子どもを支える「チームわが子」をつくろう。家庭からつながりを広げるヒント
学校に通うのをやめた子どもが、家でじっくりとエネルギーを貯める時期が一定期間すぎ、「こんな環境があったら、動き出せるかもしれない」と、「子どもに合う環境、場所」が見えてきたときに、次に壁になるのが「どうやって子どもに合う環境や場所と出逢うか」です。
身近な家庭と学校から、少し視野を広げて考えてみると、一緒に考えてくれる人・機関はあります。わが子と「関わる人」を増やし、「チーム」をつくる感覚で、相談先を増やしていくことが支援の広がりにもなります。わが子オリジナルの「チームづくり」について、不登校についての知見も多い渋谷区議会議員/学びの多様化地方議員連盟代表理事の神薗 まちこさんに聞きました。
この記事のポイント
まずは「目の前の子ども」を見て、次の一手を考える
子どもが学校に行けなくなったとき、保護者はまず情報収集から始めることが多いでしょう。ですが、学校以外の居場所、オンライン学習、不登校のよくある原因、子どもへの接し方、支援サービスなど、世の中にはさまざまな情報があふれかえっています。それゆえに、調べれば調べるほど混乱してしまうこともあるものです。
当事者になると視野が狭くなりがちなのは、誰でも同じです。情報に振り回されそうになったときこそ、立ち止まって「目の前のわが子」に焦点をあてて考えたいです。「この子に今、何が必要か」に立ち返ることが、次の一手を考えるための出発点になります。
関わる人を増やして「チームわが子」をつくる
「この子に何が必要か」が少し見えてきたとき、次に大切になるのが「誰に、何を頼むか」です。
保護者ひとりで、子どもが抱えている課題のすべてを解決することはできません。そこで誰かにサポートを頼むことになりますが、最初はハードルの高い作業に感じることと思います。学校に連絡して子どもの状況を伝えるのも、かかりつけ医に相談するのも、信頼できる保護者仲間に話を聞いてもらうのも、すべて「誰かにサポートを頼む」という行動です。つまり、多くの保護者はすでに行っていることなのです。
その延長線上にある考え方として神薗さんが提案するのが「チームわが子」の結成です。すでにつながりのある人に加えて「こんなことを頼める人がいたらいいな」と思う人や機関にもメンバーに加わってもらってチームを広げていくというもの。
「子どもに必要なサポートを頼める人・機関に、得意なことやできることを少しずつお願いしていきます。それぞれの得意分野を活かして、できることを切り分けて頼んでいくと、サポートの輪が広がりやすいと思います」と神薗さん。子育てで抱えている課題を家庭の外に出すことで、思いもよらなかった支援とつながることができるかもしれません。
では、このチームに誰を、どう加えていけばいいのでしょうか。まずは最初の窓口となることが多い「学校」との関わり方から考えてみましょう。
学校にもチームの一員として関わってもらう
子どもが学校に行かなくなったとき、「学校」を最初の相談先に考える人が多いと思います。学校には、担任以外にもスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの相談窓口が存在しています。地域や学校独自の支援の仕組みが準備されている場合もあるので、わが子に合う支援の形があれば、積極的に利用していきたいですね。
一方、地域によっては支援の仕組みが整っておらず、担任以外の相談窓口にたどりつくのが難しい場合もあります。そのようなときは、保護者側が学校にどのような協力を依頼したいのかリストアップし、お願いできる担当者や学校そのものと連携することで、「チームわが子」の厚みが増します。
たとえば、子どもが「学校には行きたいけれど、教室に入るのに抵抗感がある」という場合、教室以外の居場所になる別室が用意されていれば、そこで対応してくれる教職員との連携につながります。そうした別室がないとしても、放課後等に担任の先生と定期的な面談を設定できれば、連携を深めることにつながります。
こまめに学校に連絡を取るのは、保護者にとって精神的、物理的に負荷が高いので、距離感を調整しながら学校との関係を保つことは、子どもの選択肢を広げることにもなります。
地域にも「仲間」の候補となる存在はいる
ほかに、生活している地域では「チームわが子」の仲間になってくれそうな人・場所の存在がないか注目してみましょう。
社会福祉協議会(社協)/ボランティアセンター
