて、逆算した時に、打ち手としては絵本だったんですよ。せこい話だけど、どうやったら負けるのかを考えるんです。実写映画を作ろうと思ったら、ハリウッドでは予算の桁が違う。CGのクオリティも圧倒的ですよね。ハリウッドがどうしたら負けるのかを考えたら、絵本なら、ディズニーがそこに100億円出せないんですよ。シンプルに才能勝負になりますから。

お金は、ストレスの対価であるという植え付け

茂木:25歳でテレビをやめようと思って、それからバッシングもされたり、逆風も色々あったよね。でも西野はいつも大御所に可愛がられているし、未来からタイムマシンに乗ってきた人に見える。その、可愛がられる秘訣とか、発想はどこからくるの?

西野:可愛がられるには、酔っ払って年配の人にぎゅっとクリンチするのが一番いいです(笑)。高校生には無理ですね(笑)。発想でいえば、仕事柄子どもと遊んだり、人の話を聞くことが多いですね。例えばたこ焼き屋さんでもおでん屋でも、この間まで売れたものが売れなくなった、と。ライバル店もないのになぜだ?とか。それを聞いて僕も、6、7年前、客席が前ほど売れなくなってきてなぜだ?と考えたら、お客さんがお客さんでいることをよしとしてないなと気づいたんです。それでテストで、ライブスタッフになれる券を出したらバッと売れたんです。

茂木:その話題ですごい炎上した時あったよね。

西野:週5くらいで炎上してたんで(笑)。パリのエッフェル塔で個展をした時、スタッフになって設営できる券を売りました。「人にお金を払わせて働かせるとは何事だ」という声で、日本中が燃えました。でも、夜のエッフェル塔にみんなで入って設営して、パリの街を上から見てお酒を飲むなんて、1億円払ってもできない。価値がある。誰しもが発信できる世の中になり、「サクラダファミリアに行ってきました」より、「作ってます」の方が皆ツイートしたい。発信にコストを割くようになってきたんです。

茂木:なんで「スタッフになれる券」は炎上するんだろう。

西野:お金はストレスの対価であるという植え付けがあるから。しんどいことをしないとお金をもらえない、という。そうした植え付けがある僕のちょっと上の世代からの攻撃がすごかったんですよね。

お金のことを学ばなければ、人は救えない

茂木:この通信制で学ぶ子どもたちに、何かメッセージをいただけたら。

西野:未来が明るいということは間違いないです。でも条件はいくつかあって。みんなお金のことを最後まで学ばないまま社会に出て、お金で行き詰まる。世界200ヵ国ある中で日本の自殺率はすごく高い。その理由は子供と大人では違うけれど、2位は共に経済的な問題。お金を考えないと、人は救えないんです。死んじゃうんですよ。死ぬことがわかっているのに、お金のリテラシーはすごく低いんですね。だから、僕のオンラインサロンでは3日に1回はお金の勉強をやってるんです。

茂木:あっまた生徒から、質問があります。

(生徒):やっぱり、いい大学には行くべきですか?

西野:僕は大学に行っていないから。言うとすれば、昔は問題が山積みで、解いてくれる人が求められた。でも今スイカは冷蔵庫で冷やせるし、世の中に問題は、ほとんどなくなった。産業で今陥っていることは、情報もテクニックも共有されて価値が下がり、作れる人の価値も下がったことです。日本の車は世界でナンバーワンの品質なのに、ベンツの方が高いし、さらにはカウンタックの方が高い。つまり機能に価値がつかないということ。これって、(日本が磨いてきた技術に価値がつかず)梯子を外されているんです。それを踏まえた上で、やりたいことがないなら行ってみれば、ということ。でも、出会いっていいじゃないですか。東大に行って、一緒に勉強することには価値があるし、いい大学に行けば意識の高い人と繋がれます

そのほかにも、モチベーションはどうすれば上げられるのかなど、生徒たちからの気になる質問にも西野さんらしい答えが飛び出し、盛況のうちに1時間の特別授業は終了しました。

まとめ & 実践 TIPS

炎上もするけれど、熱狂的なファンも多い西野さん語録がたっぷり飛び出した特別授業の1時間。「人がバッシングするのは、それを『知らない』から」というのも印象的な言葉でした。また、叶わなくなる方法をリストアップして潰していく…一見後ろ向きなようでいて、夢を叶える生産的な方法なのかも…と思わず唸った特別授業でした。

撮影/高橋真人 取材・文/有馬美穂


屋久島おおぞら高等学校とは
2005年4月広域通信制高校として鹿児島県屋久島町に開校。「つながる場所、つなげる場所。なりたい大人になるために。」を理念に掲げ教育活動を行っており、全国各地に在籍する8,500名を超える生徒は、年1回のスクーリングで屋久島を訪れている。

プロフィール

西野亮廣

1980年兵庫県生まれ。芸人。絵本作家。著書に、絵本『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』、ビジネス書『革命のファンファーレ』他。映画『えんとつ町のプペル』は第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。また、ハロウィン期間の再上映が決定。主催するオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は日本最大。

プロフィール

茂木健一郎

1962年東京都生まれ。東京大学理学部、法学部を卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了。理学博士。「クオリア(意識における主観的な質感)」をキーワードに、脳と心の関係を研究。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、「屋久島おおぞら高等学校」校長でもある。

プロフィール



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