【不登校離職】仕事を辞める前に知っておきたい3つのポイントと支援制度
もし子どもが不登校になると「仕事を辞めて、子どもと一緒にいるほうがいいのかな?」と迷う保護者の方も多いのではないでしょうか。実際、中学生の不登校は増加しており、仕事を休んだり、離職を考えたりするケースも増え、「不登校離職」という言葉が認知されてきています。でも、辞める決断をすぐにするのではなく、少し立ち止まって考えてみてください。今回は、NPO法人キーデザインの代表理事 土橋 優平さんに、不登校の子どもを持つ保護者が仕事と子育てを両立するためのヒントと、使える支援制度についてお話いただきます。
この記事のポイント
近年注目され始めた「不登校離職」という言葉
文部科学省「~不登校の現状と対策について~」(※1)によると、2024年度の不登校の小中学生の数は、35万3970人で過去最多となり、右肩上がりが続いています。そんな中、保護者が子どもの不登校を理由として離職や休職をする「不登校離職」という言葉がメディアで取り上げられ、近年注目され始めた新たな社会課題となっています。
私が代表理事を務める「NPO法人キーデザイン」では、全国の不登校・行き渋りを経験した子どもの保護者を対象に「不登校離職実態調査2026(※2)」(回答数1,234件)を実施しました。調査結果によると、不登校の子どもを持つ保護者の95.4%が、仕事との両立が「大変だった」と回答し、実際に母親の5人に1人が不登校離職を経験しています。
子どもが不登校で家にいるということはもちろんですが、保護者の心の不安定さや家庭内でうまく連携が取れていないことも相まって、結果的に不登校離職につながっているのが現状です。
ただ、「子どもが不登校になったから」といって、すぐに離職に踏み切るのは待ってください。まずは、離職が本当に必要かどうか、考えてみましょう。
離職を決断する前に「見つめる」べき3つのポイント
子育て中の離職は、子どもとの時間が取れる一方で、経済的損失やキャリアの断絶、復職の不安などのリスクもあります。まずは離職が本当に最適かどうか、以下の3つのポイントをチェックしてみましょう。
子どもの今を「見つめる」
まずは、保護者がずっと一緒にいることが最適なのか見極めましょう。子どもが「ずっと一緒にいてほしい」「いてくれたら安心する」と思うのか、あるいは「ずっと一緒にいると『見られている感じ』が少し息苦しい」「期待感を感じて申し訳なさがある」と感じるのかはケースバイケースです。
さらに、離職した後、子どもがフリースクールなどの家以外の自分の居場所が作れるかどうかも大切なポイントです。実際、「親に仕事を辞めさせてしまった」という罪悪感が、子どもにとって新たなプレッシャーになることもあります。今の子どもの気持ちと、将来どんな影響があるかを両方の視点から考えてみましょう。
保護者の自分自身を「見つめる」
子どもだけでなく、保護者である自分自身についても向き合ってみてください。不登校離職をして子どもと長い時間家で過ごす生活の中で、「心の余裕を持って子どもと関われるか?」「自分のための一人時間を確保できているか?」を想像してみましょう。
実際、離職して子どもと過ごす時間が長くなった結果、「仕事での達成感や社会とのつながりが感じられなくなった 」「経済的に不安が出てきた」と悩む人もいます。保護者が心の余裕をなくしてしまうと、子どもとの関係にも影響が出やすいです。
保護者もひとりの時間を持ち、心の余裕を作ることで、ぜひ自分自身も大切にしてください。
周りの社会支援を「見つめる」
現在、不登校の子どもと保護者のための支援は広がりを見せています。周りに子どもと保護者を支える仕組みがあるかを確認してみましょう。
学校や家庭以外の子どもの居場所には、フリースクールや教育支援センター、子ども食堂などがあり、勉強面でのサポートとして、オンライン個別塾や家庭教師などもあります。
最近では、「不登校外来」といった心と体の両面から治療や支援を行う専門窓口も増えました。お住まいの地域に専門の窓口がなかったとしても、小児科や心療内科、精神科、療育など医療機関を受診することも可能です。
