親子起業にたどり着いた、不登校期間の子どもとの対話で大切だったこと

「不登校の我が子に、親として何をしてあげられるのだろう」
不登校の子を持つと、このような疑問を抱えている保護者は多いでしょう。子どもがこの社会で生きていくために「自分で決断する力」は必要不可欠だと言えます。そのために大切なのが、子どもと保護者の対話です。今回は、娘の桃子さんと一緒に「合同会社 I like」を設立した関口 太郎さんに、不登校の子どもとの関わり方や、対話での大切なポイントについてお話いただきます。

この記事のポイント

    不登校になった娘と起業するまで

    娘の桃子さんは、小学3年生で学校に行けなくなりました。学校に行こうとするのに行けない桃子さんを見て、「これは私が知らない何かが、桃子さんに起こっている」と感じたことを今でも覚えています。

    6年生になると、桃子さんは「もう学校には行かない」と決断し、私も妻もそれを認め、キャンプやドラムを始めてゆっくり過ごしました。その後、中学に入学しましたが、学校には行けず、自宅で動画を見たり本を読んだりする生活を送りました。

    一方、その頃の私は、新しい事業のアイデアやビジョンを考え、実現可能な計画立案が学べる事業構想大学院大学に入学します。大学ではSDGsの話も出てくるので、小学6年生のときからSDGsに興味があった桃子さんとは、SDGsの話題から資本主義について、経済学についてまで、たくさん対話しました。

    すると対話をきっかけに、桃子さんは大人でも読むのが難しい資本主義の本を読み始め、アルトゥル・ショーペンハウアーの「幸福論」やジョン・スチュアート・ミルの「自由論」など哲学にも興味を持ち夢中で読んでいるので、とても驚いたことを覚えています。

    中学2年になると、桃子さんの活動範囲が増えてきて、ひとつ転機になったのが大学の同期に桃子さんを会わせたことでした。同期には学校に行かなかった過去があり、今は個性的なデザイナーをしている男性で、自由に生きている彼を見て「こんな生き方ってあるんだね」と桃子さんはとても刺激を受けたそうです。

    その後の桃子さんは、「やってみたいことはすぐに行動!」と言えるほど活動的になりました。気になったSDGs関連事業を営む社長に自らアポイントを取って話を伺ったり、隣町の町内会長に地域の取り組みについてインタビューを行ったり、私はその行動力にとても驚かされました。

    そんな中、桃子さんが知り合いからSDGsに関する小論文のコンテストについて教えてもらった際に、私は「コンテストに出してみるのも良いんじゃない?」と桃子さんを軽く後押ししました。そこから桃子さんはSDGsに関する小論文の執筆・発表を行い、最終的にはその小論文が大賞を受賞することができたのです 。

    これらのことから学んだのは、
    「好きなことを学ぶのに年齢は関係ない」
    「好きを原動力にしたときにパワーが生まれる」
    ということです。

    そして、私は子ども達が「好き」を見つけて探求できる学校を作りたいという思いから、オルタナティブスクール「ライクスクール」の開校を目指して「合同会社 I like」を設立し、二人で相談し、桃子さんが社長になることになりました。

    この話を聞くと「不登校でも頑張っていろんな活動をしていてすごい」と思われるかもしれませんが、桃子さんが活動的だった期間は、最後の中学3年生の1年間だけです。今思えば、それまでの好きなことをして過ごした期間は、活動までの準備期間だったのではと感じています。

    不登校期間の親子の対話が子どもの決断をサポートする

    不登校期間の親子の対話が子どもの決断をサポートする

    私の大切にしていることのひとつに「上下関係を作らず、人対人としてリスペクトする」というものがあります。娘を「桃子さん」と呼んでいるのもこの想いからです。ですので、桃子さんと接するときも、「親だから」という側面はできるだけ入れず、「桃子さんにとって、何が大切なのかな?」を考えて接してきました。

