不登校の子どもとのコミュニケーション|向き合い方と4つのタイプ別支援

子どもに行きしぶりや不登校が見られた場合、「保護者としてどう接してあげるのがいいんだろう…」と悩む保護者は多いでしょう。子どもとのコミュニケーションは子どもの発達段階を理解したうえで、その子に合ったサポートをしてあげることが大切です。今回は、株式会社越谷心理支援センターの現役セラピストとして活動する秋山 邦久さんが、子どものタイプに合わせた接し方やコミュニケーションの取り方についてお話します。

この記事のポイント

    子どもの「文脈」を知ることが、コミュニケーションの第一歩 

    子どもの「文脈」を知ることが、コミュニケーションの第一歩

    コミュニケーションは「文脈」を合わせるところから

    まず、質問させてください。去年の暮れから今年の正月にかけてタコをあげた、あるいはタコをあげたのを見たっていう方はいらっしゃいますか? 

    では、それは天ぷらでしたか? 唐揚げでしたか? 
    ...多くの方はこう思われたのではないでしょうか「凧じゃなくてタコのことだったのね」と。

    しかし、日常的に料理をする機会が多い調理師さんや栄養士さんなら、「たこあげ」で真っ先に思い浮かぶのは「タコ揚げ」ですし、漁師さんなら「タコの水揚げ」を思い浮かべるでしょう。

    コミュニケーションは、「内容」と「文脈」で成り立っています。文脈とは、その人の背景や関係性のことです。この文脈が合っていないと、どんなにいい内容でも相手には届きません。そしてこの現象は、家族間でもよく起きます。なぜなら、子どもの文脈は心の発達とともに変化するため、昨日まで通じていた言葉が今日は届かない、ということが起こりやすくなるのです。

    「行きしぶりの子どもとコミュニケーションが上手く取れない」「不登校の子どもが何を考えているかわからない」という保護者はとても多いと思います。そんなときは、子どもの今の発達段階を理解することから始めてみましょう。

    子どもの「文脈」を知るために大切なのは「教えて」の姿勢

    子どもの発達は、なだらかな坂道を上っていくようなものではなく、階段状に成長していくため、1段上るだけで子どもには大きな変化が起きます。それゆえ、子どもとコミュニケーションを取るためには、保護者は子どもの発達段階(=文脈)を把握し続けることが大切です。

    子どもの文脈を把握するために必要なのが、「教えて?」という姿勢です。子どもが今どんな世界に生きているのかは、外から見ているだけでは分かりません。「今、どんな感じなの?」「何を考えているの?」と関心を持って聞き、教えてもらう姿勢を持つことが、文脈を合わせる第一歩となります。

    【タイプ別】子どもとの関わり方と家族の役割

    【タイプ別】子どもとの関わり方と家族の役割

    子どもの発達段階を理解したあとは、子どものタイプについて見てみましょう。東京大学の森 俊夫先生が作られた「気質論」を、私なりに改定して「学者」「母親」「職人」「俳優」4つのタイプに分け、関わり方をまとめました。

    この分類は気質による性格分類をベースにしており、子どもが「何を基準に判断し、行動しているか」を知ることで、家族間のコミュニケーションのズレを防ぐことにつながります。


    学者タイプ:判断基準は「自分」

    【特徴】
     自分が楽しいか、やりたいかどうかが全ての基準です。一人でいることを苦にせず、単独で行動することを好みます。文字には独特の癖が出やすい傾向があります。

    【接し方のコツ】
    学者タイプの子どもに「今の気持ち」を聞いてもあまり意味がありません。感情的な共感よりも、「具体的にどうすればいいのか」という対処法や論理的な解決策を提示して話し合う方が、本人の納得感を得やすくなります。

    母親タイプ:判断基準は「他人」

    【特徴】 
    周囲からの期待や、他人がどう思うかを基準に行動します。一人でいると「寂しい人と思われているかも」と不安になりやすく、集団の中にいたいと願う傾向があります。

    【接し方のコツ】
    母親タイプの子どもには、カウンセリング的なアプローチが効果的です。本人の気持ちに寄り添い、じっくりと話を聞いて共感してあげることで安心感を与え、前向きな行動を引き出すことができます。

    職人タイプ:判断基準は「ルール」

    【特徴】
    自分や他人の感情ではなく「12時になったら昼食」といった既定のルールやこだわりに沿って動きます。文字は細かく、活字のようにきっちり書く傾向があります。

    【接し方のコツ】
    職人タイプの子どもに「気持ちが向くまで待つ」という対応はあまり向きません。むしろ、活動を「ゲーム化」したり、明確なルールを決めたりすることが有効です。

    たとえば、「週に1回は好きな時に休んでいい」というルールを子どもと一緒に作ります。そして、その週を休まずに過ごせた場合は、「使わなかった休みの権利を1日500円で親が買い取る」という報酬ルールにするのです。