地域の福祉ニーズに応え、ボランティアや地域団体とのつなぎ役を担う機関です。「子どもが日中にいられる場所はないか」「見守りをお願いできる人を探したい」という相談にも対応しやすく、全国の市区町村に設置されています。
地域の大学・学生
近隣にキャンパスのある大学の学生が、こども食堂や学習支援などの地域活動に参加している場合は交流の機会を持ちやすいです。また、大学の学生課などに直接依頼をすると、家庭教師として自宅に来てもらえるケースもあります。「保護者でも先生でもない、年の近い存在」は、子どもにとってほどよい距離感であり、今後の進路を考えるきっかけになることも。
市区町村の議員
「学校や行政に相談したのになかなか動きがない」「自分が求めるリソースが地域のどこにあるかわからない」。そんなときは、子育て事情に詳しい市区町村の議員に相談してみるのも選択肢のひとつです。地域に密着して活動している議員は地域リソースの知識も多く、「こんな人はいないだろうか」「こんなことをしている場所はないだろうか」と具体的なニーズを伝えると、公民問わずつないでくれることがあります。
行政への働きかけはハードルが高いと感じるかもしれませんが、「地域で不登校の子を持つ親の会を立ち上げたい」「地域の支援マップを整備したい」など、仕組みづくりに発展させたいときには特に力になってくれるケースがあります。区議会議員である神薗さんのところにも「親の会を立ち上げたい」と保護者から相談があり、その活動が公的事業として継続されている事例があります。
不登校に理解、知識のある議員と出会うには、「学びの多様化地方議員連盟」に所属する議員を手がかりに探すこともできます。神薗さんもこの連盟のメンバーのひとりです。自分の自治体にいない場合は、都道府県単位で探してみると見つかることも。
保護者自身のセーフティネットも大切に
子どものために動くには、保護者自身が孤立しないこともとても重要です。そこで頼りになるのが、同じような境遇にある保護者のコミュニティです。先輩保護者の「うちの子は動き出すまでにこれぐらいかかったけど、今はこんなふうにしているよ」というリアルな体験談は、変化のタイミングが人それぞれだと実感させてくれ、大きな安心感につながります。
また、先輩保護者は情報を与えてくれるだけでなく、子どものために動き出そうとしているときに「あなたの判断は間違ってないよ!」と背中を押してくれる存在にもなります。先輩保護者の声こそ、地域に紐づいた情報やタイミングの多様性を知ることができる、もっともリアルな情報源です。情報過多で判断が鈍っているときは特に、先輩保護者の体験談を聞くことで、「子どもによって必要なものは違う」という根本に立ち返るきっかけにもなるでしょう。
親の会には、自治体の教育委員会が主催する公的なものもあれば、地域の保護者が自主的に立ち上げたものまでさまざまです。オンライン開催も増えており、地域を問わず参加しやすくなっています。不登校・ひきこもりの支援に特化したNPOも保護者の相談窓口として機能しており、「自分自身がしんどい」という話を聞いてもらえる場所です。地域の支援ネットワークにも詳しく、「うちでは対応が難しいけど、こういう場所がある」と別の窓口につないでもらえることもあります。「(市区町村名)+不登校+NPO」で検索するとヒットしやすいです。
ひとりで抱え込まなくていい。小さな動きから風が吹くことも
「不登校の子どもを持つ保護者の話を聞いていると、一番苦しいのは子どもが動き出すのがいつかわからないことだと思います。わずか1ヶ月で変化がある子もいれば、何年もかかる子も。それを子どもを信じて待てるかどうかですよね」と神薗さん。
そんなときこそ「チームわが子」の存在が助けになります。学校や地域の窓口、地方議員への相談、親の会への参加、どこから始めても大丈夫。「完璧な環境」を最初から用意しなくていいので、まずは一か所「うちの子はこんな状態で、こんなことが必要なんです」と話してみるところから始めてみましょう。
その一歩が、子どもを支えるチームを着実に広げ、保護者の安心感にもつながります。

神薗 まちこ(かみぞの まちこ)
渋谷区議会議員/学びの多様化地方議員連盟代表理事
教育系企業で16年4,500校の学校を支援。2019年から渋谷区議会議員として活動。 子育てや教育政策を中心に100以上の提案を行う。2024年より「学びの多様化地方議員連盟」を立ち上げ、全国で学びの多様化を実現するべく地方議員内での情報交換や勉強会を行っている。子育て家庭の支援を行う「渋谷papamamaマルシェ」、子ども食堂「みんなの食卓」などの地域活動も。中学生の子を持つ母。