    親、家庭、社会など、それぞれの立場や価値観から意見が発せられることは多いでしょう。そのような意見に、私たち保護者が振り回されてしまうと、子ども自身も行き着く先がよくわからなくなってしまいます。

    だからこそ、子どもが自分自身で決断していくことがとても重要だと感じています。その子どもの決断をサポートするのが「対話」です。子どもの好きなことに興味を持ち、適切に情報提供をすることで、本人が決断できるようにサポートすることが、保護者を始め、周りの大人たちができることではないかと、この一連の期間の中で学びました。

    「外の世界と子どもをつなぐこと」は保護者の大切な役割

    「外の世界と子どもをつなぐこと」は保護者の大切な役割

    子どもが不登校になってしまうと、子どもの社会性が気になるという保護者は多いでしょう。大人である保護者の強みは、「外の世界を知っている」ということです。保護者が持つ外とのつながりは、外を知らない子どもにとって、きっとよい刺激になるでしょう。

    自分の仕事の話をしてみたり、自分の職場の人に会わせてみたりして、保護者が持つ外の世界を子どもに見せてあげることで 、よい化学反応が起きることがあります。

    私の場合、桃子さんと大学院の同級生を会わせたり、一緒に哲学勉強会に参加したりしました。保護者からの話より、一歩外側にいる人からの話のほうが、子どもに響くときも大いにあります。ぜひ保護者が持つ外とのつながりを、子どもに見せてあげてくだい。

    子どもが好きなことを見つけるためのサポート術

    子どもが好きなことを見つけるためのサポート術

    「子どもが好きなことを見つけるために、保護者ができることはありますか?」とよく質問を受けます。

    結論として、「好きは自然に生まれてくるもの」だと考えています。ある人に「好きなものは何?」と聞いたとき、「お菓子の〇〇ですね」という回答でした。これはすごく素敵な話だなと思っています。

    「好きって何?」と聞かれると、「何かの勉強が好き」のように大きなことを言わなければいけないと感じる人が多いでしょう。しかし、そんなことはありません。「泥遊びが好き」「とにかくゲームが好き」でもいいんです。

    一緒に対話を重ねながら、「小さな好き」をたくさん見つけてあげると、だんだん大きな好きにつながっていきます。ぜひ、小さな好きをたくさん見つけて、認めてあげてください。

    まとめ & 実践 TIPS

    まとめ & 実践 TIPS

    不登校という時間は、決して「何もできなかった時間」ではありません。桃子さんにとってのその日々も、好きなことを見つけてじっくり向き合い、親や周りの大人と対話を重ねながら、自分の進む道を決めていくための大切な準備期間でした。保護者にできることは、正解を教えることではなく、子どもの「好き」に寄り添い、外の世界との小さな橋渡しをすることです。今は先が見えなくても、お子さんのペースを信じて、一緒に歩んでいきましょう。あなたのその関わりは、きっと未来の子どもの力になります。

    関口 太郎(せきぐち たろう)

    合同会社I like ファシリテーター

    早稲田大学理工学部卒業後、総務省統計局統計センターにてプログラマーとしてキャリアをスタートし、民間企業に転じて以降は、システムエンジニアや営業、新規事業の立ち上げなど幅広い経験を積む。その後事業構想大学院大学に学び、2025年3月に修了。同月、娘の桃子とともに合同会社 I like を設立。現在は、GCS認定コーチ、そして Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method and materials として、対話やファシリテーションを通じて「好き」を起点とした学びの場づくりに取り組んでいる。 娘(桃子、合同会社I like代表)が学校に登校しないという選択をしたことをきっかけに、自身のこれまでの人生を振り返り、子どもの頃から「優秀であることに囚われていた」ことに気がつく。もっと自由に学び、生きていく選択肢もあるべきと考え、娘の桃子と共に「好き」から学ぶ学校「ライクスクール」の運営を行っている。

    不登校ライフナビ こどもの個性と未来をつなぐ