    「休んでもいい、でも頑張ったら得をする」という仕組みが、職人タイプの子どもには納得感をもたらし、社会参加のきっかけが掴める場合もあります。

    俳優タイプ:判断基準は「その時の気分」

    【特徴】
    自分、他人、ルールではなく、その瞬間の気分で動くため、朝と夜で言っていることが変わることも珍しくありません。丸文字や絵文字を好んで使う傾向があります。

    【接し方のコツ】
    「来るものは拒まず、去るものは追わず」という、付かず離れずの姿勢が適しています。その時々の気分を尊重しつつ、過度に振り回されないような大らかな対応が求められます。

    家族ができる大切な役割は? 

    タイプのお話をしましたが、子どもに特定のラベルを貼ってほしいわけではありません。保護者が子どもとタイプが違うことに気づき、関わり方を少し変えるだけで伝わることが増えるということを実感してほしいです。

    成長とともに4つの要素がすべて揃っていくことで、丸みのある性格になっていきます。子どもにどれが足りないのかを観察し、子どもに合った文脈で関わることが、自立への大きな支援になるでしょう。

    思春期の子どもは「いなし」と「対峙」で向き合う

    思春期の子どもは「いなし」と「対峙」で向き合う

    最後に、思春期の子どもと向き合うときのコツを2つ紹介します。

    反抗的な態度にはユーモアのある「いなし」を

    思春期の子どもが保護者に反抗するのは、きちんと発達段階を上っている証拠なので、何も問題ありません。時には保護者へ悪態をつくときもあるでしょう。そんなときは、真っ向からぶつかるのではなく、ユーモアを持って「いなす(受け流す)」対応が有効です。

    たとえば、娘に「お父さんの加齢臭が移るから洗濯物をいっしょに洗わないで」と言われたとします。その場合「親に向かって何てこと言うんだ」ではなく「今日のお昼はカレーじゃなくてラーメンだったんだけどな?」のように返すんです。

    こうした対応により、保護者は子どもの攻撃性に飲み込まれず、家庭内の空気が重くなりすぎるのを防ぐことができます。

    「対峙」で子どもの変化を見逃さない

    しかし、すべての反抗をいなせばいいというわけではありません。そこで大切なのが「対峙」、つまり子どもの変化を注意深く見て向き合うことです。

    思春期の反抗は、自立したいという欲求と、親への依存心の間で揺れ動くことから生じます。もし、普段と違う様子が3日続いたら、それは重要なサインかもしれません。この変化とは、「急に反抗的な態度が強くなった」だけでなく「急にいい子になった」という場合も当てはまります。

    実は、いい子になる変化のほうが、精神的に危うい状態にいるということもあるのです。子どもの変化に気づいたら、必ず声をかけてあげましょう。もし反抗的な態度を取られたとしても、「見ているよ」というサインは伝わります。

    悩みを打ち明けてくれたら、どんなに些細な内容であったとしても、真剣にひざを交えて向き合うことで、子どもの気持ちを軽くすることができるでしょう。思春期の子どもは、保護者に守られた状態で、傷つく練習・悩む練習ができる大切な時期です。

    小さな悩みを安全な環境で経験しておくことが、将来より大きな壁にぶつかったときの心の免疫になります。 ぜひ子どもには、安全な環境で「悩みの予防接種」をしてあげてください。

    まとめ & 実践 TIPS

    子どもの「文脈」を理解し続けることは、とても根気がいることです。それでも、子どもの発達段階やタイプを知り、関わり方を少しずつ変えてみる...その小さな積み重ねが、子どもとのコミュニケーションをより良くしていきます。「うまく伝わらない」と感じる日があっても、そばで一緒に悩み続けてくれる保護者の姿は、必ず子どもに届いています。まずは「教えて?」という姿勢で、子どもの今の世界に関心を向けることから始めてみてください。

    秋山 邦久(あきやま くにひさ)

    (株) 越谷心理支援センター 顧問

    大阪市立大学(現:大阪公立大学)大学院修了(学術修士)し、秋田県職員(心理判定員)として児童相談所や福祉事務所、障害者更生相談所などに16年間勤務。2003年から文教大学大学院、2010年からは常磐大学大学院にて臨床心理士の養成に、2018年度からは公認心理師養成に携わる。また、弘前大学大学院、桜美林大学大学院、東京家政大学の非常勤講師のほか、埼玉県白岡市社会教育委員、秋田県スクールカウンセラー、東京都をはじめ全国の児童相談所や教育委員会、保育所のスーパーバイザーを務めてきている。常磐大学人間科学部心理学科 教授(公認心理師)を2026年3月定年退任。さらに、(株)越谷心理支援センターを立ち上げ、現役のセラピストとして心理支援を行っている。

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