【SSR|校内教育支援センター 】子どもの「安全な居場所」をつくる学校内の支援体制

最近「学校の門をくぐることはできても、教室には入れない」という子どもが増えています。そうした子どもが安心して過ごせる、教室ではない校内の居場所として小学校・中学校に設置されているのが「SSR(校内教育支援センター)」です。SSRの設置率は、地域によってばらつきがありますが、不登校児童生徒の増加を背景に拡大が進められています。今回は、公立中学校教諭として生徒指導主任などを担当し、校内教育支援センターの開設・運営の経験をお持ちの帝京科学大学教職センター助教の宇佐美 健さんに、SSRの現状についてと、子どもとSSRのつなぎ方についてお話しいただきます。

この記事のポイント

    「SSR(校内教育支援センター )」って? 

    「SSR(校内教育支援センター )」って? 

    「SSR」とは、スペシャル・サポート・ルームの頭文字を取って付けた名前で、「校内教育支援センター」のことを指します。「校内フリースクール」や「校内適応指導教室」、子どもと保護者が親しみやすいように「〇〇ルーム」のような独自の名前で呼ばれているところも多いです。

    SSRには教科担任や学級担任が常駐することが難しいため、生徒指導主事や支援専任の教員、養護教諭、支援員、コーディネーターなどが中心となって運営しています。学校によっては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域のボランティアのかたがサポートに加わるケースもあります。

    基本的には、自分のペースで自学自習を進める場所として機能しており、授業は行われていません。ただ、タブレット端末に教室の授業の様子を映し、SSRで授業を受ける取り組みを行っている学校もあります。

    また、学習の場という側面だけではなく、相談支援の場として先生やボランティアのかたとお話ししたり、一人で心を落ち着かせたりするリラックスする場所としての利用も可能です。

    教室復帰だけがゴールじゃない──SSRが果たす2つの役割

    教室復帰だけがゴールじゃない──SSRが果たす2つの役割

    1.教室復帰のための心の準備をする場所

    まず知ってほしいのは、SSRは「教室への復帰を前提としていない」ということです。なぜなら、教室復帰を前提とすることで、中には強いプレッシャーを感じてしまう子どももいるからです。

    そのため、教室復帰が前提ではなく、安心できる空間で、再び教室に戻るためのステップとして、エネルギーを蓄え、心の準備をする場所という役割を持っています。

    2.社会とつながれる最初の手掛かりとなる場所

    SSRは、外出が難しく、引きこもりがちな子どもにとって、家庭以外の社会とつながる第一歩となる場所としての役割もあります。教室に戻ることよりも、まずは外に出て「安心できる空間」で他人と過ごすこと自体に大きな意味があります。

    SSRで、支援専任の教員や担任、ボランティアのかたなど、少しずつさまざまな大人と関わることで、じっくり時間をかけて子どもの心がほぐれていくのを待ちましょう。

    「教室に入れない」といっても、「教室にだけ入れない子ども」と「やっとの思いで通学した子ども」では、心の状態が異なります。どの状態の子どもも、安心・安全な居場所 となることがSSRの大きな役割なのです。

    SSRが「子どもの安全な居場所」になるための工夫

    SSRが「子どもの安全な居場所」になるための工夫

    SSRは、校内の空き教室を利用するケースがほとんどです。そこで子どもが安心して過ごせるよう、学校ごとに独自の配慮や取り組みが反映されています。ここでは、先駆的な広島県の事例(※1)を見てみましょう。

    広島県の小・中学校では、「教室に見えない教室」を目指し、机にテーブルクロスをかけたり、ソファや大きなぬいぐるみを置いたりといった、子どもが過ごしやすい工夫がされています。

    また、個別のブースを用意し、子どもの状態に合わせて、個別学習と協働学習が両立できるよう配慮されている学校もあります。周りの視線を気にする子どもでも安心して入室できるよう、SSRの設置場所にも配慮がありました。

    実際、文部科学省はSSRの有用性を評価しており、愛媛県の中学校ではSSRを利用した約53%の生徒が教室復帰や学校に登校できるようになり、新規不登校生徒の割合が41.5%から16%へと大幅に減少しました。(※2)

    子どもへの声かけとSSRとのつなぎ方

    子どもへの声かけとSSRとのつなぎ方

    SSRを利用したいときのつなぎ方

    まずは、学校側にSSRの利用希望や現在の状況を伝えることから始めましょう。 基本的な相談窓口は担任の先生です。

    担任に話しにくい場合や、より詳しい運営状況を知りたい場合は、生徒指導主事、支援専任の教員、または支援教育コーディネーターに直接質問や働きかけを行ってもいいでしょう。養護教諭がカウンセラー的な立場で相談に乗り、SSRへとつなぐケースもあります。

    学校に行くことが難しい場合は? 

    子どもが学校に足を運ぶこと自体がまだ難しい状況であれば、スクールソーシャルワーカーの活用も検討してみましょう。 スクールソーシャルワーカーは学校と家庭をつなぐ役割を持っており、家庭訪問を依頼することもできます。

    保護者が担任に「スクールソーシャルワーカーとつながりたい」と申し出ることで、支援の手続きや家庭でのサポートについてアドバイスが受けられるので、必要な場合は相談してみてください。

    最適な支援のために~子どもの心の声の聞き方~

    最適な支援のために~子どもの心の声の聞き方~

    子どもにとってどの支援が最適なのかを知るためには、子どもの心の声を聞くことが不可欠です。そのために大切なのが「能動的に聞くこと」です。

    たとえば、「学校にいきたくない」と言われたとき、「どうして?」「何が嫌なの?」と質問してしまいがちですが、この質問では子どもが自分のペースで気持ちを話しづらくなる場合があります。

    そんなときは「行きたくないんだね」と言葉をそのまま受け止めることから始めてください。子どもの気持ちを先回りせず、ただそっと寄り添いながら聞き続けることが、 子どもが自分の気持ちを言葉にすることにつながります。

    まとめ & 実践 TIPS

    まとめ & 実践 TIPS

    SSRは、教室に入ることが難しい子どもが、学校という環境の中で安心して過ごせる居場所です。利用を検討する際は、まず担任の先生へ相談してみましょう。学校ごとにSSRへの配慮や取り組みは異なるため、実際にSSRを見せてもらうと安心です。もし担任へ相談しにくい場合は、養護教諭やスクールソーシャルワーカーも力になってくれるでしょう。正解のない道のりに不安を感じることもあるかもしれませんが、子どもの気持ちに耳を傾けようとしているあなたの姿勢が、きっと子どもの支えになっています。

    参考資料
    (※1)
    出典:文部科学省 広島県教育委員会登校支援センター蓮浦顕達センター長発表資料
    (※2)
    出典:文部科学省 不登校児童生徒への支援について

    宇佐美 健(うさみ けん)

    帝京科学大学 助教

    帝京科学大学教職センター助教。専門は教師教育(研修デザイン)、教育工学(ICT活用)など。前職は公立の中学校教諭で生徒指導主任などを担当。校内教育支援センターの開設・運営に携わる。

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