私大の情報公開は進んだけれど……依然として課題

志望校にする大学選びには、単なる偏差値情報だけでなく、さまざまな情報を集めて分析することが必要です。そこで今回は、大学選びの参考となるような資料を紹介しましょう。一つは、文部科学省がまとめた「学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査」、そしてもう一つは、今年3月からスタートした「大学ポートレート」です。ただし、ここからは私立大学を中心として、新たな課題も浮かび上がってくるようです。その課題とは、どういうものなのでしょうか。

私立学校法では、貸借対照表や事業報告書などの財務情報を、関係者に公開するよう義務付けています。また、文科省は、情報公開の推進という観点から大学志望者やその保護者など、ホームページなどで広く公表するよう求めています。文科省がまとめた2014(平成26)年度の「学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査」によると、私立大学を設置している554の学校法人のうち、552法人が大学情報をホームページで公開しています。さらに、そのうち536法人が、各大学のホームページのトップから容易に財務情報に到達できると文科省は評価しています。また、文科省の調査結果のサイトは、各大学の財務情報のページに直接リンクしており、そこから簡単に財務情報を見ることができて便利です。

ただし文科省の調査によると、一般公開にあたって、ほとんどの大学がわかりやすく説明するための資料を作成しているものの、「各科目を平易に説明する資料」を掲載しているのは64.1%のみでした。また、事業報告書に実際の入学者数を出しているのは74.4%、志願者数・受験者数・合格者数などを記載しているのは54.3%、教員数と各教員が持つ学位・業績などを載せているのは23.6%、などとなっています。志願者数・受験者数・合格者数などを見れば、各大学の入試実態がわかりますが、あまり知られたくない大学も少なくないようです。卒業者の進路についても、記載しているのは54.9%にとどまっています。財務情報では正確な数字を記載しなければならないため、載せられないという事情があるのかもしれません。

一方、以前に私学版が先行してスタートしたことをお知らせした、公的な大学情報データベースである「大学ポートレート」は、国公立大学も含めたものが今年3月にようやく完成し、公開が始まりました。信頼できる大学情報を一堂に集めた意義は大きなものです。しかしここでも、公開されている情報の質については、大学ごとに違いが見られます。これは、入試実態や中退者などの情報をどこまで公開するかを、各大学に任せたためです。逆に言えば、十分な情報を公開していない大学は、何らかの問題を抱えていると見られても仕方ない面があります。

予備校や大学のホームページなどには、さまざまな情報が載っていますが、それらとは異なる角度から情報を集めて分析することも、これからの受験生や保護者にとっては大切なことかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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