安心できる第三者とのつながりは、子どもにとっても保護者にとっても大切です。周りをどんどん頼っていきましょう。
この3つの観点を改めてチェックしてみて、「離職が必要かも...」と感じる保護者もいるでしょう。でも、もし仕事を諦めたくない場合は、次の社会支援や制度を活用できるか確認してみてください。
やっぱり仕事は続けたい...そんなときに活用できる社会支援・制度
仕事を諦めない選択をした場合は、積極的に周りにある支援制度を活用していきましょう。ここでは、仕事を続けていくために利用できる具体的な制度やサービスを紹介します。
介護休業制度
子どもの不登校に対応するためまず考えるのが、有給休暇の消化やリモートワーク、時短勤務などではないでしょうか。実は、意外と知られていませんが「介護休業制度」も使える可能性があります。
「高齢者介護のための制度」と思っている方も多い介護休業制度ですが、医師から「子どもへのケアが必要」と診断書をもらえれば、お子さんの不登校対応にも活用できる場合があります。
介護休業制度が使えると、短期休暇や長期休業の取得が可能です。まずは会社の担当部署や上司に相談してみましょう。
精神科訪問看護
精神科訪問看護とは、看護師や精神保健福祉士などが自宅を訪問し、子どもとその家族に対し、状況に合わせたケアを行う国の制度です。医療保険が適用されるため、費用は比較的安価ですし、地域によっては無料で利用できることもあります。
第三者に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることは大いにあります。利用の際は、お住まいの精神科訪問看護ステーションを調べてみてください。
企業の取り組み
一部の先進的な企業では、不登校を理由とした休業制度や相談窓口の設置が始まっています。たとえば、子供の不登校を理由に最長2年の休業や最長3年の時短勤務を認める休業制度があったり、企業内でフリースクールが設置されていたりと、企業独自の支援制度も増えてきています。ぜひ一度、お勤めの会社に不登校に関する支援制度がないか確認してみてください。
まとめ & 実践 TIPS
子どもの不登校に直面したとき、「仕事を辞めなければ」と追い詰められるように感じる保護者の方も多いと思います。でも、離職はあくまで選択肢のひとつです。まずは、子どもの気持ち・自分自身の状態・周りの支援の3つを見つめてみてください。そして、一人で抱え込む前に、使える制度や周りのサポートをどんどん頼っていきましょう。あなたが仕事を続けることは、決して子どもへの愛情不足ではありません。自分自身を大切にしながら子どもと向き合うあなたの姿が、きっとお子さんの支えになっています。
参考資料
(※1) 出典:文部科学省「~不登校の現状と対策について~」
(※2)調査概要:
◇調査対象:全国の不登校・行き渋りを経験した子どもの保護者
◇主要な調査項目:仕事との両立について/仕事への影響/特に影響が大きかった時期/保護者の心身の状態への影響について/家計全体への影響・変化について
◇回答数:全国46都道府県から1,234件
◇期間:2026年4月24日~5月2日
◇方法:Googleフォームによるオンラインアンケート

土橋 優平(どばし ゆうへい)
特定非営利活動法人キーデザイン 代表理事
1993年生まれ、青森県八戸市出身。 宇都宮大学在学中に生きづらさを抱える子ども・若者の支援を目指し休学し、学生団体を立ち上げ活動。 中退後、NPO法人キーデザインを設立。不登校の子ども向けのフリースクールやホームスクールで年間100名以上と関わり、保護者向け無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」には全国から5500名以上が登録。 2021年に栃木県経済同友会より「社会貢献活動賞」を受賞、2025年にはForbesJAPAN「NEXT100」世界を救う100人に選出される。 宇都宮市医師会と連携した「不登校ガイドライン」作成や、不登校支援機関をまとめた「不登校ポータルサイト"たより"」を運営。
